宴
ランキング入り?!
取り敢えず私生活が色々と落ち着いてきたのでちまちままた書いていきます。
そのグラド人は巨躯であった
ほかのグラド人が8〜10メートル程の身長である事が多いのだが、その中でも13メートルの身長とそれらを構成し支える四肢の大きさと尾の長さは凄まじく、どちらかというと胴長短足気味ではあったがそれが気にならない程凄まじい体であった
他の外見も全身に生える鱗は多数のルビーと見間違えそうなほどの赤色の鱗に文字通り黄金にしか見えない金色の鱗が時折生えており何とも綺麗なコントラストとなっていた
正に西洋のドラゴンが和服を着て二足歩行で歩いている姿であったが、そのドラゴンな顔からは深い知性と理性が感じられた
その次に入ってきたグラド人も最初に入ってきたグラド人よりかは小さいとはいえ、平均並みの8メートルの身長ではあったが強靭な四肢を持ちその鱗はエメラルドを思わせる程の綺麗な緑色をしており、顔には深い知性と理性もさる事ながら非常に機嫌がよさそうな表情であった
そして数名の供の中には10メートルの身長の同じ体格ではあるが綺麗な青色の鱗を持つグラド人もいた
「「「「グルル...」」」」
オオガシラと呼ばれた巨躯のグラド人と3人のグラド人は大広間に入るや否や壁際に立っている祐一達3人を見ると、すぐさま機嫌良く唸りだした
するとオオガシラはS字を描くようにして邪魔にならないようにしていたその大きな尾を動かし、祐一の体に尾を巻き付かせ自身の前に連れてきて大事そうに抱きしめ歩き出した、尚メイリは体格の小さいほうのグラド人により同じように確保されていたりする...流石にセング―は確保されていないが手招きされその後ろを付いていった
グラド人以外の古くからドラレーン社で働いていたりオオガシラに仕えている者達以外の新人達は、目に映る光景に呆然としていた
ドラレーン氏族の王たるオオガシラは氏族長としてもドラレーン社の社長としても誉れ高い事で有名であり、上層部の知人であった機械知性ならともかくなんかよくわからない太陽系地球人を侍らせる所かまるで家族の様に抱き上げているという事が信じられなかった
何せ現在確認されている種族の中でも最強格のグラド人は種族全体が恐ろしい程の温厚且つ大雑把な性格ではあるが、基本的に人の選り好みが激しいのに加え凄まじい程の身体や思考能力を駆使して相手の本心や思考を読み少しでも悪意所か利用してやろうと近付こうなら速攻で威嚇する程に気難しいという、極めて付き合いが大変な種族であったから尚更だった
そんな事は気にせずにオオガシラ達は大広間の最奥に設けられた床よりも1段高く設けられた上段に置かれた座布団に腰を落ち着けた
「忙しい中皆良く集まってくれた、楽にせよ...良く話をする者達も多いが、久しかったり初めて会う者達も多いであるな...であるならば自己紹介するとしよう、知っているとは思うが儂がドラレーン社が社長にしてグラド族ドラレーン氏族が氏族長のオオガシラことドラクト・ドラレーンである。」
オオガシラ...ドラクトは抱えていた祐一を自身の胡坐の真ん中に降ろしその頭を撫でながらであるが威厳を感じる声で喋った
「私はディーナ・ドラレーン、ドラクトの妻よ。」
こちらもメイリの髪を手櫛で整えつつも撫でながら紹介した
「そして私がドラレーン社副社長にしてエング氏族が氏族長バルディア・エングであり、隣に座っておるのが妻である...」
「ホリー・エングよ、よろしくね。」
そしてその側に控えるようにして座った2人のグラド人...バルディアとホリーーが紹介しながらではあるが祐一とメイリを愛でているドラクトとディーナを羨ましそうに見ていた
「では改めて始めるとするか...まずは普段の業務から順に頼む。」
そして報告が始まった
尚、祐一は始まった瞬間に持ち込んでいたヘッドフォンと携帯端末を取り出し内容を聞かないようにしようとしたが
「家族である、そのような気遣いはせんで良い。」
ドラクトが爪先で器用にヘッドフォンを取った事で、すぐさま飛んできたドローンから届けられた端末から事前に纏められた資料を読み始めた
「経営部門です、今期の売り上げに関しましては全体で1%の向上になり順調で在ります、また現在開拓している惑星群の開拓業務につきましても特に差し迫った問題は起きておりませんのでこれからも向上していくものと思われます。」
「うむ、基本的に我等は資本を利益として見てはおらず人々が幸せに暮らせる事を利益として見ておる、されど売り上げが上がれば自由に使える資金も増え更なる投資を行う事が出来るであろう...実に良きである、働く者達に無理せぬようにしつつ引き続き頼むぞ。」
「かしこまりました。」
ドラレーン社は普通の企業とは異なり売り上げを上げる事を目標に掲げていない、ドラレーン社誕生の切っ掛け自体が通常ではありえない事情によるものだからだ
「外交部門であります、現在ヴャリャーナ連邦からの度重なる開拓地譲渡要請でありますが、近隣諸国との関係悪化を受け帝国協定中央政府より最終警告が発表され譲渡要請は止まりました、それ以外にも幾つか懸念事項は御座いますが全体的には対処可能であると思われます。」
「良き良き、少しでも人々の生活が脅かされる恐れがあるような勢力に人々の運命を委ねる事は許されぬ、その事を改めて意識し励むように...大変な業務であったであろう、交渉にあたった者には我から報奨金を出すとする、後で秘書官部を通じ我に伝えよ。」
「かしこまりました、交渉にあたった部署全ての人員でも構いませんでしょうか? 皆良く働いてもらいましたので...」
「当たり前であろう、どれほど増えても構わぬからその部署の本来の仕事を肩代わりした者達も教えよ。」
グラド族の王や竜帝は血筋ではなくどれだけ能力が高く頼りにされるかで決まる、王や竜帝の誕生の経緯も、当時の頼りになる人物が日々起こる様々な相談事に対応していったら人々が集まり自然と集団化されていき各氏族が形成されていったのである
その後幾つかの産業や文化の発展を経験し宇宙に進出した後、その当時の各氏族の王達が集まりその取りまとめ役として竜帝が生まれた、しかしそういって頼りになる王達は世代が変わっても頼りにされ続け今では半分血筋で決まる事も多くなっていた
王や竜帝は生まれながらにして様々な教育を施され鍛え上げられたエリート集団でもあるが、凄まじい程の人格者でもあった
「統治部門です、現在幾つかの居住惑星にて大規模災害が発生しておりその対応の為臨時予算及び追加資源と人員を投入し対応中であります、重軽傷者多数ではありますが死者は出ておりませんので現在医療態勢の見直し及び強化を行っております。」
「どれほど技術が発達しようにも自然を完全に制御する事は厳しいものである、気を付けよ。」
「心得ております。」
実際の所自然環境の制御は困難ではあるが可能であるが、帝国協定全体の思考として共存共栄を掲げている事もあり、技術的には可能ではあるがやらないといったほうが正しかった。
そんなこんなで報告は続いていく、基本的に祐一は聞いているのみだがその間もドラクトからディーナやバルディアやホリーの元に渡され可愛がられていた、尚メイリもまた同じである
「時に祐一よ、技術本部から依頼されておる例の新型、使い勝手はどうか?」
技術部からの報告を聞き終えたドラクトからの言葉に、のんびりしていた祐一は意識を戻した
「中々良いと思いますよ、整備性や拡張性も良いです、正直な所可変機構による整備性や調達費用の悪化に人型・半人型・攻撃機型の3形態からくる扱いづらさが出てくると思っていましたが素直に動きますからそこまで気にしていないです。」
「そうかそうか、ではあれかの最低でも補助戦力としてはなかなか良いという事か。」
「まあそうでしょうね、一応作業用にも使えますが可変兵器の宿命としてそれぞれの使用用途別に装備を調達しなければならないのが欠点ですかね?」
ドラクトはのんびりと頷いた
「まあその辺りは資金に余裕があるから問題は無いであろう...どちらにせよ戦力は増やさねばならぬ。」
その言葉を発した直後雰囲気が一変した
「皆に伝えねばならぬ事がある、最大で10年最低で3年以内に戦争が起こる、連邦及び共和国の2国との第4次大戦が起こると見ておる。」
ドラクトから厳しい雰囲気で伝えられた内容に、グラド人と一部の者達を除いて一斉にざわつきだした
「既に中央政府並びに連邦及び共和国と国境を接する宙域の統治機関にはこの通達が届けられている。」
補足するバルディアの言葉にざわつきは更に増した
「祐一よどう思うか。」
「近年アルテラ宙域でも宙賊共の襲撃に変化が出つつあります、どうにも今までは少数に分かれての襲撃が多かったのですが最近じゃ艦隊や船団を組んできています...今回のムステルダの件も通常ならありえない事ばかりですが、連邦や共和国のコマンドや諜報部隊が絡んでいるとなればある程度理解が出来ます。」
「機械知性に対する反発が強い地域であるにせよ、今回は異例の事件である...実際今回避難民の一時受け入れの件についても連中の諜報員がゴタゴタに紛れて潜入するという危惧から、内密に我らが一時的に受け入れを行い調査する事となっておる。」
ドラクトは続ける
「ここ800年奴らの動きは鈍重であった、されど近年その動きを活性化させ情報収集や最前線地域への戦力や物資の貯蔵も確認されておる、しまいには領域各地での造船関連施設の建設や再整備も盛んにおこなわれておる...備えねばならぬ、軍事部門どうか?」
ドラクトの言葉に和風な軍服を纏った集団が答えた
「現在ドラレーン社私設艦隊総数4万隻の内約4分の3は各地に分散し任務にあたっております、残りの4分の1である約1万隻は4つの艦隊に分かれ訓練及び最前線宙域で睨みを利かせております、稼働率につきましても絶えず9割を維持しており問題ございません。」
「ドラレーン社地上及び航宙統合軍総数約2億、重装部隊約1億5000人に軽装部隊約5000人が各方面軍に分散配備されており、それ以外にも無人機械兵部隊600億が配備されており問題ございません。」
「良きである各装備の確認及び更新を急がせよ、また艦隊も各種装備のみならず改修や更新を急ぐように。」
「「かしこまりました。」」
ドラクトは奪還した祐一の頭を撫で始めた
「そして此処に我が名において宣言する、近年の情勢を踏まえ我がドラレーン社の保有する最大戦力である超大型要塞艦『ドラレーン』の新造及び本社機能の移転を行う...バルディア。」
向けられたドラクトの視線にバルディアが頷いた
「皆も聞いた通りだこれよりドラレーン社は超大型要塞艦の新造を開始する、内密に設計も完了しており1000キロメートル級の大仕事である! この『ドラレーン』の機能を強化すると共に来るべき有事の際には配置されている方面の文字通り全ての戦争指揮を執る移動要塞としての運用が予定されている。」
「建造の全ての責任は儂が取るが、実際の建造式はバルディアが取る...因みに完成次第運用している『ドラレーン』は艦名を『ドラグリー』に変更し私設艦隊第1艦隊旗艦として運用する予定である...頃合いも良い所であるな、話すべきところの話もできたので解散とする...皆の働きに再度期待する。」
『かしこまりました!』
終了を告げるドラクトに出席者達が返事をすると、ドラクト達4人はそれに満足気に頷くと立ち上がり歩き出した...その腕には祐一とメイリがおり、セング―もまた一緒について歩く
暫く一行は歩き、一際巨大なドアが備えられているドラクトとディーナの私室に到着した
部屋の中には巨躯であるグラド人に合わせた家具が配置された和風な部屋となっており、中央の部屋以外にも幾つかの部屋につながるドアがあるのだがそれ以上に目を奪われる物がひしめいていた
壁際いっぱいに設置された保管ケースには贈答品やドラクトやディーナ自身が集めた様々な国宝級の物品や書物が飾られており、部屋の中心には大きなテーブルが置かれその上にも幾つかの物品が置かれていた
「これは最近送られてきた物でな、何でも太古の昔から生きておる生物の鱗らしくてな、大変キラキラしていて良い物である。」
テーブルの周りでのそのそと座るとドラクトが好奇心から見学しだした祐一に話し始めた
尚体格の都合上、ドラクト以外の3人は椅子に座っているがドラクトのみ椅子を使わず胡坐で座っている
祐一とメイリとセング―の3人はテーブルの上に置かれた座布団に座らされた
「まあ後で好きなだけ見るとよい、今は宴の時間である。」
その言葉を発するや否や部屋の中にドローンの大群が突入し、運搬してきた皿や料理や飲み物をテーブル上に並べ始めた
そんな光景を見つつセング―は背負ってきていた大きな樽を置いた
「せっかくじゃし坊よ、これ皆に注がんか?」
「わかった、丁度盃もあるしね。」
するとグラド人4人は一瞬動きを止めると直ぐに盃を樽の近くに置いた
祐一はそれを確認すると立ち上がり、後ろに佇むように位置取りしたメイリを引き連れ樽の方へ歩き出した
樽の周囲には用意された盃の他にも木製の蓋を割るための木の大槌に大きな柄杓が置かれており、祐一は大槌を持つと何の躊躇いもなく
「どっこいせ!」
樽蓋に振り下ろした
割れた蓋の間から凄まじい程の豊潤な日本酒の香りが噴出し、グラド人4人はうっとりとした表情となった
「いい香りだ...あとどれぐらいある?」
「これは作った物の中でも上等品です、後50樽はあります。」
「全部買うから他の飲める者達にも頼む、我等からの贈り物として配ろうか。」
「わかりました。」
バルディアの言葉に祐一は頷いた、そして大きな柄杓を手に取ると盃に注ぎ始めた
盃になみなみと注ぐとドラクトとバルディアがそれぞれの伴侶に渡し、その後自身も盃を手に取った
祐一はというと注ぎ終わり盃が持っていかれるたびに近くにいるメイリが空の盃をずらしその盃に注ぐという工程を終えると、自身用の小さな盃に少し入れその場で胡坐をかいた
そしてその場にいる一同は盃から香る酒の匂いを楽しむと静かにそれを飲み干した
「何とも良い味、やはりグラド人にはグラド酒が一番合うわね。」
「芋で作る焼酎や他の酒も良いですがやはりこれだわ。」
ディーナとホリーはそれぞれ感想を言い合い、男2人は目を閉じその余韻に浸っていた
祐一はというと腹に何も入れずに強い酒を飲んだことで少し酔い始めたので、近場にあったグラド人向けの自身よりも遥かに大きいつまみを用意されていた短刀で削ぐともっしゃもっしゃと食べ始めた
グラド酒は材料こそ違うが製法は日本酒の作り方と同じで、今回持ち込んだこのグラド酒は『アカシマル』艦内の植物工場で丁寧に生産されている最高級の穀物を使用した完全『アカシマル』産の最高級品だった...尚グラド酒の材料はジャポニカ米とよく似たものであり味わいもほぼ日本酒だったりする、その為高級品として作れば作るほど売れる事から程地球圏自由協定統合国の対グラド人向け貿易品の中でもっとも生産され輸出されているものだったりする
「では宴である!」
そして宴は始まった
なんか色々とバグっていたので調整しました