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着てる?
着てるよ。
そんな会話をなんどもくり返した。その時も、今と同じようなことをいっていたように思う。
疑ってるわけじゃないんだけど。
本当のことをいえば、わたしも同じ気持ちだった。だから立風さんがこうしてあまり使われないトイレにわたしを連れてきた理由も理解できたし、そしてこれから何をするかも、だいたい想像がついていた。
時々大胆な行動に出ることは、喫茶店の一件で諒解済みだから今さら驚かないし、こういうことがわたしの頭の中に一度でも過ぎらなかったわけじゃないから、わたしと一緒だったんだとまた気づいて、むしろ嬉しかった。
不思議だった。
下着一枚替えただけで、こんなにも立風さんと同じになれるなんて。
まだまだ入口だけど、溶け合うことなんてずっとずっと先だけど、ふたりだけの時間、ふりだけの空間で、ふりだけの秘密をたしかめ合えることは、今わたしが手にできるすべてのような気がして、そう思うと、今感じているこの恥じらいもこのドキドキも、強く背中を押す力になるような気がした。
だからわたしは一歩前に出る勢いで、こういった。
「わたしも、見せて欲しいな」
立風さんはいつかと同じように、迷うことも躊躇うこともなく、黙って自分のスカートに手を伸ばした。




