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『ドラレーン』

「なにこれー?」


「川アユっていってね、塩掛けて焼いて食べるとおいしいんだよ。」


「これはー?」


「そっちはミゾレイワナ、こっちも塩で焼いて食べるとおいしんだけど唐揚げにするとおいしいよ、後でみんなで食べようか。」


『わーい!』


何とか脱出した艦隊は付近の安全な宙域に停泊し、急な出航だった事もあり休息と点検作業を行っていた

脱出した艦船は基本的に貨客船が多かったのだが、緊急時で在ったこともあり貨物船で脱出した人々も多く、居住環境が整った『アカシマル』に移乗し休息をとっていた

そんな中いつも時代も子供達は元気である、探検と称してくず鉄の艦隊乗員の機械知性達について回り遊びまわっていた

機械知性達にとって有機生命体は自らを生み出した者達の末裔であるのと同時に自らの命に代えてでも守るべき存在であり、年を取り後進に道を譲った者達の子供達は孫のような存在である

結果は言うまでもない、ストレス発散も兼ねて『アカシマル』の艦内では親子参加の艦内ツアーが催され、工廠区画・格納庫・艦橋・居住区画・生産区画に機械知性の案内で子供達は目を輝かせながら回っていた

その中でも人気なのは工廠区画と生産区画の食料プラント群だった

工廠区画では目の前で組み立てられていく機械群のロマンに子供達は大興奮しており大人達も感嘆の声を上げていた

食料プラント群は合成食糧の原材料となる葉物野菜を生産する水耕栽培による植物工場にその水耕栽培設備を流用した養殖用水槽で泳ぎまわる魚の大群に皆目を奪われていた、他にもあえて自然環境を再現した露地栽培式の畑や果樹園に加え間引いた植物など食べる小動物を飼育しているのは非常に珍しかった


「はーい乗り出すと落ちちゃうから気を付けてねー、良い子にはおいしいごはんつくってあげるからねー」


『はーい!』


今回の問題に関してブチギレたセング―を中心とした機械知性達に仕事を取られた艦長である祐一は食料プラント群で畑や果樹園の手入れや小動物の世話をしながら子供達の世話をしていた


「で、状況は?」


「引き続き待機せよと自治政府からです、やはり今回の件で内部に反逆者が紛れ込んでいると考えているようでして...」


小声で通信機に問いかけた政府職員からの返答に小さく舌打ちが出てしまう


「幾ら警備艦隊がいるとはいえいつまでも漂っている訳にはいかんでしょう、そういった生活をしている人々ならともかくこの避難民達はステーション暮らしだ、短期間ならともかく長時間は厳しい...哨戒ドローン飛ばして哨戒線張っているとはいえ宙賊から見たら恰好の獲物だ。」


今はまだ報告が上がっていないが宙賊に見つかると警備の隙をついて攻撃してくるのは間違いなかった


「受け入れ先のステーションが受け入れ中止を撤回しなければこんな事には...」


ステーション管理部門内にスパイが潜り込んでいた事もあり、本来なら即座に受け入れが行われていなければいけない所が避難民の再調査の為一次受け入れを停止していた


「取り敢えず追加料金請求してやる、ただでさえこっちは無理矢理強制依頼で駆り出されてるんだ。」


「え? すみません、こちらですと自ら志願されているとなっていますが...依頼内容の確認しますか?」


政府職員が差し出してきた依頼内容と、組合から渡された依頼内容をそれぞれ見比べた


「「あのクソババアぶっ〇す。」」


元の依頼票ではかなりの金額だったが、組合からの依頼内容では2割ほど減った数字が書かれていた


「どうやら組合以前にそちらでも諸悪の根源がおられるようで...」


「直ぐに組合に依頼発注したクソバb...事務担当を調査してもらいます。」


この間2人とも周囲にいる子供達を怖がらせないように小声且つ微笑みを浮かべていたが、流石にここまでくると職員から笑みは消え端末に凄まじい勢いで何やら打ち込み始めた


「元々何かの思想団体にいた事は確認していましたが、そちらに流れているかもしれません。」


「こちらも組合本部の上層部に掛け合っておきます。」


そんなこんなで殺意を滾らせているところで通信が入った


「艦長、臨時の受け入れ先が見つかりました、今コチラに飛んでくるそうです。」


「そうか、では直ちにはっし...飛んでくる?(・・・・・・)


「私にも飛んでくると聞こえたのですが...」


2人して顔を見合わせた所で、外部カメラの映像が艦内各所に流され始めた

艦体外周部に複数の大型戦艦が先駆け...宙域に超長距離次元跳躍航行時に必ず行われる安全確認手段でワープしてきた


『我等、嚮導戦艦『グラーベア』『エング』『ワクレッツァ』『ティターニア』、周囲の艦船に警告する、これより超大型要塞艦が到着する、注意されたし!』


広域通信で放たれた通信文と共に送られてきた跳躍予定地点の座標周辺の艦船が急いで退避した

そして小惑星と見間違えそうな程巨大な物体が次元の壁を裂き現れた


「我、ドラレーン社本社にしてグラド竜帝国総旗艦が1つ、超大型要塞艦『ドラレーン』である!」


複数の小惑星を繋ぎ合わせうえで複数のステーションを付け足したような外見の300キロメートルはあろうかという程の超大型の要塞艦だった


「...受け入れ先きましたね。」


皆が呆然とする中でポツリと呟いた政府職員の言葉に、祐一は事態の重さに返事を返せず両手で頭を抱え込んだ

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