第9話 どんな御殿だ
アクセス数が急に伸びて驚きました。拙い文章を皆様にご覧頂き、恥ずかしい思いですが多少の息抜きにでもなれば幸いです。
日曜日は投稿をお休みします。
年が明けて俺が15歳、竹次が8歳、竹三が6歳、吉三が9歳になった。
昨年の暮れに海産物代を支払ったので銭が無くなった。人間生きていくためには銭が必要だ。これはいつの世も変わらない不変の業だな。世知辛い。
日干し煉瓦をバカの様に作り屋敷の図面と厠の図面、風呂場の図面のチェックをしていたら、
越後屋が昼近くに大工を連れて来た。
大工は親方1人だった。
親方に図面を見て貰い建てるのに不具合が無いか確認して貰った。
「これは随分と大きな家だ。壁や床は二重か屋根は梁が剥き出しじゃなくて天井を付けるのか・・・なるほど。これほどの屋敷は大店の旦那の屋敷くらいしかないぞ。村の百姓が住む家ではないな。しかも、この囲炉裏?ストーブと言うのか、は見た事も無いし、風呂?に湯があるなんて温泉以外ないからな。出来ない事は無いが、銭が凄い掛るぞ。勿論、木材は用意して貰う」
「木材とストーブ、風呂に使う日干し煉瓦などはこちらが用意する。銭は幾らかかる?」
「そうだな。悪いが俺達だけでは手に余るから知り合いの親方にも声を掛けてもいいかい?仕事を受けてくれたとして7貫文いや10貫文だな」
「分かった。初めに5貫文、終わったら5貫文でどうだ?それでいつ頃終わる?」
「銭はそれでいい。引き渡しか、そうだな。これ程の家だと建て始めて1年程度は掛かるな」
この条件で取り掛かって貰う事にしたが、まさか1年掛かるとは思わなかった。銭も寂しいが仕方が無い。親方にはわざわざ来てもらったので足代として米を少し渡した。
親方は越後屋と村長の所で1泊して帰って行った。
あっ!村長に空き家を1軒しか借りてねえ。もう1軒借りるかあ。あの親父はがめついからな。
空き家か。食料もろくに無く、衛生の知識も無い。家と言えば8畳程度の大きさだが、竈や流しがあるから人間が生活できるスペースは囲炉裏を除くと6畳程度か。
そこに家族6人寝るなんて普通だ。
家族の誰かが伝染性の病気になったら、空き家が出来るんだ。
まだ寒い中、家で使う木っ端を拾いに行ったり、竹次達の勉強を見たり、木刀や木槍で自己流の訓練をしている内に月が改まったのかな?初めに来た親方と別の親方が連れて来た大工衆が越後屋と一緒に来た。
大工衆は親方も含めて全員で12人だ。おお、これなら安心だ。頼むぜ、親方!10貫文も支払うんだ。チャッチャとやってくれ。
大工衆には村長から借りた空き家に住んで貰った。
しかし、年の暮れと正月は村長や村役が挨拶に廻って来るから、ああ正月なんだあ、とか分かるけど、いつもは越後屋が正月を除いた月初めに来るので鐘が2度なると、あっ月が替わったんだ程度だものな。父ちゃんなんかは越後屋の来る回数と言うか、2度鳴る鐘の回数で今は何月だと覚えているみたいだ。
俺には月なんて関係ない。全ては気温と天候だ。
大体、正月だからっておせち料理とか無いし、餅も見た事がないしね。
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俺の田んぼは竹次達の活躍により0.7反になった。残り0.3反、竹次、竹三、吉三頼んだぞ。俺は田植えの時と刈り取りの時しか田んぼを手伝っていない。もう、3人に任せていても大丈夫だ。
父ちゃんの田んぼの田植えと刈り取りの時は俺達4人で手伝うようになり、昔と比べるとあっという間に終わる。
父ちゃんも最近は少し楽になって、趣味なのか暇な時に木彫りを彫っている。母ちゃんは更にふっくらというか、昔の若い頃の面影を残しつつ、貫禄が付いて来た。
俺の知らない所で何か食べてるのかな?
今年も午前中は田んぼ、午後から2時間程度、竹次達に教本を使った勉強だ。どうも、教本は臭いの所為で評判は良くない。勉強は竹次の吸収力が凄い、頭がかなり良く一度教えた部分はマスターして自分でも勉強しているようだった。吉三もそこそこだ。それと比較すると、竹三はどっちかと言うと体を動かす方が好きなようで、ハッキリ言って勉強は苦手なタイプだ。
百姓は早朝から野良仕事をするのが当たり前。昼のカンカン照りの中、野良仕事をしているバカはいない。日が落ちて来て少し涼しくなってから、また野良仕事をする。
お前らなあ、物が無いから苦労して作ったのに、兄ちゃん臭いよ、は無いだろう。兄ちゃんがっかりだ。
墨が臭いのは、香料が無いからだ。香料かあ。よし、墨液にヨモギを乾燥させた後、ゴリゴリ粉にした物を混ぜてやろう。
試しに墨にヨモギを混ぜたら、臭いがかなり改善された。
紙をもっと量産したいが、竹紙の原料である竹の腐り具合が今一つで、もっと気温が上がらないと駄目だな。
今年は竹次を始めとするお前らに紙の作り方を教えるから自分達で作れ!その紙で字や計算の練習をした紙は、厠で大活躍するからな。膠は更にお前らに作って貰うから墨液の心配はするなよ。プププッ。
去年は冷害だったが、今年は例年並みになりそうだった。1回目の作付けをする頃、竹が腐って来たので、竹紙の作り方を竹次達に教えてやった。夏の最盛期には蛙がウジャウジャいるから膠作りも頼んだ。
林の木と違って竹は切っても切ってもドンドン生えて来るからな。村長の許可は要らない。
将来は小屋でも建てて竹紙を量産して売りたいくらいだ。今は自分達が使用する分でも少ないくらいだからな。
田植えが終わる頃、越後屋が椎茸の取引に来た。見た所、槍を持った使用人が増えているようだ。越後屋に聞くと最近、物騒になって来たので念のためらしい。それほど、儲かってんだろうな。
椎茸を売って4貫文になり煮干しの利益が2貫文で、合計6貫文になった。煮干しの売り上げが増えたのが地味に嬉しい。
鶏の雌の売値を聞いたら若い雌で1羽辺り2貫文で引き取るとの事だった。因みに雄は1貫文だ。雄と卵を産まなくなった雌は食べてしまうので、売るのは雌のみだ。
よし、秋に鶏を売ろう。
梅雨前に切り出された建物の材料が削られ積み重ねられていた。
作業がほぼ終わった頃、大工衆が一旦帰ると言い出した。
「それじゃあ、俺らはもう少ししたら帰るよ。来年、年明けにまた来る」
「えっ!?家は?どうするんだ??」
「ああ、話してなかったな。木は乾燥させねえと使えねえんだ。だから、ああやって乾燥させている。木は檜が多いから良い家が建つ。年明けてから来て梅雨までには外回りは完成させるから心配するな」
生木で建てると歪むんだった。前世では建材=既に乾燥済みの木材なんていうのが常識だったから、忘れてた。道理で俺の蔵にひびが入っている訳だ。
親方達には、越後屋に売った椎茸と煮干しの利益の6貫文から5貫文を支払った。残金が1貫文だ。最近は入ってすぐ出ていくことが多い。全然、儲けている感覚が無い。
それよりさあ大工衆が直ぐに帰らないから、どうしたのか思っていたら、どうやら村長の家の水回りを直しているらしい。おいおい、俺がお金を出して呼んだ大工を勝手に使うんじゃない。木材も俺のじゃないよな?
流石、村長!生き馬の目を抜くぜ。
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夏も少し涼しくなってきた頃、家の田んぼの刈り入れだ。母ちゃんを除いた俺達男衆でドンドン刈り入れて竹干しに干していく。今年は豊作だ。俺が以前作った案山子も見すぼらしくなって来たから。今度、竹次達に作り直させるか。それと、そろそろ竹次に椎茸栽培を教えよう。それと共に栽培の規模を2倍にするか。
今まで1人でやって来たから今の規模で限界だったからな。竹次と一緒なら大丈夫だろう。
家の田んぼ全体で米は8俵半程度採れた。このまま、何も無く二期作が終われば17俵の米が採れる。
プッ、フフフフッ。蔵がもう一軒必要だなあ。と言っても今の蔵も日干し煉瓦だらけで備蓄の米は殆どない。食べているからね。家のご飯も俺が小さい頃、食べていた粟や稗の薄い粥じゃなくて、粟と玄米を焚いたご飯になった。これに朝は焼き魚、漬物、海藻や野菜の汁物だ。贅沢になったものだ。
まだ、玄米のみじゃないけどね。稗は実が小さすぎて食べている気がしないから、家では鶏の餌だ。
俺の提案で家では昼もご飯を食べる事にしたんだ。そりゃあ、食べるものがあれば、昼だって食べたいさ。
2回目の苗を田んぼに作付けする頃、家を建てる為の日干し煉瓦がかなり出来上がってきた。
家で使う日干し煉瓦を作るのはいいが、小川の近くの粘土が少なくなって来た。崖や斜面になっていて粘度層が剥き出しになっている所を探さないとな。日干し煉瓦づくりも冬から春にかけての乾燥していて雨が降らない時期しかまともに作れなかった。
夏も多少は作れたが、湿度が高く意外と乾きが悪いんだよ。
二期作の稲が青々とする頃、鶏の雌を売る数を母ちゃんと相談しようと、鶏小屋に行くとあまり鶏が増えていない。
心配でヒヨコ箱を見ると、5匹程度しか入っていない。可笑しい、毎日食べているとは言え、今年は雌が増えて卵をドンドン産むようになったから、ヒヨコがもっと増えて良いはずだ。確かに少し鶏が増えているが、病気だろうか。母ちゃんに聞いて見よう。
「なあ、母ちゃん。鶏だけどさあ、あんまり数が増えていねえようだ。ヒヨコ箱にも5匹しか入ってねえ。なんぞ、病気か?」
「・・・ごめん」
話を聞くと、茹卵が余りにも美味しいので、3時のおやつ?そんな習慣はないが、卵を茹でて食べていたらしい。
道理で最近、貫禄が出て来たと思った。健康で何よりです。
という事で、来年の春に鶏を売る事にした。
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新しい家が建ったら古い家の中の土を集めて、俺の大釜で煮よう。まだまだ、俺の田んぼの小屋にある小便の反応が進んでないからね。
水槽で魚などを飼育した人は分かるが、魚などが出す糞や尿を硝酸菌類がアンモニア→亜硝酸→硝酸という硝化作用する事で、毒性の強いアンモニアを比較的毒性の低い硝酸塩を生成する事で魚が維持出来る事を理解していると思う。これを簡単に濾過と言っているのかな。
これらの硝化菌類は硝化作用に酸素を必要とする。つまり沢山の硝酸塩を得る為には沢山の酸素が必要なんだ。
小屋の中の藁を日に2回ほどかき混ぜて、酸素を供給しているんだけど、アンモニア臭が酷い。この作業もその内、誰かに代わって貰おう。
今住んでいる家も何代にも渡って生活した家だから土の中の硝石が多く取れるだろう。今度、大工衆が帰った後、掃除する振りして空き家から土を回収しよう。
フフフフッ、笑いが止まらない。
竹紙作りに続き、膠作りも竹次に達に教えた。あいつらの為だからな。
冬近くになり、俺の田んぼも1反になった。これで家は田んぼは2反になった。これで二期作が出来れば年間20俵の米が採れる。
まだまだだこの土地の度量衡での石高にしてたった8石だ。1万石なんてゲームの中では少ないというかカスだなと思っていたが、とんでもない間違いだ。何十万石や何百万石の大名なんて、想像もつかない。
俺は今、味噌にするつもりだった大豆の一部を煮ている。醤油がないとは言え、ご飯を食べる時になんとなく寂しい。
納豆は簡単だ。大豆を茹でて、冷えた大豆を藁で包んで藁の山に突っ込んでおけば納豆の完成。ある程度の温度があれば藁の中の納豆菌が大豆に繁殖して納豆が出来る。
納豆はタンパク質だけではなく、ヨウ素などの栄養素も含んだりしていてかなりの健康食品なんだぜ。
数日経って、ご飯時に納豆を持って来た。俺が予備の茶わんに納豆と塩とネギをかき混ぜていると。
「これ竹!腐っているものを食べるな。ご飯ならちゃんとあるだろう?」
「母ちゃん、これはな。納豆という食べ物なんだ。こうして、ネギと塩でかき混ぜてご飯に掛けると美味しいぞ。また、体にいいんだ。寿命が延びるぞ!」
「おいおい、竹。いいか?腐っているものは糸を引くんだ。しかもお前、この臭い俺の足と同じ臭いがする。母ちゃんの言う通り食べるな」
「ほらこうして、塩と刻んだネギを入れてかき混ぜて・・・ご飯の上に載せて・・・食べる・・・おっ!?塩でも旨いよ。父ちゃん、母ちゃん食べて見ろ」
二人して恐る恐るご飯の端に納豆を載せて、臭いを嗅いでゲッ!見たいな顔をして一口。
「おっ?!これは・・・旨い!竹、こいつは良いな」
「そうねえ。食べると臭いがあまり気にならないね」
父ちゃんと、母ちゃんがご飯に納豆を掛けて食べ始めた。それを見て竹次以外は全員、旨そうに食べ始めた。
どうも、竹次は臭いがあるのは得意でないな。後、虫系もあまり食べなかったしな。竹三は何でも食べるのにこれも個性か。
こうして、納豆はご飯の友となり、我が家ではご飯時には必ず納豆を食べる事になった。竹次は渋々だったが。
味噌作りと醤油作りを考えると、畑が足りない。田んぼに不向きな土地を畑にするにも人が必要だ。




