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もう慣れたからあまり気にならないけど、改めて考えてみるとひどい綽名だと思う。
のりすけとはもちろんわたしのことで、そんなどこかの編集者みたいな呼び方をするのは、中学からの友達のさっちゃんこと冴木結だった。
さっちゃんはテニス部で、運動神経は良いほうなのだけど、わたしと同じチームになったせいでこうしてヒマを持てあましていた。ちなみにちゆちゃんも二回戦で負けてしまって、今は友達とおしゃべりをしている。
「別に、何もしてないよ」
コートの向こう側で楽しそうに笑っているちゆちゃんを見ながら、そう答える。
「本当に? けっこう変なうわさ聞くよ」
細い眼をわたしに向けて、さっちゃんが心配そうにそういう。
「変なうわさって?」
「のりすけがカツアゲされてるとか、のりすけがいじめられてるとか、後は、のりすけが奴隷にされてるとか」
「何それ。それに、わたしばっかり被害者みたいな」
「違うの?」
「違うに決まってるじゃん」




