5話 名前をつけた件
育てる事を決心し再び雛を見る。
そうだ、育てる事を決めたのだ。
これから暫くは一緒に暮すのだ。
なら呼び方が雛や奴で収まりが悪い。なんか余所余所しいし。
ならばここは名前を付けてやらねばならない。
この俺が育てるのに相応しい名前を!!
・・・・・はい、冷静になろう。なんか自分を見失ってるよ。
いかん、いかんと思い頭を二、三回横に振り再び考え出す。
う~~ん、無い知恵を絞り色々と候補を思い浮かべてみる。
確か竜達の王バハムートは格好良すぎるから、あやかってバル。
だけどアレは完璧な獣だったけ、ゲームの影響からか竜だと思ってたけど・・・それになんだか仰々しくてちょっと気が引ける。
レヴィアタンからレヴィ、ティアマトからティトなども思い浮かべる
またインド神話のカドゥルー、アナンタ、仏教のムチャリンダ。どちらも蛇神だが確か龍王でもあったはずだ。日本の八岐大蛇・・・・次々と神話やファンタジーの有名どころの名前が思い浮かぶびそこにあやかった愛称などを作り思い浮かべるがピンと来るものがこない。
竜そのもの名前でなくそれにまつわる人物で、イギリスの赤い竜の化身のアーサー・・・・
竜殺しの英雄のジークフリート、建速須佐之男命、ゲオルギウス・・・・・
は雛にとっては縁起でもないよな、殺ちゃう人たちの名は拙いでしょう。
いっそ今はやりだったブルー○イズ○ワイトドラゴンとかつけるか、それともスターダ○ト・・いやフォト・・
いや駄目だ早まってはいけない、早まっては。
それに雄的な名前が多く思い浮ぶがこの雛が雄なのか雌なのか解らない。
名前をつけた後で性別にあっていなかった名前をつけるのは拙いな~と思いつつ、ワイバーンの雛の性別は鶏の雛の総排泄口による雌雄鑑別で判るのか。
そもそも難しいやり方だって雑学の本を読んで名称をたまたま覚えていただけでやり方だって知らないし。
飼育している人なら知っているのかな。
訊きに行くしかないかとあれこれ脱線しながら考えていると、そういえば竜の意味の漢字って何個か在ったよな。
先ず竜、その次に龍、えーっと振いや違う辰だ。
竜と同じ意味を持ちたつと訓読みしシンと音読みする。
ん!!・・・シンか、善いな。うん善い。
物凄く平凡でひねりも無いけど善い。
雄なのか雌なのか分らないけどそんなの関係ねーて気分だ!
よし決めたお前はこれからシンだ。
自分と同じたつの響きを持つ漢字で読み方が違う名前。
ある意味灯台下暗しで、自分が育てる竜にピッタリな名だ。
両手で抱えていたワイヴァーンの雛を頭上に掲げ宣誓する。
『これからお前の名前はシンだ!この遠見達雄が命名する。』
と高らかに宣誓するとシンが喜ぶように『ぴ~~』と鳴きまた突然輝きだす。
え何で突然又光るの、今度も又姿が変わるの。掲げた手を見詰める。
あまりにも光を直視していまい目が眩み体勢崩し落としそうになり慌てる。
が無事手に収まっていた。
しばらくすると輝きが収まり「ぴぃぴぃ」と言う鳴き声が聞こえてくる。
掲げていた手を下ろしシンを見詰める。
その姿には変化は無いようだ。
ちょっと期待していただけに残念だな。
(こんな事考えているのがシンにばれたら非行に走られるぞ。嫌無いシンに限ってはお父さん信じてる)
でも今の愛らしいシンの姿もすきなのでこのまでいっか。
しかしシン、お前は本当に不思議な雛だな。本当にワイヴァーンの雛なのか。
改めて根本的な問題に行き着く。考えても答えが出ない。
この問題はとりあえず思考の外において置くしかない。(宿題だな。)
さて、これからどうしようか?
そういえば依頼の任務中だったな。まずは終わらせないと。
あとワイヴァーンについて改めて知りたいから飼育場にも行きたいな、とこれからの行動の予定を手の上のシンをあやしながら考えていると、シンの動きが鈍くなり、首を羽毛に埋め丸まって動かなくなる。
疲れて眠くなってきている様だ。
そうなると此のままでは動きづらいな。
起さない様に慎重にシンを近くの平らな岩に降ろし、シンを入れるのに丁度良い物がないかと魔法の袋の中を探る。そう謂えば腰に巻いて使えるバッグがあったな。
バッグを魔法の袋から取り出し、一緒に数枚の布も取り出す。
取り出した布の上にシンを載せ包みバッグに慎重にバッグに入れる。
嫌がる素振りも無く自ら布の中にうずくまり静かに眠っているようだ。
良しこれでシンの居場所も決まったし両手も使える様になった。
卵が在った場所確認すると白い欠片が残っていた。
輝きは無くなった白い卵の欠片が散らばっている。光に吸収されなかった様だ。
欠片を布ごしに触って持ってみるが、特に変わった所も無い欠片だ。
大丈夫だと判断しつつも突然の事故に備えながら直接触ってみるが矢張り魔力を吸い取られる様な事は無かった。
この卵の欠片も全て集め、気休めだが安全対策として布に包んで回収し魔法の袋に入れる。
他に変化や調べる事が無いか周りを確認する。
他に目ぼしい事は無いようだな
よし一度街に戻り依頼をこなしてしまおう。
お読み頂き有難うございました。
遂に主人公の前が判明。これからどうなるのでしょう。
筆者も若干不安です。
拙い文章ですがもう暫く御付合いの程宜しくお願いします。