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イケもふ達とぴよぴよご主人様の異世界ライフ!  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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12/21

◇12 ご馳走





 水色のブドウを無心につついて食べていたら、シンからキスの雨を受けた。


 恥ずかしいやら照れるやらで真っ赤っかになっていると、覚えのある熱が身体の中から込み上がってきて、気付くとまたもや人の姿になっていた。何故だろう。


 身体がカッとなるのが、変身の兆候だろうか。


「ブドウ一粒で、もう変身出来るようになったね?」


 シンがデレデレモードに入っているので、もふもふしてあげていれば、それをズルいと零しつつも、首を捻るレオ。レオとしては、食事がキーだと思っているようだ。今ももぐもぐと水色のブドウをちぎっては食べているレオらしい。


 そうだろうか……? もしかして、自力であの熱を込み上がらせれば、自分で変身出来るんじゃないだろうか!? ……いや、難しいな。


「神様の眷属様ー! 白虎様ー! レッドワイバーンのご馳走は今早急に作っているので、もうしばらくお待ちくだっ」


 バンッと扉を開いたのギルドマスターだったけれど、不自然に言葉を切った。


 どうしたのかと思ったけれど、私、今、絶賛捜索されている神様の眷属様だったー!!


 どうしようかと焦った瞬間に、ボフンッと煙に包まれて、ぽてっとシンの両手の上に落ちた。ナイスキャッチ、シン。


「――――神様の眷属様ぁあああ!!!」


 隻眼強面ギルドマスターが、スライディングでひれ伏した。すごい。スライディングひれ伏し。


「我が主を不自由にしてはなりません。今の姿は、他言無用ですよ」

「ははぁ!」


 上手い立ち回りをして、シンがしれっと命令を下した。それに恭しく従うギルドマスター。

 これで捜索も打ち切られるかな。保護されて囲われても困るしね


 レオにも思ったけれど、うちの子、ハイスペックすぎやしないか。何でも出来るの? 異世界も余裕? ああ、そう……。




 結論から言って、レッドワイバーンのお肉は、美味しかった。


 翼部分はカリカリの唐揚げにしたり、甘たれの串焼きにしたり、モモ肉で七面鳥に似た肉の塊をこんがり焼いた料理だったり、あんかけ野菜炒め料理にしたり。レッドワイバーンの肉料理が提供された。


 シンとレオが交互にぴよこ姿の私が食べやすいように小皿に移してスプーンで小さく掬って口元に運んでくれる。


 なんかレオが翼のパリパリ唐揚げを「口移し~」とか言って顔を寄せてきたので、鼻先を嘴でつついてやった。痛かったらしい。しょんもりしていた。


 唐揚げ、美味しいけれど、嘴だと食べにくい……。レオはバリバリ食べれて、よかったね。口に頬張りすぎでは……?


 気付いてくれたシンが、甘たれの串焼きの肉をひと欠片、ほぐしてくれた。美味しい美味しい。


「本当に食事をとると、人の姿になるのですか?」

「んー? わかんない。今日は食事したあとに変身したんだよ」


 味わって食べていると、シンとレオがそう話していることに気付いた。


 今のところ、私が変身する気配はない。一応、シンが人払いをしてくれたけれど、見られる心配はなさそう。


「そうだ。シンは神様について知ってる?」

「ああ、この神殿が崇拝している創造神のことですか? それなら、神官長に語らせればわかると思いますよ。呼びますか?」

「じゃあ、二人が食べ終えたら聞いてみようか。どんな神様なのか」


 ニコリとするシンは、人を使うのが上手いなぁ……。


 私はすぐに食べ終えちゃうけれど、二人はまだまだ食べるだろう。


 料理か。レオもお昼にあれだけステーキを食べたのに、まだモリモリと頬張ってしまって……。シンは上品な手つきだけれど、一口が大きいや。めっちゃ食べてるよ。そして私の分も欠かさない。


 これからどうするかなんて決めてないけれど、食事に困りそうだなぁ。私が人の姿になれるというなら、料理を覚えようかしら。


「シン。この料理のレシピ、もらえないか頼める?」

「かしこまりました。……作りたいのですか?」


 すんなり頷いたかと思えば、ふと不思議そうに尋ねてきた。


「うん。変身が自由に出来るようになったら、シンとレオに作ってあげられるかもしれないからね」

「「ご主人様……!!」」


 感動したと言わんばかりに頬を紅潮させて破顔する二人。


 これでも一人暮らしで自炊生活をしていたから、料理は出来る方だと自負してるよ!


 ふすんふすんしながら、小皿に注いでもらったオレンジジュースをゴクゴクと飲む。


「ご主人様は、これからどうしたいのですか? 異世界で生活することは決定事項として、どんな生活をお望みですか?」


 シンが笑みで尋ねてくるけれど、なんだろう。圧がすごい。その圧、何。


 心配しなくとも、あっちの世界では私は死んでしまっただろうから、元の世界に戻るという選択肢はもう諦めている。そんなに圧をかけなくても、戻る選択肢はないよ……。


 これからどうしたいのか。この世界でどう生活したいのか。


「んー……わからないや。とりあえず、次は【セブ】を見付けてあげないと」

「そうですね。早く迎えに行かないと」

「絶対拗ねるよねぇ」


 残りの一人。

 熊の獣人【セブ】は、真っ黒い熊さん。

 ……ちょっと気弱なんだよね。きっと見知らぬ世界で心細くしているに違ないキャラである。もしかしたら、メソメソしている可能性が大だし、そうなるとアフターケアが必要なわけで、レオがちょっと遠い目をした。


 多分、シンがレオに一日私と二人きりだったことに対して“ズルい”と言い続けるように、三人一緒にいる時間が長いほど、メソメソしかねない。早く見付けてあげないと。


「シンみたいに幻獣に間違えられて保護されていればいいんだけど」

「そう都合よくはないでしょうね。聞いてみますけれど、流石に熊の幻獣はいないかと」


 私もシンも、都合のいい姿だった。三度目はないということだろう。


「セブもバトルに連れ出してたよね? 魔法が強いなら、へっちゃらだよ」


 レオは楽観的だが、確かにレオもシンも、そしてセブもそうレベルは変わらない。この世界では生き抜ける強者のはずだ。大丈夫だと言い聞かせておこう。でも迎えには行かねば。


 私達は一先ず、私達の異世界転生の元凶であろう神様について知ろう。


 異世界の神、トルトアウェス様。




2024/08/07

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