幸せなキス
飛ぶように売れていく味噌汁。
味噌の販売も初めて更に商売は加速した。
お店の周辺どころか帝国中に味噌の存在が知れ渡り、知らない者はいないほどに知名度も上がった。
毎日、味噌を求めてやってくる人々。
わたしはマッドと共に味噌の販売をしていく。
二人で大変だけど、疲労はそれほど気にならなかった。
――あれから一週間後。
「……お疲れ様です、フェリシアさん」
わたしはベッドに横になって倒れていた。さすがにこの一週間、無茶をしすぎた。
「ありがとう、マッド。わたしは……がんばりました。お店の売り上げも過去最高になりましたし、これでもう夢を達成できたようなものです」
「それは良かったです」
「マッド、その……この日を迎えらえたのもあなたのおかげ。それで、その……わたしをこれからも支えていただけませんか。わたしもマッドを支えていきますから」
少し考える素振りを見せるマッド。
けれど、直ぐに同意してくれた。
「分かりました、フェリシアさん。この私でよければ、喜んで」
「それでは、その……恋人の関係と認識してもいいのですよね?」
わたしが聞くとマッドは、照れ臭そうにうなずいた。
「そ、そうですね。こんな私でよければ……ですが」
「もちろんです。マッドでなければダメなんです」
「とても嬉しいです。その、婚約を?」
「はい、できればマッドと婚約を交わしたいと思っています。わたしは、あなたを愛していますから」
「……フェリシアさん。はい、私も同じ気持ちです」
微笑むマッド。
よかった。同じ気持ちなんだ。
わたしたちは気づかない内に愛し合っていたんだ。
これからもずっと、お店を続けていくし、マッドとは婚約。これで将来は完全に約束された。
でも、与えられているだけでは満足しないのがわたし。
マッドを幸せにする。
彼が第三皇子であろうとも関係ない。
今はこのお店のスタッフなのだから。
こうして、わたしとマッドは婚約。
幸せなお店ライフが永遠と続くことになった。
さらに一年後。
『――では、誓いのキスを』
わたしとマッドは結婚して、幸せなキスを交わした。ようやくわたしは人生で最高の幸せを掴んだのだ。
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ニセモノの婚約指輪
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