↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
PR

映画『ボディビルダー』と僕の狂気

作者: ぽぴ
掲載日:2025/11/15


 「狂気」と聞くとなんだか怖く感じる。この言葉には何かを痛めつけるイメージがあるからだ。


 僕は中学生のとき、筋トレをしていて狂気に飲まれた。僕はただ一生懸命、筋トレをしていただけなのに。


 今回は、そんな個人的な経験にもとづいた狂気の話をしようと思う。





 僕は中学時代、毎日筋トレをしていた。


 その背景には、小学校でいじめを経験したことと、両親から虐待を受けていたからという理由があった。僕は自分を守るために強くなりたかった。


 強くなれば、すべてが良くなると思っていた。


 僕がしていた筋トレはとてもシンプルだった。毎日、正しい姿勢で腕立て伏せを1回、スクワットを1回、背筋を1回、腹筋を1回。それが成功したなら、次の日にはそれぞれの回数を1回増やす。


 「1回ずつできたなら明日は2回できるはずだ」


 そんな単純な考えだった。


 初めは、「毎日1回」という小さな目標から始めた筋トレは、いつしか「毎日537回」まで増えていた。そして何よりも、「甘えが入ったら+5回」という独自のルールが僕の筋トレを狂気的なものにしてしまった。


 「(筋トレは正しい姿勢と負荷のかけ方が大切)」


 そんな真面目さが、この狂気のルールを作り出した。


 正しい姿勢で上がれなかったり、負荷のかけ方が甘かったと感じれば+5回。あと「1回」で終わったはずの筋トレが、あと「21回」という風に、甘えた分だけ回数が増えてしまう。


 最後の1回がどうしてもできない。

 だから、あと6回しないといけない。


 6回ができないなら11回。

 11回できないなら16回。


 体の悲鳴を無視する、狂気的な筋トレだった。

 

 本当に体が上がらないときは、自分の顔や体を本気で殴っていた。できない事に対する罰とアドレナリンを出すため。そして、言い訳をして筋トレを中断しようとする自分の心を打ちのめすため。


 そうすると、最後の1回ができない状況でも、21回まで増えた筋トレを「完了」することができた。


 体を殴って、筋トレの姿勢をとり、地面に何度も崩れ落ちる。それでも「強くなりたい」という気持ちだけが体を動かし、僕は獣のように唸りながら毎日筋トレをしていた。


 「強くなって自分を守りたい」


 純粋な思いは、いつしか狂気に変わっていた。


 守るはずの自分を、自分でひどく痛めつけてる。

 そんな矛盾に自分で気づけなかった。




 狂気的な筋トレは、両親から離れたことであっけなく終わった。自分を否定する親が居なくなり、弱い自分でも生きていけることを知ったからだ。


 あそこまで狂気な筋トレをして弱い自分を変えようとしなくても、環境を変えてしまえば、狂気に飲まれた自分の心すらも変えられると僕は知った。


 純粋な気持ちは真っ白で、だからこそ、心の叫びすらも異物に感じてしまう。僕は心の叫びを「甘え」と切り捨てて、狂気に飲まれた。


 しかし、今の僕は知っている。狂気に飲まれながら筋トレをすることこそが、甘えだった。「強くなれば、すべてが良くなる」という単純な考えに執着し、体が悲鳴を上げても、それ以外の強くなるための方法を探さなかった。


 狂気的な筋トレは、決して「強さ」ではなかった。むしろ、自分の弱さが生んだ恥ずべき行為だった。







 


 映画『ボディビルダー』は、「筋トレ」「純粋な思い」そして、「狂気」というキーワードが僕にヒットした。普段、映画館には行かないけど、この映画だけは映画館で見てみようと思う。


 果たして、画面の向こうにいる人物は「物語の人物」なのか。それとも「過去の自分」なのか。


 純粋な気持ちの結末はどうなるのだろう?


 12月19日の公開が楽しみだ。

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。