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「まあ寂しいだけじゃやきもちは妬かないかもしれないけどさ、いらいらするってのは要するに不満ってことでしょ? ってか、誰かそばにいるだけでいらいらするとか、どんだけだよ」
あきれたような顔をして、さっちゃんがわたしを見る。
「のりすけが何を望んでいるのかは知らないけど、ほどほどにしておきなよ。人間なんてどれだけ手に入れたって一生満たされないようにできてんだからさ。ところでその卵焼き、いらないならちょうだい」
そういって返事を待たずに、さっちゃんはわたしの卵焼きを食べてしまった。早弁して、こうしてちゃんとお昼も食べて、さらに人のお弁当にまで手を伸ばすなんて、なるほどたしかにどれだけ手に入れても満たされないものらしい。
まあ、さっちゃんの胃袋はともかく。
わたしは別に何か手に入れたいものがあるわけじゃない。もちろん、ちゆちゃんが持っているものは全部欲しいし、ちゆちゃんと一緒がいいし、おそろいがいいし、同じがいい。でもそれに対して、というよりそれが叶わないことに対して不満を感じているわけではなくて、あえて不満というのなら、それはちゆちゃんの世界が覗けないことだった。




