7話 トレダの街に着いた件
森を抜け草原をしばらく歩くと人の手によって整備された街道に辿り着く。
予定を1日半遅れで予定していた行程に戻った。
時折バッグを確認してみるがシンもグッスリ眠っている。
ほんとによく寝る、一寸心配になる。
あと街道を半日ほど歩けば自由交易都市トレダの街だ。
自由交易都市トレダは交通の要で、三つの国と一つの魔境に接した街だ。
北に馬車で三日程行けば農業大国イスパーダ王国、東に三日ほど行けば鉱物資源の豊富なクリスト王国、南に三日ほど行けば大国イラハジャンナ帝国に着く。
この計った様に同じ距離なのには勿論理由が有る。かつてこの地を巡りこの三カ国は血を血で洗う戦いをお互い滅亡寸前までいった。
その危機の回避のために同じ距離を置きそこより先に軍を進めないと交わし、仮初の国境を確定した。
そして残った西は二時間半ほど徒歩で進むと魔境シャドーウッドの森がある。
シャドーウッドの森は森と言っているが規模は小国ほどの広さが在り、そこに無数の魔物や魔獣が蠢いている。ベテランの冒険者の主戦場で先程シンと出会い抜けてきた場所だ。
先程たどり着いた街道はイスパーダ王国につなっがっている。
街道には行き交う商人達の隊商がちらほらと見える。いくら交易が盛んでも流石に現代日本の様な交通渋滞など街道では起きていない。この世界で旅をするには簡単ではなく、命がけの部類に入るのだ。
街道を南に向かいトレダを目指す。
天気は、晴れ旅をするには良い日だ。まあこの辺りはには余り雨は降らないので珍しい事ではないのだが。
隊商の様子もどこか和やかだ。まあトレダの街から歩いて半日という事あり道も整備され通りやすく、自警騎士団が定期的に巡回もしているから盗賊に襲われる心配も殆ど無い。
それから半日ほどシンの様子|(ほとんどバッグの中で寝ていた)を確認しながら歩くと自由交易都市トレダの街が見えてきた。
高さ約4m50cm、一辺が約2kmの頑強な城壁に四方を囲まれた城塞都市でもある。
門は北と東と南に三つ有る。今回は北の門を使う事になる。
日も傾きかけて来ていてトレダの街から出発仕様としている者は殆どいなくなり、トレダの街の中に入るために門の前に列が出来ていた。行商人や旅人はここで入場料を払うわなければならない。自分はこの街の冒険者ギルドに登録してある冒険者なので払わなくても良い。
自分の今の拠点でもある。
列を横目に門を通り抜けようとすると顔馴染みの門番から「よう」と呼びかけられる。
「お久しぶりです。」と応えると
「元気そうだな、今回は長かったな」と聞いてくる。
「ええ、イスパーダ王国まで往ってましたんで。」
「イスパーダ王国か。でどうだった。」
「ちゃんと依頼をこなしてきましたよ。」
「そうかそれは良かった。まあ、お前を心配するだけ損か。」
「酷いな、まあ心配をして頂いたみたいですから有難うございます。と言っておきます。」
ハハハハと笑われ、
「言うようになったな~。お前がこの街に初めて「ちょっと待って下さいよ。そんな古い話だされても」と口を挟むと、
「まあ今度酒でも付き合えや。儲かったみたいだからお前の奢りでな」とガハハと笑いながら手を上げ仕事に戻って行こうとする。
あの人には本当に敵わないなと苦笑いしなが頭を下げようとすると、
『ぴぃ』
と言う鳴き声が突如響く。
(ぎゃ~~、なんでお約束の展開なんだよ、おれはそんなもの求めてないぞ~~)
門番が「いま何か聞こえなかったか」と尋ねてくる。
あせる気持ちと引き攣りそうになる顔を必死に抑え、
「いえ何も」と惚けると、
「そうか、空耳かな・・・・。」と頭を掻きながら仕事に戻って行く。
お約束の展開を通り過ぎ、自分も背中に嫌な汗を掻きながら再び頭を下げ、不自然にならない速さでその場を去る。
門番から見えなくなると素早く門を通り抜け物陰に隠れる。
バッグをあけシンを確認するが未だ寝ている。
「さっきの声はなんなんだよ!寝ぼけてたのか?寝言なのか?」と心の中で愚痴りシンを見詰めた。
でもシンにもこの街を見せてやりたいな。今は情報が無さ過ぎて表に出すのは無理だけど。
気を取り直し街のメインストリートを歩くる。日も大分傾いて来たがまだ明るい事もあり街は未だ賑わっていた。
トレダの街は中央メインストリート沿いは官庁街と大棚の商会の店があり、北と東に商人達の拠点と住居、南側に冒険者や旅人用の拠点用の宿屋街、そして門の無い東側は一般住宅街となっている。東側に門が無く、また商人達の住居が無いのはシャドーウッドの森に面しており、魔物や魔獣の襲来の際は危険の可能性が高いからだ。
それと同じように南側が冒険者の拠点になっているのは南のイラハジャンナ帝国に備えてである。この街は基本的には商人の街であり、やはり優遇されるのは商人なのだ。
トレダの街の人口は定住しているもので二万人超える程度、ただし行商人や冒険者の数を加えるともっと増える。昼間は二万人のトレダの住人や商人達が街を所狭しとばかりと駆けずり回り大変活気に溢れている。夜は夜で冒険者や行商人達がその日得た儲けを糧に酒場や娼館で騒ぎ出す。この街は交易都市の名に恥じぬ活気があった。
シンにもこの街を見せてやりたいな。今は情報が無さ過ぎて外に出して一緒に歩くのは無理だけど。
お読み頂き有難うございました。読み難いかも知れませんがまだ続きますのでもう暫く御付合いの程宜しくお願いします。
追伸、今日はこの後20時に本編とは直接関係なく読まなくても大丈夫ですが、資料として自由交易都市トレダの歩み投稿します。宜しければそちらもお読み頂けると幸いです。