マジュルアット星系
またランキング入ってましたわ...
なんでぇ?
八島祐一は紛れもなく一般人ではない
そもそもの生まれが地球人としてはありえない試験管で生まれた人造人間であるのに加え、広大な帝国協定の中でも危険地帯である国境沿いの採掘宙域において膨大な量の資源の供給に加え膨大な数の宙賊を血祭りにあげている、その為指揮下である傭兵艦隊は宙賊にとって一種の恐怖の象徴にすらなっている
傭兵として活動を始めた最初期から師匠である元帝国協定軍将校のセング―や戦闘知能であるメイリの指導で宙賊退治を行い経験を積み、手に入れた多数の鹵獲艦を売却して得た資金を使い旗艦である砲撃コルベットを中心に戦闘艇3艇から編成される傭兵部隊を結成しアルテラ宙域を拠点とし活動を開始した
暫くアルテラ宙域にて宙賊狩りに勤しんでいたが、ある時暗礁宙域内にて岩塊にぶつかり修理を行っていた『ザッテルム同胞団』旗艦である大型宙賊母艦とその護衛部隊を発見、本来であれば撤退し傭兵組合や帝国協定軍や地方政府が編成する宙域防衛軍や警備部隊に通報する所を乗組員全員の投票により襲撃を行う事を決定
通報の為戦闘艇を1艇拠点である『リボーラ・アルテラ』に派遣し戦力が更に低下したが、『ザッテルム同胞団』艦隊の周囲にある岩塊群に指向性爆薬を設置し一斉に起爆、包囲するように配置された岩塊から放たれ砲弾と化した隕石弾攻撃により護衛艦隊や機動戦力は壊滅し残った宙賊母艦に対し白兵強襲...機械兵やアンドロイドによる殴り込みを敢行しこれを制圧、『リボーラ・アルテラ』に曳航し修理改修した後武装採掘母艦『アカシマル』として運用開始
この頃から宙賊からは『くず鉄』『星屑』『ハゲタカ』等と呼ばれるようになる
長くなってしまったがそんな経歴を持つ八島祐一を取り込もうとするにはどうしたら良いだろうか?
色々と考えられるが大抵共通しているのは、金・名誉・力・性に関してであるが...
「何を見ているのですかあなた?」
「ついこの間送られてきた俺に関する記録。」
『アカシマル』の祐一の私室ベットに寝ながら防諜用の紙媒体の記録を読んでいた祐一にメイリが話しかけてきた
現在くず鉄の艦隊の新造艦艇群が大規模改修中で在り、旗艦である『アカシマル』と直衛艦部隊は中央星系『リーグル』にあるドラレーン社研究コロニーに停泊していた
「取り込むねぇ...」
祐一は周囲を軽く見渡した
金は真面目に働けばくず鉄の艦隊のオーナーとしての収入があるので世間から見ても高収入で在り、生活にかかる費用もそこまで贅沢するような性格で無い為貯金は溜まる一方である
名誉に関しても傭兵艦隊司令官として同業者や関係者達にはそれなりに知られているし、国家相手にも様々な事情から表に出しづらい逸話を幾つか生み出した事もあり、特に思う所は無い
力こそ言うまでも無く、隻数こそ少数だが企業でもないのに超大型艦を主軸にする艦隊やそれに付随する白兵戦力を運用しており、それ以外にも個人的な借りで他の傭兵戦力を招集する事も可能で在り十分すぎる程である
性に関しては視線を向けられたことで無言のまま目の前でメイド服を脱ぎ下着姿で自身の暴力的なまでにデカい双丘を左手で持ち上げ、右手で祐一の腕を掴みその双丘を揉みしだかせるダイナマイトボディ美女メイドアンドロイドのメイリが居る時点で言わずもがなである
此処までの影響力を持つ祐一のハニートラップ対策名目で絶えずソッチ系の用途では最高級の素体に更新され続けているメイリの体を好き放題に出来るからとんでもなく恵まれていた
伴侶に関しても祐一を奉仕対象では無く伴侶として心の奥底から愛しているメイリや、グラド族ドラレーン氏族王女のセレナとドラレーン氏族に仕えてきたエング氏族王女のサミエラがいるので問題無いどころか過剰だった
「正直な所どれも満ち足りてるからね、帝国協定が反機械知性主義掲げたり洗脳でもしない限りは何処にも行くつもり無いしね。」
体を触らせるだけでなくベットに寝て抱き付いてきたメイリの柔らかい体の感触を楽しみつつ、まっすぐと見つめてくるメイリに微笑みながら祐一は答えた
「元々この帝国協定で製造されたとはいえ、家族を迫害されたり自由を侵害されるとなれば皆でさっさと逃げる...どこに行くかな?」
「遠い銀河の果てにでも行きましょう、そこなら煩わしい全てから解放されますから...」
まっすぐに祐一の目を見つめるメイリは機械知性特有の無表情ではあったが、祐一はメイリの目に深い愛が宿っているのを感じていた
祐一はそれに微笑みで返すと、奉仕をし始めたメイリに身を委ねた
艦艇群の大規模改修を終えたくず鉄の艦隊は、中央政府からの依頼を受け辺境へ出港した
ただ今回はくず鉄の艦隊以外にも同行する船団があった
「マジュルアット宙域っていい話聞かねぇんだけどなぁ。」
「しかしその宙域がもしも連邦や共和国の勢力圏になってしまえばかなり厄介な事になっちまうわい。」
「大量の物資の輸送に加え、現地での補給線構築完了までの軍需品生産でかなりの高額依頼です。」
くず鉄の艦隊の戦闘能力に便乗する形で多数の輸送船で構成される大規模輸送船団がくず鉄の艦隊後方についてきていた
「んであいつらは?」
「護衛費をケチっておる馬鹿共じゃ。」
マジュルアット星系は対共和国国境にあたるベラリル宙域の跳躍航行可能航路の中心地域だった
跳躍航行は基本的にどこでも可能ではあるが、安全が確保されている航路で無いと非常に危険であり、調査や掃海等で安全を確保しているのが跳躍航行可能航路だった
基本的にそういった宙域には要塞化された各種拠点が建設され守りを固めているのだが、ベラリル宙域は共和国との貿易の為に中々要塞化が進まない場所でもあった
しかし近年の共和国の動きからやっと要塞化が行われる事となり、くず鉄の艦隊は帝国協定軍拠点の建設資材と軍需物資の輸送と軍の補給戦隊が本格的に展開するまでの物資生産の依頼を受ける事となっていた
そんな宙域の中でもマジュルアット星系とそこに住むマジュルアット人達は特殊だった
「マジュルアットの連中、遂にここまでがめつくなったか...」
言うなれば極度の銭ゲバの自己中心連中、そう呼ばれるマジュルアット人は経済や思考が極度に偏っており嫌われている事でも有名だった
何処からかくず鉄の艦隊がマジュルアット星系に向かう事を突き止めたのか、付かず離れずの距離で付いてきておりうっとおしかった
無論それ以外の輸送船もいる事はいるが数が少ないうえ、自前の護衛戦力を用意しているのに加え先行するくず鉄の艦隊にも知らせていたのでこちらは問題視していなかった
「艦隊集結、超長距離跳躍用意! 『アロー』指揮下の第1雷撃戦隊は先行して本隊の安全確保を、それ以外の艦隊各艦は後方のマジュルアット艦隊に警戒...ぜってー宙賊の協力者混じってやがるから連中を撒いた後に再偽装を行う。」
「機関出力上げ、各エネルギー貯蔵装置に充填開始。」
祐一の指示の元、『アロー』指揮下の第1雷撃戦隊が次元跳躍を行い飛び去っていき、『アカシマル』の複数ある機関設備の出力が上がり一種の咆哮の様に聞こえ出した
また同時進行で『アカシマル』を中心に護衛陣形を組んでいたくず鉄の艦隊各艦が多数設けられた簡易係留装置に繋がっていき、最後の艦が繋がるとそれぞれの艦前方に艦体保護の為偽装装甲版が展開され前面を覆いだした
後方にいた輸送船団はいきなり大胆に動き出したくず鉄の艦隊に混乱しだしており、数少ないまともな輸送船団は混乱に巻き込まれないように次元跳躍し始めた
「『アロー』より通信、『モンダイナシ!』との事。」
「次元跳躍開始、全艦衝撃に備え!」
真空であるが故響きはしないが、もしも音が響くなら間違いなく轟音であろう勢いで多数の艦船を艦載させた『アカシマル』は次元跳躍を行い飛び去った...混乱する輸送船団は相も変わらず大混乱しっぱなしだった




