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合法ロリと欠陥少年  作者: nara
第一章 コトノハジマリ
3/9

「結構有名なんだよ」

「……みたいなことがあったんだよ、兄ちゃん」


「拒否られてるじゃん」


 俺と全く同じ顔をした兄が、眉間にシワを寄せて神妙なお面持ちで呟いた。


「てか、敬助の女の趣味ってソッチ系だったんだね……知らなかったよ」


「いや、誤解だよ」


「……だろうね」


 俺は双子の兄、敬一(けいいち)と大学の近くに借りた2DKマンションに一緒に住んでいる。大学から帰宅後、仕事から帰ってリビングでテレビを見ながらくつろいでいた兄ちゃんに、今日の報告として愚痴をこぼしていたのである。

 兄ちゃんはテレビに視線を向けたまま、興味無さげに答える。


「これ以上関わる必要もないでしょ。わざわざ相手が“近づくな”って言っているんだからさ。これで近づいたら犯罪だよ、は・ん・ざ・い」


 そんな強調しなくても。


「いや、でもさ。なんといっても同じ課程だし……。そして、何か引っかかるっていうか、気になるんだよね」


「その言葉、本格的にお前の性癖を疑いたくなるよ……」


「そんな変な意味ないって!」


 兄ちゃんは鼻で笑って「まぁ」と切りだす。


「んー僕としてはどっちでもいいや、敬助の思う通りにすればいいよ。ただ、また“僕と同じ顔”で変なことしないようにね?」


 そう言って、こちらに視線を向ける兄ちゃん。

 思わず、俺は兄ちゃんから目をそらしてしまう。

 そして、悪さをして怒られたばっかりの子どものようなバツの悪さを感じて、声を絞り出した。


「それは……わかってるよ」


 それはそうなのだろう。

 よくわかっているはずだった。

 兄ちゃんはテレビのリモコンを取り、チャンネルをいじり始める。


「まぁ好きにやってみれば? あ、冷蔵庫から緑茶取って」


 あくびをしながら、兄ちゃんは俺に緑茶を所望した。

 その日、この後、青山さんの話題が挙がることはなかった。





 結局のところ、俺自身も自分の気持ちがよくわかってなかった。

 外見が明らかに小学生の彼女が、なぜか気になる。


――もしかして俺は。


 ロリコンってやつなのか。

 幼女が好きな変態だったのか。

 と、自問自答しても答えは出ない。

 カミングアウトになるが、俺の好きな女性のタイプは巨乳なお姉さんだったからだ。

 性癖の変動があったのか。

 もともと素質があったのか。

 潜在意識下でロリを欲していたのか。


――と、朝一番の講義が始まる前に、席に着いて自問自答していたら、


「よっ、ロリコンの白沢くん」


「誰がロリコンだ!?」


 後ろから声をかけられて思わず反射的に大声を発してしまった。

 振り返ると、茶髪のジャニーズ系イケメンがニヤニヤしながら立っていた。

……んん? こいつは確か、ええと、学籍番号1番の……。


「同じ課程の藍原だよ」


「ああ、藍原玲司(あいはられいじ)!」


「いきなり呼び捨てとは……まぁ同学年だからいいけどさ」


「そっちこそ初対面で“ロリコン”はないでしょ」


「それはそれで悪かった」


 本気で悩んでる。いろんな意味で。


「結構有名なんだよ」


「え?」


 まさか、一日で変態ロリコンの称号を手に入れてしまったとか!?

 俺の大学デビューが本格的に暗礁に乗り上げてしまいそうだ。


「いや、君じゃなくてね、青山さんの方」


 と、藍原くんは端っこの方に座る彼女に視線を送った。


「ロリなこと?」


「いやいやいや、違う違う」


 笑いながら否定する藍原くん。

 随分人懐っこい笑い方をするな、と思った。

 しかし、すぐに顔を曇らせる。


「いや、そーいうわけでもあるのかもね。……彼女さ、歳を取らないんだよ」


 ……。

 …………。


「はぁああああああああああ?」


 そんなわけねーだろぉおお。


「あ、そんな訳無いだろって思ったでしょ」


「いや、だって突然過ぎてさ」


 今日日そんなファンタジックでクレイジーなことを言う輩が出てくるなんて、思ってもいませんでしたよ。ええ。


「まぁそうだろうけど。てか、隣の席座っていい?」


 いいよの合図を込めて俺は軽く頷いた。

 藍原くんは隣の席に座ると、持参していたグレーの手提げかばんから、講義の教科書を取り出しながら語りだす。


「……小学5年生くらいからあのまんまらしいんだよ、彼女。俺近くの高校だったから噂知ってるんだよね、魔女がいるって」


「魔女って」


 ずいぶん安直なネーミングセンスだ。

 小学生とはそういうものなのか。


「噂というかなんというか、やっぱり目立っちゃうらしくて。青山さんと同じ高校だった友達からも聞いたことあるんだけど、学校で喋りかけてもほとんど会話が続かないらしいから、友達もいなかったらしいよ。ってか自分から作ろうとしなかったらしいね、彼女」


 あー。

 それはわかる気がする。

 “自分に関わるな”なんて言ってたら友達なんてできないし、作る気なんてさらさらないようなもんだもんなぁ。


「だから昨日、白沢くんが一緒にご飯食べてたのがちょっとした噂になってるんだよ」


 そこで間を置いてニヤっと笑う藍原くん。


「ロリコンが現れたって」


「結局それかよ!」


「半分冗談だよ」


 人懐っこい笑顔で話す藍原くん。

 そして半分ってなんだ。


「でも、君が注目人物になっているのは本当だよ、白沢くん。あの魔女と一緒にいられるなんて! って。俺も興味出て話しかけちゃったし」


「とりあえず俺はロリコンではない」


「そういうことにしておくよ」


「あと、敬助でいい」


 怪訝な顔をする茶髪イケメン。


「“白沢くん”じゃなくて」


 と言うと、彼は納得したような顔で笑った。


「じゃあ俺も玲司で」


「りょーかい」


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