八島祐一
「はぁ、人造人間ですか。」
「まあ端的に言うとそうだね...まさか前世持ちだとは思わなかったけど。」
やってきた軍人達...地球圏自由協定統合国構成国大和協定国防軍のリーグル汎銀河帝国協定派遣軍部隊に保護された後、保護施設に収容され経過観察されていた
1週間程勉強と検査の日々を送っていた所、どこか掴み所が無いような外見の役人を名乗る30代程の男が面会に来た
「他の保護した子達が身体だけ成人していて思考能力だけは赤ん坊に近い状態だった...八島祐一、君以外は。」
男は面会室で手土産と称して持ち込んだ菓子の山をポリポリと食べながら、視線を向けてくる
「本来なら各種拘束装置や感情制御装置を付けて生体兵器にする予定だったんだ、そうとなれば思考能力は必要無く睡眠教育装置も必要無い。」
対象を睡眠状態にしたうえで強制的に脳内の思考領域や記憶領域に情報を読み込ませる
手渡してきた資料に書かれた睡眠教育装置の内容に少しばかり胸焼けがしてくる
「そんな中で唯一自我と会話が可能であるとなれば不気味で警戒するしかない...まあ君は直ぐに全てを話してくれたから直ぐに警戒は解けたけどね。」
「人として扱って頂けましたからね、誤魔化す理由が無い。」
「正直だねぇ。」
男は笑い出す、自身はそれを見ながらコーヒーを飲む
菓子と一緒に出されたコーヒーは何とも言えない程美味い
「そんなこともあって、政府としては今の君を拘束し続けるのは人道に反するという結論に至ったよ...各種検査も合格で、戸籍と資金さえあれば1人でもやっていけるとの考えみたいだ。」
「自分がさっさと施設から出ればその分他の子達に集中できるとの事ですね。」
男は笑っているが目は笑っていなかった
「まあ他にも色々と理由はあるが、大体はそれだ...なんせ今回の出来事は前代未聞だからねぇ、もう既に知っている者は多いとはいえ人や物資を追加投入しづらいからねぇ。」
「わかりました、ただし少しばかりお願いが...」
一瞬でヘラヘラとした雰囲気が変わる
「...何かな?」
「ここを出た後は傭兵になるつもりです、戦闘艇と装備の購入に関して手助けをお願いできませんか?...後は監視役も兼ねた腕利きの船乗りを紹介して欲しいです。」
「なんだそんなことか、手配しよう。」
一瞬ポカンとした後、男は頷いてくれた
そして少しばかり端末を弄りだした
「戦闘艇と装備に関しては払い下げ予定の防人型戦闘艇を用意できそうだね、船乗りに関しては1人の退役将校が志願してくれたからその方を...先方から連絡だ、追加で1人受け入れて欲しいらしい。」
「問題無いです、では諸々宜しくお願いします。」
色々と決まったので席を立ち部屋を出ようとすると、男が少し驚いた顔をした
「おや、もう戻るのかい?」
「ええ、あなたも忙しいでしょうから...役人は役人でも口に出せない部署でしょ?」
男はニヤリと笑う
「因みにどこだと思う?」
「特殊作戦群...今回の一件を嗅ぎつけたのはあなたなのでは?」
男は少しばかり頬を緩めた
「違うよ...違うとも、とりあえず諸々の準備が出来たらまた連絡するよ、それじゃあまたね。」
手をヒラヒラと振りながら男は見送った
それから2週間後、連絡が来て施設を出た
戦闘艇は既に港に到着しており、そこにはごつごつとした体を持つロボットが居た
「お前さんが八島祐一か...儂はセング―これからよろしく頼むぞ。」
「こちらこそよろしくお願いします...至らぬ点ばかりだと思いますが、色々と教えてください。」
少しセング―と名乗った機械知性の動きが止まった
「中々見どころがありそうじゃの...こんな所で立っているのもあれじゃ、来い。」
2人は戦闘艇の中に入った
「掃除やら点検やらは既に済んでおる、あやつからプレゼントとやらで武装と弾薬はサービスとの事じゃ...それとあともう1人じゃな。」
戦闘艇のスピーカーから声が聞こえてきた
『暗殺用戦闘知能『ディバ56』着任しました、御命令を艇長。』
知識が正しければとんでもない事を言っている
「セング―さん、確か暗殺プログラム関係は研究開発自体違法では?」
「あっとるよ、とある勢力が極秘開発しとった暗殺プログラム計画を叩き潰したのはええんじゃが研究開発中だったもんが何故か自我に目覚めてしまってな...引き取って育てるついでにお前さんも育ててやるわい。」
セング―はそういうと正面カメラの前に俺を立たせた
「ついでじゃお前さんが名を付けてやれ...いつまでも物騒な名だとかわいそうじゃ。」
少し考えこむ
「...メイリ、メイリなんてどうかな? 安直かもしれないけど。」
5=メイ 6=リ
ふと思い浮かんだ名前を口に出すと暫く無音になった
『ディバ56改めメイリ、これからよろしくお願いします。』
「おー、受け入れたようじゃのう...改めてこれからよろしく頼むぞ。」
「こちらこそ。」
後に大事な家族であり師匠である偉大な英雄と最愛の伴侶となる存在との出会いだった