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6話 夜の森で考えた件

 ワイヴァーンを追って来た道をシンをバッグに入れている事も有りゆっくり引き返す。

 追っている時は気にならなかったがかなりの距離を追って来ていた様だ。

 離されない様に走っていたので速度の事は特に気にしなかったが、矢張りかなりの速さで駆け抜けていたようだ。所々駆け抜けた衝撃で森が荒ていた。

 しかし此の侭の速度だと森を抜けるのにまだかなりの時間がかかりそうだ。

 来た時と同じ速さで駆け抜ければ日が暮れる前に森を抜けれると思うが今はシンがいる。

 時折バックの中を確認しているが静かに眠っていた。

 その時に手で頭や身体を撫でてやると擽ったそうに身体を揺らす。

 様子からして衰弱して動けなくなっている訳でもなさそうだ。

 このまま行くと森の中で野営する事になる。

 森の中で野営するのは危険だ、しかしこれからもとの岩場まで戻るにもかなりの距離を戻らなければならない。たぶん日が暮れるまでに戻れない。

 どちらにしろ夜の森で行動しなければならない。


 少し考え、森の様子を見渡す。

 普通森の奥深くや夜の森確かに静寂に包まれる。しかしその内実は魔獣や魔物が夜の静寂に紛れ獲物を探し獰猛に動き回る危険な死の静寂だ。だがこの周辺はその気配が無い訳ではないが薄い。

 ワイヴァーンの巣が近くだった為だろう、凶悪な魔獣や魔物の存在は近くに感じられない。

(当たり前だが、ある歌に在る様な落し物を届けてくれるような熊もいない。)

 おそらく危険な魔獣・魔物の類はワイヴァーンが駆除するなり、追っ払う為りしたのだろう。

 勿論ワイヴァーンも全ての敵対する生き物を殺せる訳も無く、この周辺の森にも生物の気配がし、隠れてこちらの様子を窺っている小さな気配はあるが襲ってこようとしている攻撃的な気配は無い。


 森の様子を確認し、岩場に戻って安全を確保するのと森で野営するのと変わらないと決断し、もう少し進み野営に適した場所をさがし野営する事を決め歩き出す。


 日が沈む前に少し視界が開けた野営に適した場所を見つけ野営の準備をする。

 枯れ枝は周りに腐るほど在りすぐに見つかる。手ごろな石をコの字に小さなかまどを作り魔法で火を着け腰のバッグを外し腰を下ろす。

 食事の為にここまでの道すがらで狩ったラージラビットを捌き一部を細かく刻み残りを火にかける。

 バッグの蓋を開け中を覗くとシンはまだ大人しく眠っていた。

 手で触れると寝ぼけた感じで頭を上げる。

 何を食べるのか分らなかったので、ワイヴァーンは肉食だからと細かく刻んだ肉をシンの前まで持っていってみるが興味を示さない。

 まだ眠いのだと抗議の要に「ぴぃ」と鳴いたあと再び頭を身体に埋め眠りだす。

 孵化してから半日位経つがまだ何も口にしていない。大丈夫なのだろうか。

 とりあえず衰弱している様子は無いので納得するしかない。

 先程の鳴き声も「はらへったー」では無く「ねむたい」に聞こえたので良しとする。

 野営には慣れているとはいえ矢張り夜は寂しい。

 隣にシンはいるが先程ねむいと邪険にされてしまった。

「しかし今日は驚いたな」と一人口にし今日起こった事が頭の中を巡る。

(ボッチは寂しいな。いや俺にはシンがいる。でも相手してくれないしな~)

 流石に今日は疲れたのでこれから何事も無ければ良いなと燃え盛る焚き火の番をしらがら夜を過ごす。

 その夜は魔獣や魔物の襲撃も無く過ぎた。


 翌朝、朝の日の光を浴び半分寝ていた意識を起こしバックの蓋を開ける。

 バックを覗き込むとシンも気づきこちらをみて元気良く「ぴぃ~」と鳴く。元気そうだ。


「シン、おはよう。良く眠れたか」と話しかけ再びシンの前に細かく刻んだ肉を出す。

 シンは何々と謂わんばかりに興味心身で嘴で突いたりしているが食べる気配が無い。

 ならば水はどうだと水筒から手に少し出しシンの前に出すが、水にも興味を示さない。

 そういえば卵の時だが触れたときに魔力を持っていかれたのを思い返す。

 その後シンに直接触って変化が無いので忘れていたが魔力が餌なのかと思い浮かぶ。

 でもあんな風に魔力を持っていかれるのは嫌だと思い一瞬逡巡する。

 だが餓死させるのも嫌なので試せる事は試す事にすることにした。

「お父さんは頑張るぞ!」と声に出し気合を入れる。

(今一瞬躊躇しただろうと言う心の突っ込みは無視)

 手に魔力を纏い慎重にシンに触れる。シンは触れた手に鳴きながら戯れ付いてくるが魔力を持っていかれる様なことは無かった。

 覚悟をして触れたので若干肩透かしだったが、シンの愛嬌のある可愛らしい行動に抱き寄せたくなりバッグから取り出し頬にすりつけあやす。するとシンも嬉しそうに鳴きながら頭を擦り付けてくる。


 暫くするとシンは又眠くなったのか頭を身体に埋め眠りだす。

 出発するには丁度良い頃合なのでシンをバックに入れバックを腰に巻き燻っていた火を水魔法で始末し歩き出す。


 行きとは違い森の外縁部で低級な魔物のゴブリンやイノシシの魔獣に襲われたが難なく対処し、日も高くなり始めた頃ようやく森を抜け昨日ワイヴァーンに襲われた場所に辿り着いた。

 昨日ここでワイヴァーンに襲われたのがシンとの出会いの始まりである。

 しかしシンにとっては親を殺された場所である。

 微妙な感覚に囚われて立ち尽くしていると『ぴぃ~』と鳴き声が聞こえてくる。

 バッグの蓋を開け中を見るとどうしたんだと云わんばかりにシンが見詰めてくる。

 バッグの中からシンを取り出し撫でてあやしてやると、安心したのかまた眠りだした。

 眠ったシンをバックに戻し「お前は本当に変わった奴だな」としみじみ呟く。


 ・・・・さてとトレダの街に戻りますか。今日中には着きたいな。

お読み頂き有難うございました。拙い文章ですがもう暫く御付合いの程宜しくお願いします。

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