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前日談

 


 僕の最初の母さんが死んだ。僕が四歳の時のことだ。



 父さんが僕を知り合いに預けて外出することが多くなった。僕が六歳の時のことだ。



 父さんが家に女の人を連れてきた。僕が七歳の時のことだ。



 父さんと僕と女の人で能登へ旅行に行った。僕が八歳の時のことだ。



 もう何度も一緒に食事をしたあの人が僕の二人目の母さんになった。僕が八歳の時のことだ。 

 

 父さんが二回目の結婚式を挙げた。僕が八歳の時のことだ。

 

 

 新しい母さんに僕に兄弟が出来たことを聞かされた。僕が九歳の時のことだ。

 

 

 母さんのお腹で、赤ちゃんが動いた。どうやら弟らしかった。僕が九歳の時のことだ。

 

 

 父さんが死んだ。僕が九歳の時のことだ。

 

 

 母さんが倒れた。僕が九歳の時のことだ。

 

 

 僕の弟が産まれる前に死んだ。僕が九歳の時のことだ。

 

 

 母さんが壊れた。僕が九歳の時のことだ。

 

 

 母さんが僕に異常なまでに構うようになった。僕が九歳の時のことだ。

 

 

 母さんに初めて殴られた。僕が九歳の時のことだ。

 

 

 母さんが僕を父と間違えるようなった。僕が九歳の時のことだ。

 

 

 僕は母さんに抵抗することをやめた。僕が九歳の時のことだ。

 

 

 母さんのことを受け入れるようにした。僕が九歳の時のことだ。

 


 母さんがまた笑うようになった。僕が九歳の時のことだ。



 僕はもう普通に笑えなくなっていた。僕が九歳の時のことだ。



 とうとう僕が壊れた。僕が十歳の時のことだ。







 僕と母さんは壊れたまま、まだ生きている。僕はもう十二歳になっていた―――。







 

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