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密航者  作者: Hugo=Yago
1/1

如月

暦をご覧になりまして。

明日で如月を迎えます。

あなたは結局この国に未だ御とどまりのままですのね。


…いえ。

そうは申しておりません。

でもあなた去年仰っていたではありませんか。

私の故国ではそろそろ花が綺麗なのだと。

来年のいま頃には私はそこにいると。


…ええ、わかっておりますよ。

そうやすやすとはお帰りになれないことは。

それに、あなたがお帰りになると寂しゅうございます。

ですからいつまでもここに居られて良いのですよ。


…はい、その意気でございます。

それにしてもあなたは随分とこちらの言葉に御上達なさったこと。

わたくしがお教えした甲斐もあるというものです。

思えば…


…はい。

ああ、わたくしですか。

いえいえ、とてもですが難しくて…決して怠っているのではありませんよ。

それでも最初に比べれば…。

あー、べー、せー、で。

…お国のいろはくらいは覚えましてよ。


…。

何をお笑いですか。

確かにお国の言葉よりもいろはは多うございます。

ですけれど、声にするのが楽でございましょう。

それに、あなたはげんにこのいろはの使われているお国に暮らしておいででしょう。

…あっ。

そうでございました。

あなたはわたくしより他にたれにもお会いになったことはなかったのでした。

申しわけありません。


…え。

お外に出られたのですか。

なりません、見つかればいかがなさいます。

…いいえ。

言い訳は無用でございます。反省なさいまし。

それでいったい、どうなさっていたのです。


…まあ、呆れた。

それでは道端に菰を被って一日居られたのですか。

愉しゅうございましたか。

まあようございました。

ですが今後は決してなりませぬ。

お役人衆に見つかればあなたは囚われ、私も困ってしまいます。

それに、父は何も存じておりませんの…。


…わかっていただけましたか。

頼みますよ。

では、おやすみなさい。

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