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「となり、いい?」
「うん、いいよ。座って座って」
ありがと、といってちゆちゃんがわたしのとなりに腰を下ろす。ふわっといい匂いがして、思わず深呼吸しそうになってしまう。
「どうしたの? おでこ赤いよ?」
ちゆちゃんがわたしの顔を覗き込む。
「あ、うん、さっきちょっと」
「大丈夫? 痛くない」
「ううん、全然大丈夫」
顔が近過ぎていろいろと大丈夫じゃないけど。
それにしても、まつ毛長いなあ。後、やっぱりいい匂いがする。
もっと近づいたら、もっと匂いが濃くなったりするのかな。
「なんか、のりちゃんいい匂いがするね」
心の中を読まれたように錯覚してドキリとする。
「そう? ちゆちゃんのほうがいい匂いすると思うけど」
「たぶんそれ、シャンプーでしょ。そういえばのりちゃんも同じシャンプー使ってるよね」
「え? そうなの?」
すっとぼけてみる。まさか、バレてないよね。
「だって同じ匂いがするんだもん」
そういってちゆちゃんはわたしの首もとに顔を近づけて、す、と囁くように息を吸い込んだ。




