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「これは……まさか神の雷か!?」

「神よ。何度も力を借りることをお許しください。どうか目の前の悪しき魔王に裁きの鉄槌を!」


【巫女が神に祈りを捧げた】


 まずいな。また神の奇跡が発動する。できれば勇者と合流してから戦闘に入りたかったが、肝心の勇者がなかなか来ない。

 仕方ない。神の奇跡を回避しつつ、勇者の到着を待つしかあるまい……


「リーザよ、危険だから離れているがよい」


「……はい。どうかお気を付けて……」


 さて、今度は何が起こるか……

 即死級の一撃だけは避けなければならない。勇者の英雄伝説サーガを作らなくては、俺たちはみな地獄行きになってしまう。


【どこからともなく声が聞こえる。『着ているものを全て脱ぎ捨てよ。穢れなき力で敵を葬らん』】


 また全裸希望かよ! ちょっとこの辺ヤバいの沸きすぎじゃないか!?

 なんかそれっぽいこと言ってるけどタダの変態ロリコンだよな!?


【さらに別の声も聞こえてくる。『天に力を解き放ちなさい。そうすれば奇跡が降り注ぐでしょう』】


【さらに別の声も聞こえてくる。『魔王を討つには力が足りぬ。己の血を捧げ我と契約せよ』】


 なんかまた怪しいのが混ざってるな。はてさてどれを選ぶのか……


「魔王よ、そっちから会いに来たことを後悔させてあげるわ! あなたを倒し、この旅と修行を終わらせるのよ!!」


 そう言って巫女は杖を天高くかざした。


「来たれ雨雲! 轟け雷鳴! 神の名のもとに、今ここに奇跡を!!」


 すると、さっきまで晴天だった空が曇り始めた。

 太陽が隠れ、その影で辺りは暗くなり、ゴロゴロとカミナリすら鳴り始める。


「これは……まさか神のいかずちか!?」


 古来から雷は神の裁きだと言われている。この状況下ではなお相応しい。

 おそらく普通のカミナリなどではない。本物の神の力が宿った雷だ。その威力は全てを灰にする威力だと思っていい。

 だが、俺なら避けられる! 全神経を集中して、雷が落ちた瞬間に回避するくらいならできるさ!

 すると、ポツポツと雨が降ってきた。強い雨ではない。シトシトと静かに降るような雨だ。


「さぁ、来るならな来い!!」


 俺は全神経を空に向ける。すると――


「おお~雨だべ! 最近降らないから心配だっただ~」


【村の農夫Aが現れた】


「オラ見ただ! あそこの巫女様が雨乞いをしてたべ!」


【村の農夫Bが現れた】


「あんれま~! 神の使いだべ! みんなで崇め祀るべさ。おーいみんな~!」


【村の農夫Aは仲間を呼んだ。なんと村の農夫C、D、Eが現れた】


「ささ巫女様、大したおもてなしは出来ねぇけんど、宴を開きますんべ」


「え? いや、私は魔王との戦いが……」


「そ~れ! わっしょい! わっしょい!!」


「ちょ……あ~れ~……」


【なんと巫女が連れ去られてしまった】


「…………」


 そんな様子を俺は唖然として眺めていた。

 いや神の奇跡は!? 裁きの雷は!? え、これが失敗ってやつ!? めっちゃ真剣に身構えてた事がアホらしいんだが!?


「魔王様~!!」


 急に後ろから王女が抱き着いてきた。


「よかった。無事でなによりです。ぐすっ、ふえぇ~ん……」


 王女よ、こんなに心配してくれたのか。

 以前の約束で、王女はもう絶対に俺の邪魔はしないと誓ってくれた。そしてその言葉通り、今回は一切妨害をしていない。

 でもだからこそ、俺が神の奇跡で消滅しないか不安だったのだろう。まったく、勇者にやられる運命にある俺を慕うなど無意味だというのに。

 ……それでもなぜだろう。そんな王女が今では可愛らしく思えてしまう。ふっ、これまでの生活で情が移ってしまったのかもしれんな。

 まぁとりあえず、ここでやられる訳にはいかなかったので最悪な結果だけは避けられたと考えるべきか。

 するとその時……


「魔王!? 貴様こんなところで何をしている!?」


 俺が振り向いてみると、そこには例の勇者が目を真ん丸にして立ち尽くしていた。

 いや来るの遅いわ! ちょうど今、巫女が連れていかれたことろだわ!

 そんな言葉を全力で叫びたい衝動に駆られていた俺は……


【どこからともなく声が聞こえる。『あらあら? 勇者が来る前に倒されるのは困ると思って調整したつもりだったけど、タイミング悪かったみたいねぇ』】


 そんな字幕が一瞬だけ出現したのを、俺は見逃してしまうのだった。

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