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「あのさ、立風さん」
わたしは一度深呼吸をした後で、そう声をかけた。なぁに、と柔らかく答えて、立風さんがわたしを見る。
「その、わたしも一緒に下着買ってもいいかな?」
「うん。いいよ。一緒に買おう。何かお気に入りのあった?」
「いや、そうじゃなくて……って、そうなんだけど」
いけない。口が渇いて思うように言葉が出てこない。胸が急に締めつけられて、その圧力に心臓が悲鳴をあげるかのようにドキドキする。
でも、いわなくちゃ。
一歩踏みださなくちゃ、前に進めないから。
抹茶ラテを飲みながら、暗示をかける。
ここは舞台。わたしは役者。
大丈夫、いける。今ならいえる。
演技をするつもりで、わたしはこう口を開いた。
「立風さんとおそろいのが、欲しいなって」




