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慌てて視線を逸らしたけど、逆に視線を感じてひやりとした。
まずい。ひょっとしてバレたかな。
「あのさ、素楠さん」
「ひゃい」
思わず悲鳴のような返事をしてしまう。
「な、なんですか」
加えて敬語になる。もうダメだわたし。
恐る恐る視線を向けると、立風さんはいたって普通の表情だった。ストローを咥えたまま器用にこういう。
「今度の日曜って、ヒマだったりする?」
「あ、うん。うん。ヒマ、だよ。うん」
再び張り子の虎になる。わたしはいつだってヒマだ。
「日曜に何かあるの?」
「んー、別にないけど、ちょっと買いものにつき合って欲しいなーって思って」
「いいよ。大丈夫だよ。何買うの?」
「下着とか買いに行こうかなって」
ちらり、とさっきの特集ページを見せてくる。
「ちょうど新しいの買おうかなって思ってて、でも服とかも欲しいし、どうしようかなって感じだったんだけど、なんか今日見てたらやっぱり欲しくなっちゃってさ。私ね、けっこうこの雑誌で紹介されてるやつ買ってたりするんだ」




