ムステルダ避難作戦
ムステルダ宙域 コロニー『アドミ』
ムステルダ宙域はアルテラ宙域からワープ航行...前やった次元跳躍航行よりも安全且つ簡単に使用できるワープ航行を4回分跳んだ地域にあるコロニー群を中心に広がる辺境宙域の1つである
辺境ではあるがこの辺りに展開している帝国協定正規軍航宙艦隊に食料を供給する為の農業コロニーが多数建造され、余った食料は加工され首都宙域にも供給しているそこそこ繁栄した宙域でもあったのだが今は多数の人々が大挙として避難しつつあった
その理由は近くにある恒星が爆発しかけているからである、その為帝国協定中央政府はムステルダ宙域の全機能を隣接する宙域に再構築させる一大政策を打ち出し今まさにその再構築作業...俗に言う引越作業に追われていた
くず鉄の艦隊も膨大な積載可能量による仕事の為に喜んで赴いた...なんてことはなく厄介事だった
「本当にクソだなおい。」
「クソじゃな。」
「何考えてるんですかね?」
事の発端はまたもやクソババアこと傭兵組合支部長からだった
「まだ仮説居住区あるからって休み無しで向かえなんて聞いたことねぇぞ。」
会議が終わりアルテラに戻ってきた後運んできた傭兵達と貨物を降ろし、セレナとサミエラを引っぺがし本格的な改修工事を行おうとしていた矢先急遽組合に呼び出された
「やっと戻ってきたのね、あなた達が居ない間の依頼が溜まっているから片付けてきて頂戴!」
「はい...?」
「何なのですかその返事は! これだから辺境の傭兵は嫌なのよ!」
通された支部長室でヒステリックに喚く支部長はありがたいお話という名の文句を10分ほど喚いたのち、指名依頼を出した
「確かくず鉄の艦隊はまだ居住区を設置していた筈よね?」
「ええ、ですがもう必要無いので解体す「解体しないで直ぐに出発なさい、指名依頼でムステルダ宙域の輸送よ。」は?...はぁ?!」
祐一は目の前のクソババアに殺意が沸いた、何分このクソババアはチェッタ人...帝国協定有数の美形な種族出身であったのでホイホイと頷く...なんて事は無く嫌悪感しかなかった
「すみませんがね、ただでさえ利益碌に上げられてないんですよ...確かにくず鉄の艦隊は自前の護衛戦力を有しており便利なのは認めますが、前回の指名依頼の大規模輸送任務の依頼料、出費とトントンなんですよ? しかも指名依頼は1回受けたら次は半年程は受けなくて良い筈では?」
「規約によれば支部長が必要であると認めれば受けさせる事が出来るとあるわね。」
勝ち誇った表情の支部長から送られてきた依頼書を見た祐一は無表情になりプルプルと震えだした
「依頼料の桁間違えちゃいませんかね?」
「あら? 適正かと思うわよ?」
「こう言いましょうか、なんですこの特別金やら保険料やら前金とやらは!」
依頼書には通常の依頼料自体は書かれているのだが、様々な名目でそこから引かれていた...更に違約金の桁も凄まじい事になっていた
「今回は大勢の命を預かるから事前に手続しておいてあげたわ、感謝なさい...そうそう、もうすでに手続してあるから断ったら違約金は払って頂戴ね。」
「...てめえ喧嘩売ってんのか?」
もはや取り繕う必要すらなくなったからだろう、祐一の言葉恐ろしいオーラを纏っていた
「指名依頼関係に関してはあくまでももしもの時の為に行う事が出来るってだけで平時に関しては暗黙の了解という形で使用は禁じられている...そしてそんなことを吹き飛ばす位にヤバいのが何故本人の許可も無く勝手に手続きしやがった! 俺達が手続きを任せているのはヘッグさんだけだ...!」
「ヘッグに許可を出しているなら支部長である私がしても問題無いでしょう?」
祐一は本能的に腰にぶら下げている護身用の携帯式レールガンに手を伸ばしかけたが何とか押しとどめた
「...わかった今回は受けよう、組合本部の方に苦情だけはいれとく。」
「いれてみればいいじゃない、まあどうせ聞かれないでしょうけど。」
これ以上同じ場にいたくなかった祐一は勝ち誇ったような笑みを浮かべる支部長に何も告げず支部長室を出た
支部長室から出た祐一が受付の所に戻るとヘッグが直ぐに対応した
「本当にすまんユーイ、とりあえず今回の依頼に関してはもう手出しは出来ないが手続き関係の委任の方は無くしておいたからもう勝手には出来ん筈だ...ただ組合本部の内部通報の方はダメだった、証拠揃えてだしても門前払いだった。」
「ヘッグさん今回巻き込まれた側でしょ、本部の方に関してはこっちにいる機械知性の1人が元傭兵組合のお偉いさんだからそっち経由で苦情淹れとく、ただあのクソババアの利益になるの嫌だから暫くの間は傭兵組合通さないで仕事するわ。」
申し訳なさそうにするヘッグに祐一はそう返した
「だろうな、暫く新人達はオークションサイトの方にかかりきりになりそうだ、もし聞かれたら暫く組合のオークションには出ないとだけ伝えておこう。」
「じゃあそういう感じで、まあどちらにせよそれなりに緊急性が高いのはわかるからしょうがない。」
「ああ、手続きも済んだ、行ってこい!」
ヘッグの言葉に手を振りながら祐一はアカシマルに戻っていった