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結―ユウー  作者: 初雪奏葉
第四章:お盆と家族
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お盆と家族ー5

「――と、思うのですが、どうでしょうか? 御本人のことを考えれば、ご家族にもう少し、動いていただくべきかと思うのですが、間違っていますか?」


 オムツが既に足りなくなっていること。

 夏祭りへの出欠が確認できないこと。

 連絡をしてもなかなか動いてくれないこと。

 それら全てを含めて、どうなのか、と。

「なるほどな」

 川瀬主任は、駿介の言葉に頷き、時には相づちを打って、真剣に聞いてくれた。

 それから言った。



「それ、コージには質問したか?」



「へ?」

 その返答は、全く予想していなかった。

 予想外過ぎて、変な声が出てしまった。

 慌てて、

「いえ、していません」

 と答える。

 川瀬主任は一言「そうか」と呟き、コーヒーに口をつける。

「……?」

 質問の意図が分からなかった。

 今、たまたま、オムツがないという事態に直面したため、手っ取り早く、一番頼りになりそうな川瀬主任に質問してみたのだ。

 浩司を避けているとか、頼りにしていないとか、そんなことは考えていない。

 浩司がいたならば、浩司に質問していただろう。

「……」

 川瀬主任はなにかを考えるように、ゆっくりとコーヒーを飲み干す。

 喉ぼとけが、上へ下へと動いていた。

「……」

 それからさらに数秒、じっと待っていると、ようやく川瀬主任は口を開く。

「桐谷さんの家族の話、な」

「はい。御本人のためを思うなら、このままでは良くないと思うのですが……」

「そうだな」

 川瀬主任は、うん、と頷き、


「それは分かるけど、ご家族の問題だからな」


 さらりと、そんなことを口にした。

 そして、駿介が次の言葉を発する前に「仕方ないこともあるよ」とキッチンから出て行ってしまう。

「え、あの――?」

 呼び止めようとして、やめた。

 フロアの方で、古俣さんがまた、何事かを叫び始めていた。

 見れば、そこに滝野さんも加わり、ちょっとした騒ぎになっている。


「……なんか、マズかったかな?」


 古俣さんをなだめている川瀬主任を見て、駿介は独り言ちる。

 会話が止まってしまったのは仕方ないとしても、川瀬主任の反応は、これまでに比べると冷たい気がした。

 話を聞いてくれなかったわけではないし、実際『仕方のないこと』なのかもしれないけれど、もう少し、別の回答を期待していた。

『浩司には質問したのか?』という問いかけも気になる。

 川瀬主任にとって、気になることでもあったのだろうか。

「……いや」

 そこまで考えて、首を振る。


 ――とりあえず、目の前の仕事をちゃんとやろう!


 一度、考え始めると集中してしまうのは悪い癖だ。

 川瀬主任が古俣さんの対応を行っているのだから、残っている仕事を終わらせるか? もしくは、古俣さんの対応を代わるか? 介護職員として、行うべき業務はきちんと行わなければならない。


「昼飯、作るか」


 駿介は、よし、と気合いを入れ、昼食作りを開始する。

 桐谷さんのことはあとでも良いが、昼食の時間がずれ込むのはよろしくない。



 駿介は、不器用ながらも、じゃがいもの皮むきに勤しんだ。

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