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結―ユウー  作者: 初雪奏葉
第六章:滝野さんⅡ
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滝野さんⅡー7

「それではまず、現時点での情報を確認します」



 和田管理者が中心となり、話し合いが進められる。

 まず、どういった経緯で滝野さんが離園してしまったのか、和田管理者から、警察とお孫さんへ、改めて説明があった。

 実際に関わる形となった冴香、駿介、川瀬主任、そして現場にいなかったとはいえ、フロアリーダーであった浩司も、改めて、お孫さんへ謝罪した。


 その後、本題である。捜索状況の報告となる。


 川瀬主任が事業所周辺の地図を用意し、捜索終了した道路に、マーカーで印をつけていく。

「ほとんど埋まりますね」

「そうですね」

 事業所の周りはほぼ全て、印がつけられた。

「これでも見つからないとなると……。外に出たけど雨が酷かったら、どこかで雨宿りをしているとか、そういう感じですかね?」

 印がつけられた地図を見て、職員の一人がそんな意見を出す。

 常識的に考えれば、それが妥当な線ではある。

 足腰がしっかりしているといっても、限度がある。

 駿介や冴香でも、外に出れば体温を奪われるような天気なのだ。

 お年寄りが遠くまで歩いていけるとは思えなかった。

「目撃情報もないんですよね?」

「はい。ありません」

 それについては、自信を持って答える。

 後輩たちの頑張りを、浩司は口にする。

「硯さんと駿介が、外にいた人たちに片っ端から声をかけていましたが、目撃情報はありません」

「そうですか……。となると、やはりどこかへ避難して、雨宿りをしていると思うのが自然ですかね?」

 全員で地図を覗き込み、思案する。

 警察からも、基本情報として、「普段から外に出たがる様子はあったのか?」、「もし外に出た場合、行きそうな場所はあるのか?」など質問が飛ばされる。

 滝野さんの自宅は、ふれあい西家から車で二十分ほどの場所にある。健康な若者でも、徒歩で移動すれば、数時間はかかる道のりだ。

 途中にいくつも曲道があることから、認知症を持っているお年寄りが辿り着くことは困難と言えた。

 また、他の目的地があるとも思えない。

 念のため、お孫さんにも確認を取るが、自宅以外の場所を目指すとは考えにくいとのことだ。

 滝野家は、何十年も引っ越しをしておらず、滝野さんにとっての『家』は一つしかないらしい。

 普段の様子からも、「家に帰りたい」という以外に、別の場所を目指す発言は聞いたことがなかった。

 事業所から姿を消す直前も、誰かとトラブルになったとか、職員に「泊りだ」と言われたとか、そういった経緯もない。気付いたらいなくなっていたのだ。

 強いて言えば、『亡くなった旦那さんを探しに出た』という可能性があるくらいだが、もしそうであれば探しようがない。その場合、有力候補はお寺や神社になるだろうか……?


「一応、自宅方面に多く人員を割きますが、どこにいるのか分かりません。全方向、注意して探してください」


 結局、そう結論付けられる。

 四六時中一緒にいても、分かることなどたかが知れている。

 ひょっとすると、滝野さん自身も、何故自分が外にいるのか、分からなくなっているかもしれないのだ。

 本人が忘れていることを、想像だけで把握するのは無理がある。

 ご家族を含め、滝野さんをよく知る人間がこれだけ集まっても、手掛かりと呼べるものは出てこなかった。


「では、今後についてですが――」


 そこからは、事務連絡となる。

 職員以外に集まってくださった方々へは、和田管理者が説明し、動いてもらうことが決定した。

 警察からは、防災無線を使って地域住民の皆さんにも意識してもらうことや、二次遭難を引き起こさないため、二人一組となり、防寒具をきちんと活用することなど、細かい点を注意される。

 そうして、一通り、段取りが組まれると、


「では皆さん、よろしくお願いします!」


 緊急会議は解散となる。

 有益な情報を得られなかった以上、集まっていても仕方がない。あとは、人海戦術で探し出すしか方法がない。

 時間との闘いになる。

 それぞれペアとなる人物とともに、事業所を出発する。

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