5/84
05
「ちょっと待ってて」
そういって立風さんは席に戻った後、筆箱から同じ黄色のシャーペンを取り出して戻ってきた。ほら、おそろいだね、と微笑む。
よかった。変に思ってないみたいだ。わたしもまた作り笑いをする。
と、そこでノックの部分にあるハートの絵に気づく。
「そのハートって?」
「これ? シールだよ。私ね、自分が気に入ったものには全部このシールをつけてるの。それにこうしておけば、自分のものだってわかるでしょ?」
家の冷蔵庫のプリンとかにも貼っているらしい。そうでもしないと勝手に食べられちゃうからと、立風さんは笑った。しなやかに沿った立風さんのピンク色の唇はしっとり潤っていて、本当にかわいかった。同じリップを使っているのに素材が違うとこうもかわいくなるものなのか。
「素楠さんはそういうのってないの? 自分のものーって感じの」
「わたしは……ない、かなあ」
だってわたしの持っているものは、ほとんど立風さんのものだから。