アローヘッド
仕事が...終わらんとです...
「じっちゃん、相変わらず思うんだけどやっぱりじっちゃん達、アカシマルを帝国協定軍の機械知性の元将兵の隠居先にしてるよね?」
「...良いではないか、優秀な人材じゃぞ?」
「暇だからって俺に将校教育を施すのはどうかと思うんだ。」
くず鉄の艦隊はいつもの超大型輸送艦に偽装せず、護衛艦を引き連れて順調に航路を進んでいた
そんな何もない平和な時間ではたとえ機械知性でも暇を持て余すもので、暇そうにしていた祐一を捕まえて元将校の機械知性の乗員が艦隊司令官向けの上級士官教育を施していた
元々アカシマルは銀河連邦によって建造された『ザッテルム同胞団』と呼ばれる宙賊が使用していた大型宙賊母艦を鹵獲した後、趣味に走った機械知性達の手によって幾度も改修が施され生まれた大型艦である、内部には採掘した鉱石を製錬し工業部品を製造する複合モジュールに加え、少人数で在れば艦内部で一生を終える事すら可能なまでに高性能な食糧生産モジュールまで備わっており、多数の艦載機や艦載艇を抱えている関係で大型武装採掘艦と呼ばれてはいるが実際には長期航行可能なコロニー艦でもあった
そんなアカシマル艦内にはセング―を中心とする元帝国協定軍将兵の伝手で引っ張ってきた訓練用設備まで備わっており、暇潰しも兼ねて祐一が上級将校用の講義を元将校の機械知性達から受けていた
「...やっぱり戦争近いか。」
「連邦軍の拡大は止まっておらんし物資の集積も始まっとるらしいからの、共和国の軍事企業連の艦隊も増強が止まらん...間違いなく来るじゃろうて。」
銀河連邦は連邦を作り上げたキリー族を中心にキリー族至上主義を掲げており、大統領に名前を変えた王家を頂点に議員(貴族)・国民・奴隷階級という階級社会をとっている
共和国は種族間での差別こそ無い物の保有している資産によって生きる価値が決まる極端な資本主義社会で在り、軍隊どころか国家の運営までも各企業が行っている国家である
対して帝国協定は差別を許しておらず、機械知性を取り込むことで極限までに高められた立憲君主制の議会政治によって運営されていた、具体的には全体的な意思決定は各種族や惑星毎に選挙で選ばれた議員や各種族の元首による議会が決め、機械知性はそれらが汚職等の腐敗が無いか監視するという仕組みで回っている
全体的な国力比は帝国協定が10とするならば、銀河連邦は7、共和国は6である
これに関しては銀河連邦はキリー族が入植できる惑星を中心に入植し共和国は新規開発は失敗する事が多く開発が中々進まないので伸び悩んでいるのに対し、帝国協定はその特性上多種多様な種族がいる関係上惑星を見つければその惑星に入植できる種族がさっさと入植できる事で国力は増大する一方だからだった
その為、銀河連邦と共和国は社会体制が違うのに強固な連携をとり帝国協定に対抗していた
「まあ戦争になっても流石に動員されないでしょ、精々輸送路の警備位?」
「まあそうじゃろ、幾ら何でも正規軍がいきなり壊滅しないじゃろう。」
そんな事を話しながら講義は続き、何度か長距離跳躍を繰り返し1週間後、アルテラ宙域から遠く離れたネクリム宙域に到着し、葉巻型の形が特徴のドラレーン社の兵器生産ステーションに到着した
到着するや否や待ち構えていた技術者達に連れられ造船区画に案内された、そこで見たのは...
「...なにこれ?」
「我が設計部の誇る新型軽巡航艦『アローヘッド』です!」
カットラス級が魚を思わせる形状に対し、この『アローヘッド』は700メートルある艦体各所に隠蔽式の多目的発射管や機関砲が所狭しと配置され、副砲にレーザー砲に電磁加速砲の機能を持たせた20.3センチ連装複合砲4基8門、主砲は50センチ単層電磁加速砲2基、挙句の果て艦首には膨大な量のエネルギーを圧縮し投射する超重プラズマ砲1門という重武装の
「これどっからどう見ても戦艦じゃないか?」
「一応軽巡です800メートル無いので、武装を詰め込めたのも必要最低限の居住性以外無くせたからですし流石に一般に売り出す際にはここまで武装乗せません、主機関はアーク機関で補助機関にワッテフ式魔導機関に33式トレム核融合炉の計3基でアーク機関が使用できなくても問題ありません、スラスターも新型の物を複数搭載しているのでカットラス級なんか敵じゃないですよ。」
「じゃろうな、幾ら何でもこいつはなぁ...」
「艦長、『アロー』『スピア』の両名から乗り換えたいと、カットラス級はドローン化して引き続き運用したいと皆から提案が出てます。」
技術者の説明に、呆れた様にセング―が呟き、メイリは追加で提案をした
「維持費的にいける? ドローン化させても結構かかりそうじゃない?」
「問題ありません、幾つか武装を取り払い格納庫にすれば十分に払えます、アカシマルの艦載スペースに関しても余裕がありますので隠蔽に関しても問題ありません。」
「じゃあそうするか、すみません改修お願いできます?」
くず鉄の艦隊の帳簿を預かるメイリや通信で連絡してきたアカシマル乗組員達の提案に頷いた祐一はそのまま技術者を見た
「ちょっとお待ちを...問題ありません、このまま『アローヘッド』2隻を引き渡してそのままカットラス級を入れれば問題ないかと。」
こうしてくず鉄の艦隊は完全に軽巡航艦の皮を被った戦艦を手に入れる事になった