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いっそのこと逃げてしまおうかと、そこまで考えた時、
「私もそれ好きなんだ。ほら」
といって、立風さんも手にしていた同じ雑誌を見せてきた。
「素楠さんも読んでるの?」
「え? あ、うん。うん。うん」
わたしは張り子の虎のようになんども首を縦に振った。
「そうなんだ。ちょっと嬉しいかも」
「う、嬉しい?」
「だってその雑誌読んでる娘少ないんだもん。みんな私が読んでるの覗くだけだし。ね、この後時間ある? よかったら一緒に喫茶店で読まない?」
「うん。全然大丈夫だよ」
「本当? よかった」
そういって、立風さんは天使のような笑顔をわたしに向けた。




