NEW QUEST Ⅲ
そろそろセンターだねw
私もどうしよw
【合成】
アイテムとアイテムを組み合わせ新たな武器や道具を造り出すこと。しかし銃の創成は不可である。プレイヤーは合成を駆使しフィールドやラビネンスを能率よくプレイしていくことが可能。
★
夕方の静閑としていた森に爆音が舞い降りた。
煙とともにアシャントルフを確認することが不可能となる。
「・・・・やったのか?」
何秒かたって煙がはれようとしていた。アシャントルフの姿がおぼろげに現れる。
視界中央、敵のHPが残り4割弱になったことを確認すると、AR-10を構え臨戦状態にはいる。
その時アシャントルフのけたましい雄叫びが俺の鼓膜を射抜いた。さらに肌の色(茎の色)が緑から禍々しい赤色へ変色する。
一応、人型とも言えなくはない四肢がなんとも言えないキモさを醸し出していた。つまるとこ、青が赤の唐辛子(手と足付き)に熟成したようなところを想像すればぴったりだ・・・・と思う。
「あっれー、怒っちゃった?」
半ば苦笑しつつ、独り言のようにアシャントルフ問いかけた。言葉ってそういや通用するのかな、と場違いな思考が頭のなかで渦を巻いていたが、案の定と言うべきか返ってきたのは言葉ではなく高速のツルだった。
「当たり前かッ」
そういって左へ半回転し避けると同時に、AR-10を3点バーストで放つ。
小気味よく連射の反動が腕から伝わり、脳みそがようやく戦闘段階へシフトチェンジする。
「うおぉぉぉぉぉぉぉおおおおッ」
三点バーストからフルバーストへ切り替え、アシャントルフのHPが残り2割を切ったところで、銃の残弾がなくなった。
幸いここら辺は木々が多く隠れる場所が山ほどあった。木の影に転がり急いでマガジンを交換する。
目標を見失った敵は攻撃をやめこちらの出方を伺っていた。
「ハァ・・・やっぱ速い・・・だけどなッ」
確かに、敵の攻撃は速い。が、アシャントルフの攻撃は単発なうえパターンも腕のツル1つしかない。至極読みやすいものだ。
βテスト時の経験をいかし俺はまず、左側から身を乗り出す。当然アシャントルフは俺の左を攻撃するが、それはブラフ。したがって右側からの攻撃だが、ツルは手と同義つまりは2本ある。
今俺が右側から飛び出せば構えていたアシャントルフのツルが容赦なく俺を狙い撃ち、βテストの時のように死んでジ・エンドだ。そこで、この攻撃もブラフだ。
本命は引き寄せて近距離からの一斉射撃、これしか今の俺には勝つ方法がない。
時間差で打ち出してくるツルはコンマ何秒という超短時間ではあるが、伸び切って掴むことが出来る、ということをβ版で嫌というほど思い知らされた。
俺は身体は右側へ乗り出しながらツルを確認し、左側の手で伸び切ったツルを掴んだ。
「釣ったぁぁぁぁぁッ」
思い切りこちら側へ引っ張ると同時にマガジン内にあるすべての弾を吐き出すように一斉射した。
交換を終えたAR-10は命が宿ったように敵のHPを吹き飛ばした。
「ふー、やっぱりβテストの時よりかは動きか読みやすかった・・・か」
息を吐き、呼吸を整える。
アイテムストレージを開き、今手に入った『アシャントルフの実』を確認した。
「これで10個全部か・・・・足りたな」
そういって一つのアイテム名を押した。やはり攻略できたのは"これ"おかげだろう。これがなかったら、とてもじゃないがアシャントルフのHPを一撃で6割を吹き飛ばすことは不可能だった。
「感謝するよ、 」
ストレージから取り出した合成アイテム『グリーチ』を手に持ち、ふと攻略前のことを思い出した。
アシャントルフ攻略開始6時間程前に遡る______
俺はラビネンス入り口辺りにある草木に、
「よし、ここら辺なら・・・・・・」
そういって俺はアイテム画面を開いた。取り出すのはマガジン5丁分だ。
マガジンをタップして『YES』を押すと、手元にマガジンが現れた。このマガジンはというと・・・・
「ここに棄てる!ふはははー(棒)」
冗談・・・ではないのだが、フィールド内にアイテムを放置する行為は背徳感だろうか、胸にくるものがある。
「ストレージ容量がちっさいんだもんなぁ」
AR-10の弾倉は弾があんまり装填できないくせに、スペースは多くいる。
とりあえず見つからない場所にマガジンを置き、俺ははじまりの街に足を向けた。
「らっしゃーい冒険者さんよ!何でも売ってるミスリル雑貨店にようこそだ」
街に戻った俺はそのまま雑貨店に足を運んだ。
火薬の匂いが漂う店内ではところせましに弾丸はもちろん火薬、雷管、薬莢が一面に並んでいる。端の方には、これらが一体となった実包と呼ばれる完成されたものまで揃っている。
「えーと・・・・パウダーを10個ほど」
そう陽気な兄ちゃんNPCに伝え、「ちょい待ちな」の声のもと約5秒のち火薬を受け取った。
「おう、攻略頑張ってくんな!」
相変わらずテンションが高いNPCだった。
パウダーをストレージにしまい、俺は店をでた。
このあととんでもないことが身に降りかかるとは知らなんだ・・・
......俺は全力疾走した。辺りは真っ暗で1m先も見えない。暗視ゴーグルなる馬鹿高いものをつければ話は別だが、生憎そんな金は持ち合わせていない。
俺は先程マガジンを置いた場所へ急いで戻った。
「あぁぁぁぁぁ・・・・・」
口から後悔の念が垂れ流しになる。あの時あんなやつのいうことなんか・・・
時刻は午後4時。ここを去ったのが午前10時であるから、たっぷり6時間たった計算になるが、今の俺にそんなことは重要ではなかった。
「マガジンが・・・ない」
やはりというべきかマガジンがなくなっていた。
この世界には耐久値というものがあり、時間と共にそれが減っていく。現実では何年も放置しなければ風化どころか錆びつくことがない弾倉もこのゲームでは無に等しいのだ。
「くそっ・・・サイファーのやつ・・・ッ」
何故俺が何時間も戻ってこれなかったのかというと、サイファーが原因だった。
サイファーの話をすると攻略の時間がなくなるためここでは割愛するが、絶対に話す!ツ○ッターにも書いてやるからな!あんなやつしるもんかッ!
とりあえず深呼吸して落ち着きをはらい、先ほど(6時間前)買ってきた火薬をストレージから取り出した。
袋に入ったそれは理解準備室で嗅いだ独特の臭いを彷彿させた。
「よし、もうひとつのアイテムを・・・」
そう言って俺は今回の攻略の鍵となる『サロスの角』をアクティベートした。
サロスの角はライナサロスから取れるレアアイテムで、俺がβテストの時に何気なく火薬と合成したら、『グリーチ』なる小型爆弾が出来てしまったのだ。
そのことを情報屋の"ハヤブサ"に売ると曰く、
「かのめでたきこと常にはあらず。誠にありがたきもの、皆の者に売らむ」だそうだ。
この時彼女はちょうど古文のテストがあったらしく、ゲーム内では古語を使うようにしていた。
人物がばれないよう口調や人相もかなりの頻度で変えなければいけないようで、情報屋というものは「誠にをかしきものなりけり」と後の人々は語りました、まる。
「って、こんな話をしてる暇はネェッ!」
そうだった、夜になる前にアシャントルフの実を10個手に入れなければならなかった。
急いで火薬とサロスの角をタップして合成を選択。
すると、2つのアイテムが俄に光だし一つのアイテム『グリーチ』へと変化した。
「よしッ、行くか」
残り全部を合成に費やして、これまでのことをすべて忘れるように意気んだ足でラビネンスの大地を踏み込もう_____としたときマガジンがゼロなことに気づき慌てて買いに街へ戻った。
再びラビネンス入口までやってきた時にはすでに日が夕暮れ模様だった_________
★
はじまりの街に戻ると辺りはもう暗くなっていた。雰囲気を出したガス灯(に似せた何か)が周りを照らしている。
急いで喫茶碧屋に向かいクエストクリアしようと駆け足で走った。
碧屋にはいると、店内にお客は一人もいなかった。
辺りを見回して若い店員を探す。どうやら厨房にいたようで頭の上には黄色く光った『!』のクエストクリアの証が表示されていた。
「あの、アシャントルフの実持ってきましたよ」
「あら、まぁ。ありがとう、これでまた美味しいコーヒーができるわ」
若い女性特有の可愛らしい笑顔と共に、
「そうだ、お礼は何がいいかしら。あんまりいいのがなくて・・・これでいいかしら?」
と、カウンターの下からお礼であるFAMASを取り出した。
「おぉ、それでいーですッ」
何でそんなところに銃が隠してあるのかはさて置き、俺は受け取った途端FAMASの重さが手から伝わり、感動がこみ上げてくる。サイコーですッ!
新しいオモチャを手に入れた子供のようにウッキウキ(笑)で店を出ると、目の前には件のプレイヤーが立っていた。
「ハロー、アイン。むしろそろそろイブニングかしら?」
嫌味な微笑を浮かべながら立っていたのはサイファーだった。俺はサイファーの顔を見ないよう顔を背けながら、
「・・・。オツカレサマデスー。ジャアマタアシタ・・・」
と、適当にあしらってその場を立ち去ろうとしたのだが、強引に肩を掴まれ動くことが出来なくなった。
「ちょっと待ってよー。いいじゃん、これから飲みいこうよ」
現実なら高校生である俺はバーで酒を飲むなんてことは不可能だが、如何せんここはゲーム。お酒も飲み放題だ。もちろん酔うこと二日酔いで苦しむこともない。
「嫌だ、お前昼間俺にやらせたこと忘れたのか?おかげでこんなに遅くなったんだぞ」
「だから、その埋め合わせをしようって言ってるんだよー」
いかにも白々しくいうサイファーは強引に手を掴み酒場に連れだとうとした。
「ちょっとやめろって、手がちぎれるッ」
しどろもどろに言うとサイファーは、
「え、何?じゃあこうしてほしいの?」
と、いきなり俺を引き寄せ腕を絡めてきた。
その時サイファーの控えめだが、男には存在しない確かな膨らみを感じ取ってしまった。
ウガーッ、そう、なんとというべきかサイファーは女性アバターだったのだ。フードを被っていない下の顔が可愛らしい微笑に変わる。
「どう?行く気になった?」
無邪気に笑う彼女に俺は言葉が出なかった。
話は日中に戻る_________
どうもー、桜庭ハルですー。
これを投稿したのはセンター前日!私ってバカw
これからも頑張ります!応援よろしくお願いします、まる。
よろしければ活動報告もお読みくださいませー( ノД`)…