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ちゆちゃんはそんな悪い娘じゃない。すべて勘違い、妄言の類いで、風評被害といってもいい。
でも本当のことはいえないから、ただ否定だけする。
「ちゆちゃんはそんなことしないよ」
「じゃあどんなことしてるわけ?」
ちょっと返事に困ったけど、適当なことをいってなんとかごまかした。
「ふーん、そっか。それならいいんだけど」
本当にごまかされてくれるなんて、さすがはさっちゃん、類は友を呼ぶね。
「……おまえ今、あたしのことちょっとバカにしただろ」
「え? 全然。してないよ」
あっそ、とさっちゃんはちょっとふてくされて、でもすぐにわたしをまじまじと見てこういった。
「のりすけ、ちょっと変わったよな」
「そうかな。たとえば?」
「いや、わかんないけどさ。昔はもっとこう、くすんでたっていうか」
「ちょっとひどくない? それ」
「まあその辺は立風さんのおかげかもしれないけど」
なんとなく、ちゆちゃんのことを賞賛しているような気がしたので、くすんだ発言について問いつめることはやめた。でも。
「あたし、あの人ちょっと苦手かも」
という言葉は聞き捨てならなかった。




