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後悔の手紙  作者: 白百合三咲
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プロローグ

なんか降ってきたので書きます。

「本日はお忙しい中、僕のためにお集まり頂き誠にありがとうございます。僕のことは新聞やラジオで見聞きしているとは思います。

 今日お話するのは僕の国中国へとやって来た日本軍のことです。」



 昭和8年7月。私はとある講演会に来ていました。小さな講堂に大勢の人が押し寄せ、壇上にいる男装の麗人は軍服姿できりっとした美しい目を聴講者に向け低いお声でお話されました。

 川島芳子。中国の王朝に生まれながら関東軍に身を置き新国家満州国建国に一役をかった男装の麗人です。彼女は日中の架け橋とでも呼ぶべきでしょうか。

女学生時代、少女雑誌でお姿を見かけて以来密かに恋慕っていました。

 私は霧風舞、今年の春女学校を卒業したばかりの18才です。



「関東軍は中国の東北部に新国家満州国を建国しました。日本のみならず満州族、韓民族、蒙古族、そして漢民族とアジア民族が手に手を取って暮らせる国。五族共和をスローガンに掲げ建国されました。

 しかし現状は全く違うものです。日本軍は開拓と称し、アジア民族を虐げています。僕が視察に行った農村は日本人に土地を奪われ耕す畑もなく、貧しい生活を強いられています。満蒙開拓団は開拓なんかではありません。彼らのやっていることは強奪です!!」

 芳子様は会場いっぱいに声を挙げ訴えていました。芳子様の話は私が新聞やラジオで見聞きしたこととは全く正反対のことでした。







 翌日私は芳子様の演説に衝撃を受け再び講堂へと向かいました。芳子様は昨日と同じように日本軍の満州への言動を暴露されました。日本軍の横暴、虐げられ居場所も生活も脅かされた中国人達。なぜ日本軍は同じアジア民族に対してそのようなことをするのか?理解のしがたいことです。

 しかしその日の公演は前日とは打って変わったものになりました。1人の聴講者の発言により。

「川島さん、貴女は日本軍に身を置きながら、軍の行動を批判した。恥ずかしくないのですか?」

「そうだ、日本軍を愚弄するなんて日本人の恥だ!!それでも同じ日本人か?」

「この非国民!!大陸に帰れ!!」 

聴講者達は次々に立ち上がり芳子様に対する避難が始まりました。

 しかし芳子様はどんな罵倒にも屈しませんでした。

「では皆様にお聞きします。日本軍の非人道的な言動を同じ日本人として、いや人として恥ずかしくないのですか?」

きりっとした表情で返しました。まるで王宮の玉座に座る王女(ぷりんせす)のように。

しかし聴講者達の声は収まることなくその日の講演は中止となってしまいました。

 私は芳子様にどうしてもお手紙を渡したくて講堂の裏口へと向かいました。

 どれくらい待っていたことでしょうか?芳子様は着物姿の女性の方と出てきました。

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