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頭が悪いからうまくいえないけど、同じ景色を見て、同じ音に耳を傾けて、同じものに触れて、同じ匂いを嗅いで、同じ言葉を囁いていたいというか、立風さんが感じるすべてをわたしも共有、共感したい。
そんな感じ、かな。
一緒のリップを買ったのも、だからそういう理由からだった。
他にも同じ色のシュシュや同じメーカーのソックス、おそろいのシャーペン、イヤホン、缶バッジ、ケータイ、シャンプー、エトセトラエトセトラ――と上げれば切りがない。でもそれは度が過ぎると本人に気づかれてしまうから、リップも隠れて塗ったりしていたのだけど、さっき不注意でバッグから落としてしまって、それをあろうことか立風さんに拾われてしまったのだ。
「素楠さんと私ってなんか気が合うよね。シャーペンも同じだし」
「え? あ、そうなの?」
自然を装って驚いてみる。中学の時演劇部だった成果がここで試される。
実際は小道具担当だったんだけど。
でも目の前で演技とか見てきたし、さっきの作り笑いも通用したから、たぶん大丈夫。
たぶん。