危うしコンちゃん!
「つい半年ほど前から、ユングヴィ様は性格が変わっておしまいになったのです」
翌日、朝食のパンと目玉焼きをかじりながら、コンはそんなことをガウディから聞かされる。
「は? どういうことか説明しなさい」
「半年ほど前のユングヴィ様は、とても慈悲深く、力でねじ伏せたり結婚を強いたりなど、とんでもないといったお方でした。ところがユングヴィ様は怪しいツボを商人から買わされ、それ以降から貪欲でいじきたない、あくどいお方になったのです」
「ほう、ツボねえ。案外、魔法のかかった呪いのタンツボだったんじゃねえの」
コンは冗談のつもりで言ったのだが、ガウディは真に受け、
「どうやらそうらしいと」
肩をすくめていた。
「呪いのタンツボ、まじかよ」
そのうちにユーリが髪の毛を逆立てやってきて、寝ぼけ眼でテーブルの席につく。
「おはよう・・・・・・」
目をこすりながらユーリが言った。
「お嬢ちゃん。ねぼすけだな。お天道様はとっくに真上だぞ」
「いいの。ここでは時間なんて気にしないから」
コンはユーリを子供に戻してやりたい、となんとなくだが思えてきた。
そう、時間も、結婚も、気にしないですむような・・・・・・。
「ガウディ。俺、やるわ」
ガウディはユーリにお茶を注いでいたが、コンを振り返る。
「俺、やるよ。ユーリとの結婚はまあ、おいといても、ユングヴィのことだけは」
「あなたならきっと、そういってくださると信じていました」
ガウディはにっこり微笑んだ。
ユングヴィの治めるユングリング王国は、とても豊かで、イングナ・フレイ、ユングヴィ・フレイと呼ばれるフレイ神が魔法を人間に教え、人間はフレイを信仰し、お互いを支えあってきたという。
長い長い歴史をユングリングは刻み、歩んできたのだった。
「ユングヴィ様。アイスツルフ王国から手紙が」
ユングヴィは結婚の返事が聞けると喜んだが、険しい表情になる。
「ユーリアが・・・・・・結婚する!? 腑抜けたやろうと!」
フレイは激怒し、もごもごと口の中で念仏のように唱える。
「ゆるさん! 絶対にゆるすまじ!」
ユングヴィの机に置かれたツボから、紫の霧が発生し、ツボはまるで、ユングヴィの憎しみのエネルギーを吸い取るかのようにしていた。
そのツボを売りつけた商人というのが、先代のユングリング王、オーディンであったことは、ユングヴィもコンラードも知る由がなかった。
「あいつら、バカやっとるようじゃのぉ。どれ、ここらでまたワシが活躍しようかな」
ユングヴィとユーリをくっつけ、自分がユーリをいただこうという計算が、すっかり狂ったオーディンは、邪魔者コンラードを殺しにかかる。
危うし、コンちゃん!
またしても暗殺ネタ。
タンツボだしね〜、オーディンさん! 汗