しいなのバカ
むかしむかし、伯耆の国の倉吉という村に、しいなという名前のバカがおりました。
しいなは中学時代は見た目が良いと男子からいわれ、結構モテ期だったのですが、高校以降は性格のあまりの暗さとバカさが発覚し、嫌われしいなの一生を送ることを運命づけられてしまった寂しい女でした。
ある冬の寒い日、しいなは自分の部屋を見て思いました。
「ずいぶんと散らかったなぁ……」
そう思いながら、スマホゲームで遊んでいました。
今は寒いから、春になったら片付けをしよう。そう、思ったのです。
春になってもしいなはやはりバカでした。
暇を持て余しながらも、部屋の片付けだけはけっしてやりません。
そのうち夏が来て、しいなは思いました。
「めっちゃ暑い……。こんなに暑いと動く気になれん」
そして冬の時よりも三倍ぐらい汚れた自分の部屋を眺め回して、呟きました。
「秋になったら片付け……するぞ」
秋になってもしいなはやはりバカでした。
食欲の秋が来た! とかはしゃぎながら、食っちゃ寝、食っちゃ寝を繰り返すのでした。
さて年末になりました。さすがのしいなも慌てはじめます。
キノコが生え、へんな虫のわいた部屋をオロオロと見回しながら、ようやくその腰があがりました。
「今から二年ぶんの大掃除をするぞ!」
パンパンのゴミ袋が六つ、できました。それをゴミ収集所へもっていきました。看板が立っていたので、それを読みました。
『今年のゴミの収集は三日前に終わりました。次は一月六日になります』
一月五日から泊まりがけの仕事でした。
仕方がないのでしいなはひきこもりました。
ゴミ袋を六つ、どどんどどぉどどんと置いた部屋で、お酒を飲んで、酔っ払っておつまみの豆を部屋じゅうにまき散らかして、部屋はまたどんどんと汚れていきました。
何もすることがない二月のあたたかい日、しいなは思いました。
「しいなって……、バカだなぁ」
それでも何もせず、昼間はゴロゴロし、毎晩おちゃけを飲んで酔いつぶれました。