記憶を消し去る魔法を教えてください。
短編です
お師匠様の部屋には、超すごい本が沢山置いてある。魔法に関する書物だ。お師匠様の、お師匠様は偉大なる魔法使いで、文献や絵本にすら、その名前が書かれているくらい有名人だ。そんな大師匠の一番弟子だったのが、僕のお師匠様だ。
お師匠様は厳しい人で、基本的に信頼している人間以外、お師匠様の部屋には入れない。
一度だけ、兄弟子が、忍び込んだことがあったけど、兄弟子は蛙の姿に変えられて、一週間森をさまよう罰を与えられていた。想像するだけで恐ろしい。それに、あの時のお師匠様の顔は、まるで絵本に出てくる魔物の様だった。森から帰ってきた兄弟子は「見るんじゃなかった」と言い残して、お師匠様の弟子を辞めてしまった。
だから僕は、お師匠様が禁じていることは絶対にしない。蛙の姿に変えられるのは嫌だ。
でも一度だけ、お師匠様の部屋をのぞくことが出来たんだけど、沢山の本棚の真ん中に正面を向いた本が置いてあって、その本は鎖でグルグル巻きにされていて、鍵までかかっていた。あんな厳重な保管の仕方をしているなんて、あの本には一体何が書かれているんだろう。
興味本位という悪い心の虫が騒ぎ出した。でも蛙になるのは嫌だ。
そんなある日、お師匠様が国の重要な会議に参加するべく、一週間ほど出かけるとのことで、こっそり僕に、部屋の鍵を渡して密命をくださった。
「私の部屋の掃除を頼む。お前は優秀な子だから、私の部屋に入ることを許可するが、くれぐれも書物には触れるなよ?災いが込められている本もある。触れるだけで呪いを受ける可能性もあるからな」
なんでも部屋を清潔にしていないと本の呪いが染み出す?んだとか。でもまさかこんな形でお師匠様の部屋に入る権限を貰えるなんて、思ってもみなかった。
できる限り他の人に見つからない様に、こっそりお師匠様の部屋に入る。許可をもらっているとはいえ、忍び込んだみたいで気が引ける。
でも、蛙になるのは嫌だから、掃除はちゃんとする。
お師匠様の部屋はお師匠様自身がちゃんと掃除をしているみたいで、ホコリはほとんどない。だから掃除も最低限で住んでしまった。
「なんだ・・・もう終わっちゃった」
暇になると、興味本位の虫が騒ぎ出す。お師匠様がくれた部屋の鍵、これであの鍵のかかった本、開けられないだろうか?
まさかねぇ、そんなはず、なんて思って鍵を差し込んでみたら、開いてしまった。どうやら鍵自体に魔法がかかっていて、どんな鍵穴にも合うようになっていたらしい。やっぱりお師匠様の魔法はすごい。
「あ、ど、どうしよう」
ちょっと不安にはなったけど、開いてしまったのだから、ちょっとだけ、中身を見てみよう。
お師匠様にばれませんように、と心で祈りつつ、本を開いた。
[春風に誘われて、妖精さんたちのダンス。君と一緒に踊りたい]
[秋の妖精さんは、私の心を攫ってく。あの子のところに運んでくれるかな・・・。]
中にはお師匠様が書いたと思しきポエムがぎっしり詰まっていた。
——・・・見るんじゃなかった。——
見ぃ~たぁ~なぁ~!?




