月を撃ち落とす魔銃使い。~適性武器がないことを理由にクビにされたけど、偶然に転移してきた現代兵器を拾ったことで、少年は剣も魔法も凌駕する力を得る~
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――時々、夢を見るんだ。
ボクはどこか別の世界にいて、そこで見たこともない武器で戦っている。
ただ、それはあくまで夢の中の物語で。目が覚めると、また詰まらない毎日が始まったとウンザリするのだった。
それでも、夢の中の光景は記憶に強く焼き付いて。
いつかあんな風に戦ってみたいって、そう思うんだ。
◆
「え、クビ……?」
「そうだよ。この唐変木」
ボク――アルフレッド・ガンナーは、ただただ呆然とした。
とあるクエストを終えて、帰路についていた時のこと。パーティーのリーダーは唐突にボクを呼びだして、そう告げてきたのだった。
こちらの意見など聞く耳を持たず。
これといった感情も、興味もないといった様子で。
「あの、でもそんな突然……!」
「突然じゃねぇよ。お前の役立たずぶりには、みんな苛立ってたんだ。適性武器が存在せず、前衛でも後衛でも中途半端。生きてる価値、ないんじゃねぇの?」
「そんな! たしかに、適性武器はなかったけど――」
――それでも、器用貧乏なりに頑張ってきたのに。
「うるせぇな。頑張ったとか、努力したかじゃねぇんだよ。冒険者稼業は結果重視の能力重視。努力点なんて存在しない、魔法学園じゃねぇんだぞ」
「…………それは……」
それ以上は、言い返せなかった。
たしかにリーダーの言う通り。ボクは誰もが持ってる【適性】というものがなく、どれも不器用にしか扱えない、中途半端な冒険者だった。
それでも魔法の基礎、錬金術の基礎、鍛冶職の基礎――その他にも色々なことの基礎は、一通り修めてきたはず。でも、どうしても凡人の域を出ない。
「分かった。ボクは、出て行くよ」
「あぁ、そうだな。清々するぜ。分かったら、さっさと失せな」
「………………」
こうして、ボクは幾度目か分からない追放処分を受けたのだった。
◆
一人で活動しようにも、冒険者稼業はエキスパート前提だ。
そして、そうなるとボクのような【適性なし】は無用な存在。貧困層出身だから、まともに雇ってもらえないし。冒険者が最後の望みだったのだけど……。
「どうしようかなぁ……」
途方に暮れていた。
曇天模様な今の夜空のように、ボクの未来は真っ暗だ。
せめて、なにかに適性があれば違うのに。そう思い、ボクは自身の生まれながらの不遇さを呪っていた。その時である。
「ん、いまなにか……光った?」
王都の中でも貧困層が住まう地域。
その剥き出しの地面が目立つ道の端に、なにかが輝いて――。
「これは……?」
駆け寄って、そこにあった鉄の塊を拾い上げた。
見たことのない形状。しかし、どこか手に馴染むような不思議な感覚。
ボクはそれを握りしめて、ほとんど無意識のうちに一部に指をかけていた。そして、誰もいない壁に向かって――――――バァン!!
「うわ!?」
その瞬間、なにかが鉄の塊――筒状になった箇所から放たれた。
なにが起きたのか分からずに、飛び出した物体が飛んでいった方向を見る。すると、木の板が張られた壁には、小さな穴が開いていた。
よく分からない。
それでも、妙に手に馴染む鉄に視線を落としたら――。
「ん、これって……?」
脳裏に、これの使い方が浮かんできた。
名称は『銃』であり、敵に向かって弾を射出する武器だ、と。
どこかで見て、経験したような光景が浮かぶ。しかし、それがどこでなのか、いつなのかも分からない。ただ、確信としてあったのは一つ。
この銃は、間違いなく。
「ボクの、適性武器……?」
聞いたことも、見たこともなかった武器。
銃という名のそれが、自分にしか扱えないという事実。
どうして今ここに、これが落ちていたのか。分からないことばかりだが、ボクはそれ以上に歓喜に包まれた。だって、これでようやく……!
「ボクも、一人前の冒険者として戦える……!」
そう考えて、もう一発。
今度は何にも当たらないように、天に向けて銃弾を放って――カチンッ!
「……って、あれ?」
軽い音がした。
そして、その理由はすぐに分かる。
「え、うそ。もしかして、弾切れ!?」
中に込める鉄塊が、不足したということだった。
「えっと……」
どうすればいいのだろうか。
銃弾が必要ということは、分かった。
でも、肝心の銃弾の生成方法が思い浮かばない。
「どうしよう、これ……」
そこで、ボクの冒険者としての道は暗礁に乗り上げ――。
「い、いや! まだだ! ないなら、他のことを試せばいいじゃないか!」
気持ちを切り替える。
ボクだって、決して無能ではなかった。
今まで魔法や鍛冶、さらには錬金術や他にもたくさんの知識をつけてきたのだ。これを今、この時に使わなくていつ使うのか!
「よし、今日からしばらく引きこもって研究だ!」
ボクは自分の頬を叩いて気合を入れる。
そして、自宅に向かって真っすぐに駆け出すのだった。
◆
――そして、数か月後。
「くそ、どうしてダンジョン上層にこんなドラゴンが!?」
一人の冒険者が、ダンジョンの攻略に挑んでいた。
しかし、その日は何もかもが異常。本来ならばいるはずのない魔物が、ダンジョンの上層に出現していた。駆け出しである彼にとっては、完全な不意打ち。
勝てるはずがない。
そう思って、その冒険者が目を瞑った瞬間だった。
――――ズガァン!!
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
「え……!?」
何かが射出され、弾けるような音。
その直後に、ドラゴンの断末魔が響き渡った。
「大丈夫ですか?」
「え、アンタは……?」
冒険者が驚き目を開けると、そこに立っていたのは一人の少年。
手には、見たことのない武器があった。
そして彼は、思い出してドラゴンを見る。
だが、すぐに息を呑むことになった。何故なら――。
「う、そだろ……!?」
そこには上半身が消し飛び、魔素へと還るドラゴンの姿があったから。
冒険者は改めて、少年を見た。すると、
「えっと、ボクは――」
その少年は名乗ったのだ。
自分の名は、アルフレッド・ガンナーだ、と。
これは、いずれ『月を撃ち落とす魔銃使い』と呼ばれる少年の物語。
その序章だった。
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