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客引き共

「いい加減うぜぇなぁ...」


「今度は誰が漏らしたんでしょうねぇ...」


警備任務の為、長距離移動手段兼機動兵器母艇として使っているワテラ型輸送艇の操縦席に座っているセレナとサミエラの2人は現在進行形で視界に入る者達によってストレスを溜め込みつつあった


『豪華客船メデッテル号、現在プラチナスイートルーム空室が御座います! 夕食には太陽系にて生産されたコウベ牛をご用意しております!』


『クリネックス子爵私設艦隊旗艦にて夕食はいかがでしょうか!』


『保養船ベダッタ号にてお遊びは如何でしょうか?』


小型船艇にこのような空中投影や電子看板を展開させ2人に近づこうとする者達が多かった、警備任務中なら仕事中と言って逃げられたが、後もう少しで休憩時間に入るという事もありアピール合戦が行われていたのである


同じ様に行われていた中央の会議が終了後、余計な連中からのアピールが無いようにとドラレーン社社長であるセレナの父の好意によりすぐさま送り出されてきたものは良いものの、おそらく空気の読めない馬鹿共に買収されたのだろう担当者から漏れたスケジュール情報を元にこうした事態になっていた


操縦席で完全に気楽に過ごすために薄いチューブトップに短パン姿という格好のセレナと半袖シャツに柔らかい素材の長ズボン姿のサミエラとしては後少しで休憩で色々と発散できると考えていた所にこれである、仮にどこぞの客船でも保養船に入ってサービスを受けて2人でまぐわおうもんならどこからか盗撮した動画が流れ大騒ぎになる事間違い無しだった

セレナとサミエラは幼馴染でありそういった関係で在るのは有名な話であった、片方は凄まじい筋肉を持っているがそれ以上のダイナマイトボディを持っておりもう片方は男装が非常に良く似合うクール系美女であった為良く話題になっていた


「あーくそ! 邪魔だこいつら!」


「どうする?」


そんな彼女達にとって休憩を邪魔する客引き連中は非常に嫌な存在であった


「もう面倒だこうなりゃ別の所に...」


さっさと別の所に行く事を話そうとしたセレナの視界にどこか見慣れた艦影が映った

その艦...機械知性の独特な感性によって描かれた模様中に歴戦である事を示すように所々補修と改造跡が付いているカットラス級は如何にも只の配達中ですよーといった雰囲気を出しながら段々と近付いてきていた


「...近付いてきてるな。」


「探す手間が省けましたね。」


セレナとサミエラの2人は少し笑みを浮かべながら呟いた

くず鉄の艦隊では最小の艦であるカットラス級も軽巡航艦であり、アピール合戦中である小型機や小型艇にとっては逆立ちしても勝てない艦艇で在り、群がっていた客引き連中は慌てて逃げ出しつつあった


『アレッ! セレナチャンニサミエラチャンジャン、コンナトコロニイタノ。』


カットラス級を経由して通信を送ったその声は今気づきましたよと言わんばかりの感じで連絡を寄こしてきた


「アカシマル空いてる? 空いてたら色々とお願いしたいんだけど。」


『アイテルヨ~、ツイテクル?』


「ついてくついてく!」


ワテラ型輸送艇はカットラス級についていった、その後ろでは逃げ出した客引き連中がしつこく追いかけ前に出ようとしたが、大型艦が展開しているエリアから急行してきた戦闘艇や戦闘機の編隊に加え5隻の艦隊がその進路を阻んだ


「増えてませんか?」


『チョットハエドモガウルサイカラ。』


戦闘艇や戦闘機のみならずドローン化されたカットラス級軽巡航艦に2隻のアローヘッド型軽巡航艦だけでもすごいのに、長距離砲戦で在れば主力戦艦と真正面から殴り合える全長980メートル近いドラッド型防宙重巡航艦2隻が凄まじい速さでやってきてワテラ型輸送艇を守る様に陣形を組み、格納していた兵装を展開し近付こうとした小型船艇に威圧を掛け始めた

艦隊は護衛陣形を取り航行を開始し、その後ろには客引きの小型船艇が続いた

ワルキューレの2人が近付いてくるのがわかるにつれカットラス級に積まれている消耗部品の注文先の大型保養船『テルン』や客引き達は騒がしくなった、尚『テルン』では船長兼支配人がスタッフ一同を引き連れてハンガーで待機していたがカットラス級から消耗部品が届けられた後即座に立ち去ったのを見て、ひどく落ち込んでいたのを見てしまっていたが2人は気付かないふりをした

そんなこんなで『アカシマル』に到着したセレナとサミエラは通常の格納庫では無く艦橋付近にある小型格納庫に輸送艇を入れた、小型といっても中は大型艇4隻を格納して整備できるだけの広さと設備が備わっており、格納庫では多数の機械知性達が待機し到着するやいなやセレナとサミエラの荷物を2人の代わりに中に運び込んだり輸送艇に付ける形で搭載されていた2人の人型機動兵器を輸送艇から離しすぐさま点検と消耗部品の交換作業に入った


「だから何度も言っているが誘拐じゃねぇって言ってんだろうが! いい加減にしろ!」


艦橋に案内されるやいなや祐一から発せられている怒声に2人は顔を見合わせ通話カメラに入らないように近付いた

そして聞いたその内容に即座にブチぎれた


『たかが傭兵の船に火竜と氷竜ワルキューレが乗るには分不相応である、至急こちらに移送せよ。』


『あの御2人が保養船ではなくお前達の船に乗るのはありえない、誘拐ではないのか?』


『直ちにワルキューレを解放せよ!』


あまりにも一斉に通信がかかって来た為纏めてでたらこの惨状らしい、全てがとんでもない言葉のオンパレードであり聞くに堪えなかった

セレナとサミエラにとって『アカシマル』とは、もっとも信頼のおける整備工場で在り保養所で在り祐一と結婚した後は一緒に暮らす家になる予定の大事な場所である、それ以外にも祐一やメイリは勿論の事それ以外の乗員も大事な家族で在り守られ守る対象でもあった


「いい加減しろ貴様ら。」


「これ以上の発言は敵対行為と見做します。」 


気が付いた時には通信に体ごと割り込んでいた

その声と表情は凄まじい怒気を纏っており、通信画面に出ていた有象無象共を一瞬で黙らせた、尚祐一の表情は完全に冷めきっておりその目は道端に落ちているゴミを見るような嫌悪感が出ていた


「アカシマルに乗ったのは私達自身の意思による物だ、部外者である貴様達風情にとやかく言われる筋合いはない。」


「くず鉄の艦隊及びその乗員はグラド竜帝国ドラレーン社社長を始め畏れ多くも竜帝陛下からの覚えめでたい傭兵艦隊です...この意味がお分かりか? 貴様達は私達以外にもドラレーン社のみならず竜帝陛下にも敵意を向けたと思いなさい。」


『な、何故竜帝陛下まで!』


クレームを入れてきていた連中の1人が思わず叫ぶように尋ねると、呆れた様な雰囲気を2人は出し始めた


「いや普通に私の父が話してるし、くず鉄の艦隊自体も辺境開拓領域を中心に展開して開拓支援してるからその功績を称えられて幾つかの新興国や開拓宙域から贈答品を贈られているんだが?」


帝国協定では勲章は自国民にだけ送るもので在り他国民に送った場合相手国を下に見ていると見なされる事から、勲章代わりに感謝状か功績を称える手紙と共に贈答品を送る事が多かった


「そういう事だから切るぞ。」


真っ青な顔をして震えだした有象無象共に流石に少しばかり可哀そうになったので、返事を聞かず祐一は通信を切ると2人に顔を向けた


「災難だったな、神戸牛と松阪牛と黒豚買ってあるから夕飯の時食って良いぞ。」


2人の尻尾は凄まじい勢いで振られ始めた

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