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結―ユウー  作者: 初雪奏葉
第三章:見つめる先
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見つめる先ー7

「……?」

 眉を寄せる。

 今の例え話から、突然「そういうことなのよ」と言われても困る。

 話に一貫性がない。

 駿介が考え込んでいると、伝わっていないことを悟ったのか、田島は「えっとね」と言葉を選びながら、説明を付け加えた。


「つまりね、ここでわたしが、古俣さんに対するコミュニケーション方法を答えたとしても、それは『わたしの答え』になってしまうよ、ってことなんだけど……分かるかしら?」


「えーと?」

 分かるような、分からないような……。

 前後の話から田島の言いたいことを思案する。

 サングラスにモヒカン頭は極端だとしても――小柄な女性職員である田島に対する態度と、大柄な男性職員である駿介に対しては、反応も異なる。

 田島なりの考えを教えてもらったとしても、御利用者側も、相手によって態度が変わる。

 要は、『人間関係なのだから答えはない』ということだろう。

 それはまあ、分かるのだが、


 ――なにかこう、技術的な指導とか、ないのかな?


 理解した上で、そう感じてしまう。

 就職してすぐの頃、浩司から滝野さんへのコミュニケーション方法として、様々な技術を教えてもらった。

 どんな言葉が相手を不快にさせるのか、どんな態度が相手を不安にさせるのか。様々な指導を受けた。

 田島には、そういう答えはないだろうか。

「ごちそうさまでした」

 と、田島は空になった弁当箱の蓋を閉じる。

 手を動かしつつ、田島は言った。


「わたしは、御利用者さんと職員が、お互いにお互いのことをよく見て、一緒に答えを探していくことが、コミュニケーションだと思っているのよ」


 田島は、パチンと箸箱を閉め、それから駿介の顔をじっと見つめる。

 真剣でありながらも、穏やかな空気感は変わらず――包容力のある声音だった。

「わたしは、福祉の学校を卒業しているわけじゃないから……たぶん、テクニックに関しては、あなたたちにもう負けていると思うの。そういう『技術』って、とても大切なものだから、逆に教えて欲しいと思うくらいよ」

 でも、と田島は言う。


「でもね、コミュニケーションの本質は、そこじゃないと思うの。『誰かに寄り添って、通じ合っていくこと』が、コミュニケーションだと思うのよ」


「……つまり、技術に頼ってばかりじゃダメってことですか?」

「ううん、そういうことじゃなくて……。コミュニケーションを取る中で、きちんと伝わるように『一つの手段として』テクニックを使うことは良いと思うの。むしろ、どんどん使って良いと思うわよ? けど、本質を忘れちゃダメなのかなって、そう思うのよ」

「……」

「古俣さんへの対応で困っているのなら、今以上に、もっと古俣さんに寄り添って、古俣さんと一緒に悩みながら、答えを出していくことが大切なんじゃないかな?」

 にこりと、田島は微笑んだ。


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