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結―ユウー  作者: 初雪奏葉
第二章:犬と後輩
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犬と後輩ー2

     ◆



 御利用者に昼食を出し終え、浩司たちはキッチンに集まっていた。

 ちらちらと御利用者の様子を見ながら、何度も時計を見上げる。

 時刻は既に十二時半を回っている。


 ――遅すぎる……。


 浩司はぐっと唇を引き締める。

 いつになっても、駿介が帰って来ないのだ。

 連絡すらもない。

「彩峰さん、やっぱり繋がりませんよ」

「そっか……。なにしてんだアイツ?」

 浩司の焦りは増す。

 これで五度目の電話である。

 一時間以上、どこかで時間を浪費していることになる。

 事故にでも合っているのか、もしくは、なにかトラブルに巻き込まれているのか……ひょっとしたら、途中で体調が悪くなり、どこかで動けなくなっているのか。

 悪い方、悪い方へと思考が傾いていく。

「コージ」

「あ、主任」

 二階から、小走りで川瀬主任が戻って来た。

 川瀬主任は、和田管理者に状況報告をしてくれていた。

「和田さんは、なんて言っていましたか?」

「木澤さんの家に電話してくれるって」

「そうですか。ありがたいです」

 こういう時、和田管理者は頼りになる。

 現場職員は、送迎時くらいしかご家族とは会わないのだ。

 現場から電話をしたとして、できることは状況確認だけだ。

 それぞれの家庭の細かい事情や、緊急時の対応などは、和田管理者の方が余程、熟知している。

 木澤さんの家でなにかあったのなら、自分たちよりも和田管理者に電話してもらう方が確実だった。

「そう言えば」

「ん?」

 冴香が口を開く。

「木澤さんの家って、可愛いわんちゃんがいますよね」

「それが?」

「迎えに行ったら、わんちゃんが外に出て行っちゃって、みんなで探してる、とか……ないですかね?」

「は?」

「冗談ですよ」

 場を和ませようとしてくれたのだろう。

 低い声で返してしまったが、冴香も、目が笑っていない。

「……」

 落ち着かず、浩司は狭いキッチンの中をうろうろと歩き回る。

 本当に、どうしたのだろうか。

 木澤さんの家族からも連絡が来ない点を考慮すると、道中でなにかが起こったと考えるのが自然だ。

 簡単に想像できるのは、やはり、事故だ。

 なにか、重大な事故に巻き込まれたとするのなら、連絡がないことにも説明がつく。

 単に、道に迷ったとか、どこかに車をぶつけてしまったとか、その程度のことであれば、すぐに連絡が来るはずだ。


 何故、電話の一つもないのか。


 それが一番の懸念事項だ。

「もう一度、電話を――」


 トゥルルルル……


 と、受話器を取りかけたところで、逆に電話がかかって来た。

 浩司は二コール目も待たずにすぐに出る。

「はい、ふれあい西家、彩峰と申します」

 すると、


〈すみません、護人です!〉


 いつもの、大きな声が耳元で響いた。

 浩司はすぐに「なにかあったのか?」と問いかける。

 声を聞く限りは元気そうだが、事情を聞くまでは安心できない。

 実は、と話し始める彼に、「どうした?」と聞き直す。

〈あの、すみません、実は――〉

「ああ。なんだ?」



〈犬の散歩に行ったら、道に迷ってしまいました!〉



「…………………………ん?」

 聞き間違いだろうか。

 意味が分からない。

「なんだって?」

 もう一度、説明を求める。


〈犬の散歩に出たら、道に迷ってしまいました! あと、連絡用のスマホを壊してしまいました! すみません!!〉


 やはり、同じ回答が返って来た。


 この男は、一体なにを言っているのだろうか?


 浩司は真面目にそう思った。

 駿介は木澤えい子さんを迎えに行くために外に出たのではなかったのか。

 それがどうして、犬の散歩をしていて、挙句あげく、道に迷っているのだろうか。

 というか、スマホを壊したとはどういうことか。あと、そうであるなら、今、どこから電話をしているのだろうか。

 聞きたいことが多すぎて、頭が痛くなってくる。

「駿介、落ち着いて、分かるように説明してくれ」

〈あ、はい。すみません〉

 駿介は受話器の向こうでふうううと深呼吸をして。


 それから、事の経緯を話し始めた。

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