アルテラ宙域のアカシマル
新作書きたい症候群発症したので...許してください。(土下座)
宇宙...無限とも思える程広がる空間であり様々な神秘が眠る場所でもある
前世の地球人類にとってはまだ手を伸ばし始めたばかりの領域だったが、転生した地球と恐ろしく似ているここでは違う
昔は同じようにまだ地球から飛び立てなかった人類だったが、来訪した星間国家である『リーグル汎銀河帝国協定』と交流が始まるとそれは変わった
やってきた宇宙人達は映画等で見るような、こんにちは死ね!をしてくるような人々ではなく礼儀正しい人々だった、初め広大な大洋の島国に降り立ち交流を持った際には大騒ぎになったが、その時の帝が陣頭に立ち積極的に交流していく事で直ぐに仲良くなれた...ただ他の国は違った、降り立った直後に武装ヘリを引き連れて島国の代表者達を押しのけて自己紹介をブチかました自称世界の警察や島国ばかりに交流を持つのはズルいと妬む他国との仲は進まなかった、少なくとも誠実に対応しなかったり捏造した歴史を持ち出して仲良くなった島国を貶してくる連中とは付き合いたくなかったのが彼らだった
そんなこんなでしばらく経つと別勢力がやってきた、『ゴランディ銀河共和国』と『オレアル自由連邦』だった
地球圏は帝国領域に在りこそしたが、仮想敵国とはいえ戦争していないので代表団を送ってきたらしい
彼等は島国とその友好国と銀河帝国と仲が悪い国々に接触するとこう言った
「技術と物売るから貿易しようぜ!」
地球の国々は喜んで様々な物を売買し始めた、後に大災厄を引き起こす事となるとは露知らず
この間島国とその友好国と帝国も手をこまねいてはいなかった、島国と友好国からは工芸品や食料を売り出し銀河帝国からは技術とそれらを作る工作機械が売り出された
始めは銀河帝国からの持ち出しが多かったが、次第に技術を吸収し成長していった島国と友好国との貿易は増えしまいには共同で研究機関さえ設置された
長い時を生きる長命種が多い宇宙においては技術革新が非常に遅く、ポンポンと既存技術の改造や新技術を出してくる地球人は凄まじいの一言だったらしい
少子高齢化が進んでいた島国と友好国は膨大な貿易収入を生かし経済と産業の発展と少子高齢化対策に注ぎ込む事で人口増大に成功した、それに伴い帝国の支援により宇宙移民船を多数建造し火星とアルファ・ケンタウリへの入植を開始した、月その周辺宙域は既に共和国と連邦の支援の元抑えられており代理戦争が始まりかけていた、その御蔭で火星に移民出来なかったのは最大の誤算だったのだろう
そして始まってしまった、最初に火蓋を切ったのは銀河連邦が支援していた新大陸連邦だった
最初に地球外文明と公式に接触してからこの時既に200年経過しており、国家間の統合が繰り返されていた、地球には『新大陸連邦』『ユーラシア共和国』『自由協定』の三大勢力に分かれており、新大陸関係は『新大陸連邦』 欧州やその他ユーラシア大陸諸国は『ユーラシア共和国』 島国関係は『自由協定』に纏まって対抗しあっていた
そんなこんなで当時の共和国や連邦が止める暇なく小競り合いが戦争に発展し『新大陸連邦』と『ユーラシア共和国』は開戦した、『自由協定』側は即時停戦を両勢力に呼び掛けるもそれに構わずヒートアップしていくのを確認すると最悪の事態に備え地球からの脱出を開始、『自由協定』は既に政府機関を含め国家機能の大半はテラフォーミングした火星やアルファ・ケンタウリに存在していた事から各地の王族や皇室を中心に一般市民を脱出させるだけで済んだ
そして恐れていた事態が起こってしまった、当初は優勢だった『新大陸連邦』も当時最大勢力だった『ユーラシア共和国』が奇襲から持ち直すと瞬く間に膠着状態に移り戦況は逆転されつつあった
その為戦局打開の為ある兵器が投入された、核兵器に代わる強大な武力『エーテル兵器』だった
『エーテル』、それは宇宙空間に多数存在する物質であり強大な力を持つ兵器に転用可能な物だった
古代に栄えた銀河文明によって発見されたこの物質は主に主力や大型の艦船の機関やスラスターに使用されており兵器として使うのは地球勢力が初めてだった
膠着していた最前線において当時運用されていた大型砲によって発射され『ユーラシア共和国』軍部隊の兵器を無力化し前線を突破したのである、当時は虐殺は起こらないクリーンな戦争であるとして絶賛され多数使用されたのだが、起こってしまった
『エーテル・スタンピード』
大量に地球で蓄積されたエーテルが急速に変化し暴走、地表どころか大気まで瞬く間に変化し青く美しかった地球は死の星となってしまったのである、これにより地球にしがみ付いていた『新大陸連邦』『ユーラシア共和国』の両政府は蒸発、残されたのは宇宙にいた者達のみとなり地球圏での戦争は宇宙空間での絶滅戦争となった
『自由協定』側はこれにより中立姿勢を放棄、戦争を続けていた『新大陸連邦』と『ユーラシア共和国』を制圧した、その際に『自由協定』に組する事を拒んだ残党は共和国と連邦に亡命し後々の課題となった
それから約800年、太陽系を中心に居住していた地球人は銀河帝国に正式に加盟、今では主要種族として立派に銀河帝国議会に代表者を送り出している...
「艦長起きてください、もうそろそろ採掘始めますよ。」
「うん? ああごめん、暇すぎて半分寝てた。」
「坊、今回は色々とありそうじゃからしっかりしてくれや。」
何とも美しい黒髪美人なヴィクトリア調によく似たメイド服を着こなすアンドロイドである事を示す耳元のヘッドフォンに似た機械を付けたメイドと民間というよりも軍用品の様な雰囲気を持つ4脚半人型式の胴体を持つロボットが艦橋の操縦席の1つでボーとしていた1人の若い男に声をかけた
副艦長のメイリと機関長兼砲術長兼副艦長のセング―だ
「やっぱりナマモノは不便じゃのう、いっその事アンドロイドに...」
「しないからね?」
島国の後継国である『大和協定』出身者に良くみられる黒髪黄色肌で目付きの悪いが顔立ちはブサイクとはギリギリ呼べないルックスの艦長...機動兵器オペレーター兼艦長の八島祐一は頭髪をガシガシと搔きむしると窓の外に広がる光景に目をやった
窓の外には大量の岩石群が浮遊するアステロイドベルトが広がっている、このアルテラ宙域は夥しいほど大量の岩石群が流れ着く採掘宙域だった
「それじゃあ始めるかー、皆の調子は?」
「問題ありません。」
『モンダイナシ!』
船内服に付けられている通信機から元気に機械音声が返してきた
その声を聞きながら艦橋を出て格納庫に向かう、艦橋の左舷にあるのですぐに着く
格納庫には何体ものアンドロイドやロボットが作業しており、採掘用爆薬や複数のアームを付けたドローンや採掘した鉱物や物資を運ぶ為の輸送艇やその輸送艇に採掘機能も付けた改造作業艇に加え
「今日も頼むよ。」
多数の汎用アームや戦闘艇には不相応な大型砲を搭載した戦闘艇の上に更に戦闘艇に乗せたような外見の茶色の塗装が施された70メートル級の大型戦闘艇...アグニが発進準備を整えていた
ドローンは、ドローンをメインに製造しているマグライト社製の13メートル級の『MDー21 ケレデン』のカスタム機
輸送艇は、老舗企業であるドラレーン社製の40メートル級の『DRー1 ヘレーン』のカスタム機
大型戦闘艇は帝国軍から払い下げで買った八洲重工製の『A61 防人』を作業や採掘用に改造した物で祐一の愛機だった
ドローンや輸送艇は、一般的に普及している外装モジュールに様々な機能やモジュールユニットを備え付ける方式...いわゆる箱の中に様々な物を詰め込むのではなく骨組みに様々なモジュールを付け更にその上に追加装甲にスラスターを付ける方式...要は串団子の様に串に団子を刺していくような方法を採用している、この方式だと金は掛かるが高性能化出来るうえに高耐久で運用する事が出来る、一般的には使い捨て同然のドローンであるが、この採掘艦隊の乗員の9割は機械知性であり大事な家族である為、たとえ大丈夫と彼等から言われても使い捨てで運用する気など起きる筈も無かった
大型戦闘艇であるアグニは対宙賊母艦兼大型衛星破壊用に設置した20.3センチ重レーザー砲1門とカタパルトと呼ばれる大型加速砲を主兵装に40ミリレーザー機関砲を4門機首に装備し、宙賊に襲撃された際には採掘や運搬に用いられる汎用アームにも人型機動兵器が運用する事が多いアサルトライフルやロケット砲や対艦刀に加えパイルバンカーを装備する事も可能な重装備の大型戦闘艇だった...流石に今は衛星に穴を開ける為にパイルバンカーしか積んではいないが
祐一は格納庫にいる作業員達に軽くあいさつしながらアグニに乗り込むと直ぐに操縦席に移動し発進体制を整えていく
既に準備が整っていたアグニは機嫌良く機関と推進機関であるアークリアクターとアークスラスターの作動音である響きをあげる
「こちらアグニ発艦準備完了、いつでも行ける。」
『発艦指揮所リョウカイ、先頭カラ順次通常発艦、御安全ニ!』
発艦担当の作業員の発進指示に従ってドローンや輸送艇が発艦していき、10分後には全機及び全艇が発艦完了し最後にアグニが発艦する
「アグニ、発艦する。」
発艦兼物資投射用のカタパルトに押され発艦すると、先に発艦していたドローンや輸送艇達がアグニを中心にすぐさま編隊を組んだ
祐一はゆっくりと発艦した全長2キロにも及ぶ葉巻型の超大型艦...我が家を見た
『こちら艦隊旗艦アカシマル、偽装解除開始』
艦体上部の艦橋からの通信に合わせて外部装甲が剝がれていく、そしてこの大型艦が艦隊と呼ばれる理由が分かる
旗艦であるアカシマルを中心に6隻の艦艇がドッキングしており、外部装甲が剥がれ艦体が露出していくと宙に舞った
護衛艦として宙賊から分捕った600メートル級のカットラス級高速軽巡航艦2隻『アロー』『スピア』、ドラレーン社製のドラッド型防宙重巡航艦2隻『キャノルー』『キャノラー』
輸送艦兼機動母艦でドラレーン社製のペンタルフ型多用途母艦2隻『ピアー』『コキュー』
計7隻の艦隊は外部装甲を回収するとゆっくりと動き出した
「こちらアグニ全作業員に通知、始めよう。」
アグニからの合図で、目星を付けた10キロクラスの鉱物資源を持つ岩塊にドローンや作業艇が取り付いて採掘を始めていく
レーザートーチで切り出された岩塊はすぐに待機していた輸送艇に乗せられアカシマル右舷に設置されている工場施設に運ばれ各種インゴットに変えられていく、インゴットはその後アカシマルの倉庫やペンタルフの格納庫に保管され、内部に格納しきれない分はコンテナに入れられた後艦体外部に直接設置されていく
そんな事をしている間も採掘は続く
アグニもまたお供のドローンや輸送艇を引き連れ別の5キロクラスの岩塊に目標を定めると
「パイルバンカーいくよー。」
搭載していたパイルバンカーを設置し岩塊を破壊する
『ハズレ―』
ドローンを操縦している作業員から気が抜けるような声が届く、殆ど只の岩で使えなかった
「しゃーない次。」
『アイサ~』
直ぐに気持ちを切り替えて次の岩塊に向かっていく
そんなこんなで暫く採掘していると
『レーダー感有り、所属不明艦複数確認、警戒を。』
「全員作業中断! 戦闘用意!」
アカシマルからの通信に即座に祐一は命令を下す、輸送艇は積み荷が有る無し関わらず艦隊に避難していき、代わりに艦隊に待機していた数隻の輸送艇が緊急発進し作業を中断し集結していたドローンや作業艇に兵器を配っていく、そして
『おいそこの採掘屋共降伏しろ! そうすりゃ命は助けてやるぜ!』
不明艦...採掘艦隊や輸送船団を襲う宙賊の艦隊13隻の旗艦から通信が入った
「断る、そっちこそ降伏すれば命は助けてやるよ。」
『上等だ! 野郎共やっちまえ!』
無謀な戦いを挑もうとしていると勘違いしている宙賊の親分は嘲笑いながら通信を切った
宙賊からしてみれば美味しい獲物だろう、なんせ彼等からみればアカシマルを始め大型輸送船3隻に中型護衛艦4隻とその艦載戦力しか無い
大型船は闇商人に売ったら大金になるし中型艦は火力支援艦や宙賊母艦としては非常に有用であり
しかもこの宙域は帝国と連邦との国境線であり、両国の警備艦隊がやってくることは少ないから余計襲いやすい筈だった
『ハッキング成功、全艦に指令、敵対宙賊艦隊に対し砲撃開始。』
アカシマルの艦橋にいるメイリの指示の元、『アロー』『スピア』『キャノルー』『キャノラー』の4隻は一斉に格納していた主砲群に加え大型砲を持つアグニや長距離砲で武装したドローン群が砲撃を開始した
『嘘だろおい! さっさと逃げるぞ、だまされた! こいつらくず鉄艦隊だ!』
『だめだ! ワープ装置が作動しねえ! 逃げられねぇ!』
基本的に採掘業で稼いでいるが、基本的に給料や必要な物資が有機生命体よりも掛かる事が多い機械知性が9割9分9厘を占めるこの艦隊にとって宙賊は非常に割の良い獲物だった
格納式の武装を主に使用し軽武装の護衛艦に偽装、ノコノコとやってきた宙賊艦隊を機械知性十八番の電子戦で圧倒し逃げられなくしてから殲滅する
こういった戦い方を多用していると二つ名がついた
≪くず鉄艦隊≫
艦隊オーナー兼旗艦艦長以外の構成員が機械知性であり、基本的に採掘業を営んでいる事からついた
そんなこんなで襲撃してきた宙賊艦隊は長距離砲撃の雨で壊滅し、その後直ぐにくず鉄艦隊がやってきて強硬接弦を敢行し損傷している宙賊艦内部に大量の制圧ドローンを流し込んで鹵獲した
その後それなりの鉱物と鹵獲した宙賊艦が3隻とその乗員やかき集めた宙賊艦の物資で保管庫がいっぱいになったので帰投する事になった
これがくず鉄艦隊の日常で有る