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鬼ごっこ

「チクショウ! マジでふざけんじゃねぇぞゴラァ!?」


珍しくスーツ姿の祐一は市街地を全力疾走していた

周囲から絶えず攻撃が降り注いでくるが、持ち前の度胸と長年鍛えられてきた回避術で何とか逃げていた

事の次第は30分程前にさかのぼる

この時祐一はとある取引の為、首都生マジュルアットの首都にある高級レストランの一室にいた


「さて...ではそろそろ例の物を頂きたい。」


祐一と会食している鳥類から進化したような外見のベラリム人であり、軍事関係企業であるレト重工の代表からの言葉に祐一は口を拭っていたナプキンを置き、持ってきていたカバンから分厚い冊子と30センチ程の精錬された緑色の結晶を渡した


「ドラレーン社で設計された次世代型防御障壁発生装置の設計図にその製造に必要な天然のタレン結晶...御確認ください。」


代表は複数いた自身の部下達に分厚い冊子...防諜の為紙媒体で書かれた設計図を確認させ、自身はマジマジと興味深そうに結晶を眺めだした


「アルテラ宙域の次元跳躍点にて採取した天然のタレン結晶、粉末化させ宇宙要塞用防御障壁装置に用いれば強靭な汎用防御障壁を生み出します...その固まりだけでも新型の戦艦20隻程の値段はします。」


「凄まじいな、色々と...ドラクト様からの贈り物だ、大事に使わせていただく。」


「では約束の各種資源に関して宜しくお願い致します。」


レト重工は数少ないベラリル宙域系企業の中でマトモな人員で運営されている優良企業で在り、信頼できる取引先だった

ドラクトから頼まれたドラレーン社で設計開発された次世代型防御障壁の設計図を代理で受け渡し、くず鉄の艦隊で製錬されたその製造に必要な稀少資源の販売取引が今回の仕事だった

タレン結晶は一度ドラクトが買い取り、そのままレト重工に渡し事になっていた


「無論だ、星系基地の要塞化及び紹介監視網構築の為に必要な資源の提供については心配しないで頂きたい。」


結晶から目を離し、代表はしっかりと祐一の目を見て約束し...手を差し出してきた

祐一も差し出されてきた手をしっかりと握った


「こちらの文化に合わせて頂けるとは感謝します...本来ならもう少しばかり話したい所ですが、護衛が居ないという事もありますので早めに失礼致します。」


「まったく自国とはいえ、忌々しい政府やそれに踊らされる阿呆共にはウンザリする...まさか護衛の為だと言っているのに機械知性の立ち入りを認めないのに加え自衛武器にも制限を掛けると鼻。」


普段ならこういった取引場所には、メイリやそうじゃないにしても他の機械知性がついてくるのだが、反機械知性思想も強く選挙対策として、マジュルアット政府から機械知性の上陸が認められないどころか唯一上陸する事が出来た祐一にも自衛武装の制限が掛けられていた


「荒くれ者も多い傭兵とはいえ、幾ら何でも危険ですので...宙賊の手先に襲われたら堪った物ではありませんので...それでは失礼します。」


「ああ、気をつけて。」


代表やその部下達に見送られながら祐一は足早に高級レストランを後にした

レストランをでた祐一に、付近にいたベラリム人達から敵意や侮蔑にも似た視線が向けられた

ベラリム人は全体的に排他的でもあり他種族を蔑んでいる者も多かった

さっさと『アカシマル』に帰ろうとした所、祐一は嫌な予感がして少し周囲を見渡した

相も変わらず周囲の嫌な視線を浴びてはいるが、どこか違和感があった

こんなに人少なかったか?

会食場所のレストランがある地域はこの星でも1位2位を争う繁華街にあり、人通りは多い筈だった


そんな事を考えていた瞬間


『逃げて!』


通信機から入ってきたメイリの声に答える事無く駆け出した

その瞬間、そのまま歩いていたら居たであろう場所に多数の捕獲用ネットが放たれていた


『恐らく共和国の工作部隊とその意向を受けた民間団体です、民間団体は放送番組の企画として行動しており、工作部隊はあなたが民間団体に拘束された瞬間に攻撃してくるものと考えられます。』


「脱出ルートと支援は!」


追いかけてくる集団からのネット攻撃や時折放たれる非致死性の銃撃や近接攻撃等で、息があがらないように尋ねた祐一の言葉は酷く簡潔だった


『会食相手の本社に向かってください、地図データは戦闘支援端末に送りました...支援ですが電子支援しか出来ません、我々の緊急展開要請はマジュルアット自治政府により拒絶され現在くず鉄の艦隊部隊と警備部隊とで睨みあいになってしまっています。』


「政府にも居やがるな!」


『強硬突破可能ですが、その場合くず鉄の艦隊自体が敵対勢力認定され攻撃対象になる恐れが高く最終手段になります、またこの通信に関してもこれ以上使用すると傍受される恐れがあります。』


「わかった早まるなよ、通信終了!」


あまりにも酷い状態に半ば自棄になりつつあったが、それでも持っていたゴーグル状の戦闘時に着用する支援端末...ヘッドマウントディスプレイの進化系のような物を付けると表示されたルートに従って走った

捕まったら死亡確定の祐一対それ以外の地獄の鬼ごっこ開幕である



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