護衛戦隊帰還
「メイリ、暇だ。」
「普段が働きすぎです、休みだと思って休んでください。」
現在マジュルアット星系を騒がしている真昼間からの暗殺騒動は1週間たっても相も変わらず大炎上していた
仮想敵国の暗殺部隊はもちろんの事現地の民間勢力のみならず宙域防衛軍の内通者や兵器管理担当まで関わっており、唯一の救いは現地企業の警備部隊による自浄作用が働いた事だろう
その現地企業であるレト重工は、元々排他的思考の強いマジュルアット星系における星系外商業を中核でありながらもマジュルアット星系の工業生産でもかなりの力を持っており嫌われていたが、今回の対応により株価が急上昇しており更なる発展が見込まれていた...尤も今までその会社規模と経営方針から散々身に覚えのない誹謗中傷を受けてきたレト重工側はそういったマジュルアット側の手のひら返しのような反応に関して軽蔑するような視線を向けてはいた
そして当事者たるくず鉄の艦隊も祐一を回収するために展開していた部隊を引き上げ、艦隊も星系軍基地に移動し即応待機状態になっていた
ただ即応待機状態とはいえ、有機生命体である祐一は機械知性である他のくず鉄の艦隊乗組員達の投票による満場一致で休暇状態となっており、お目付け役兼世話役のメイリの監視の下で自室で休暇となっていた
外に行こうにも安全確保と強制休日の点で、自室で薄着でのんびりとメイリに膝枕されながら祐一は寝ていた
「相も変わらず動けない、暇だね。」
「マジュルアット政府は今尚混乱状態にあり誰が謝罪するのかすらも決まっていません、マスコミ側に至っては責任者が挙って拘束されるか共和国に亡命しており有象無象の集団になっています...無政府状態になっていないのが奇跡です。」
外を出歩けない理由の1つがいつ無政府状態になってもおかしくないというのもあった
そんなこんなでメイリの奉仕を受けつつ休んでいた祐一に連絡が来た
「え、あの2人来るの? ここに?」
「名代の役目が終わり、休暇で来るとの事です。」
各勢力への秘密連絡を終えたセレナとサミエラが護衛艦隊と一緒に向かっているとの連絡だった
「この基地に来るのか?」
「いえ、基地司令から出港許可が出ましたので近隣宙域に停泊する予定です。」
「...わかった、艦隊全艦出港用意だ。」
2人に会える事から割と嬉しくなっているのは気のせいでは無いというのを自覚しながら、祐一の号令でくず鉄の艦隊は出港準備に入った
そしてくず鉄の艦隊は基地周辺の警備についていた艦艇も集結させると、艦隊を半分に分けくず鉄の艦隊に向かっているセレナとサミエラ達の迎えに向かわせ、残りは星系軍基地周辺に停泊した
暫くすると迎えに行った艦隊に守られながら、護衛として派遣していた3隻が合流した
3隻全てがそれなりに破損しながらも、『ピアー』は『アカシマル』に横付けすると積んでいたセレナとサミエラの輸送艇と2機の機動兵器を『アカシマル』に移送し、移送が終わるとすぐに他の多用途母艦の近くに移動し修理を始めた
そして祐一は隔壁やらドアが開くや否や文字通り飛び込んできた2人に抱き着かれて体の彼方此方を嗅がれたり傷がある個所を舐められたりしていた
そんな風に暫く舐められていると、ふと祐一が気づいた
「お前らデカくなってるな、あと鱗も増えてきたか」
一瞬2人とも動きが止まったが、祐一がゆっくりと頭を撫で始めた事で目を細め喉を鳴らしながらリラックスし始めた
「俺がたかが背が伸びたり鱗が増えた位で、お前らを嫌うとでも?」
2人は不安だったのだろう、元より種族の違いから受け入れられるか不安だったところが成長によって更に変わってきた
ありえない事だが、もしも祐一から拒否されたらと考えたら不安になり急いで会いに来た...尤も祐一からは特に気にしない反応どころか普通に家族みたいに受け入れてくれてる
決意した2人の動きは速かった、普段から顔を舐めるだけの所を少し舌を出すとそのまま祐一にキスをした
柔らかい唇のみならず少しだけとはいえ唾液で濡れた舌の感触に祐一は少し固まり、セレナとサミエラは顔が真っ赤になった...尤も気を取り直した祐一が即座に同じ事をやり返したので、何とも場は甘酸っぱい雰囲気になり覗いていた保護者枠の機械知性達は凄まじい勢いで大騒ぎしていた
彼らからしてみれば長年見守り育ててきた子供がやっとこさ落ち着いたのと同じ状況なので無理はなかった
様子を見に来たメイリも、嬉しすぎるあまり尻尾で巻き取られるようにして2人に確保された後に同じようにキスをしてきたのでキスし返した事もあり、場は何とも言えない幸せな空間になっていた。
そんなこんなでいちゃついていると通信が入った
その場にいた全員が邪魔された事で不機嫌にはなったが、結局は無視せず出る事にした
通信してきたのは青い肌色の3つ目の種族の中年男性だった
『失礼します、カンラド芸能社社長のパドラムでございます、祐一様少しよろしいでしょうか?』
「...ええ、どうぞ社長。」
通信してきたのはセレナとサミエラが歌手として所属している芸能事務所の社長だった
セレナとサミエラの2人はドラレーン社経営者一族であることは表には出さず、純粋な歌手だけでもかなりの額を稼ぐ売れっ子でもあった...尚この社長だけは2人がやんごとなき生まれである事は知っている為、ある意味で苦労人でもあった
『ありがとうございます、では早速なのですが...セレナ様とサミエラ様はそちらにおられますでしょうか? 暫くの間連絡が取れておらず心配でして。』
「すまない社長、家の都合で連絡が取れなかった。」
しょうがなかったとはいえ連絡をしておらず心配させてしまっていた事に、隠れていた2人が通信に出てきた
『そうでしたか、でしたら良かったです...では要件に入りますね、大手のマスメディアから取材を申し込まれています、なんとか断ってはいますが暴走している連中がいるとの事で気を付けていただきたい。』
「正気ですか? 事務所を通さずに直接取材を?」
『第4の権力を気取っている連中です、彼らからしてみれば自分達が取材するのだから受けて当然だと考えているのでしょうな。』
「「めんどい。」」
全員が嫌そうな表情を浮かべた
『...まあ流石に街中で突撃してくる事はあっても、停泊している船の中にまでは来ないでしょう。』
「まあそうだろうな...他にも用事はあるか?」
パドラムは表情を変え、穏やかな笑みを浮かべた
『ええ、少し前に出した歌唱動画なのですが相も変わらず大好評でして...新しい曲歌います?』
「少し考えさせてくれ、今の所歌いたい歌が無い。」
「色々と探したり考えてみます。」
セレナとサミエラの2人の言葉に、パドラムは頷いた
『わかりました、幾らか楽曲提供も来ましたので送らせていただきます、もし歌いたい曲等御座いましたら御連絡いただければ最優先で対応させていただきます。』
「わかった、確認しておこう...暫くの間くず鉄の艦隊に居るからそちらでも連絡で大丈夫だ。」
『畏まりました、では失礼させていただきます。』
丁寧な挨拶共に通信は切れた
「暫く居れるのか?」
「「クオ!(うん!)」」
祐一の言葉に、2人は先程の男勝りな威厳のある雰囲気を放り捨て元気良く返し、祐一とメイリを抱きしめた
そんな2人の様子に祐一は少しばかり笑みを浮かべ、身を任せる事にした




