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おとぎ話のような日々をあなたと  作者: 吉里 ユウ
とある灰かぶりと腹ペコ魔法使い
7/15

サンドラ家改善奮闘録 その1

訪問ありがとうございます。

世間では風邪やらインフルやら新型肺炎やら花粉やら、心配事が盛りだくさんですね。温かくして、滋養のあるものを沢山とって、健康に気をつけてお過ごし下さい。外出を控えるついでの暇つぶしになれば幸いです(笑)

サブタイトル直すの忘れていました。失礼しました。


「綺麗な家、温かいご飯、清潔なシーツ。それらが当たり前のようにあるのは、相応の努力を誰かがしてくれているからです。それがいかに大変な事なのか、まずお義姉様たちにはそれらが当たり前に享受出来る事の有り難さを学んでもらおうと思います。」


朝食の席を片付け、私は義姉2人と共にお屋敷の廊下へ立っていた。彼女たちに合うサイズの運動着に出来そうな物がなかったので、一番シンプルな色の服を選び、フリルを全て毟り取った。ズボンは無かったので、スカートを真っ二つに裂き、ざっくりと切れ目を縫った後、足首で縛った。その際義姉2人が何か言いたそうにこちらを見たが、若干の憐れみを含んだその視線ごと無視した。ちょっとばかり裁縫が不器用で、縫い目が歪んでる上に深めに指を刺して血が出たけれども、まあいいだろう。

しかし、これで本格的な運動は無理そうだ。やはり今度ちゃんとした動きやすい服を買おう。うん、買いますって。だから、派手に血がついた裾を嫌々確認するのはやめてもらえませんかね。


とにかく、だ。

私なりに一応考えたのだが、彼女たちがああいった性格なのは、(勿論個人の性格差もあると思うけど)甘やかされて育ったのならある程度仕方ない。人間習ってない事は出来ないっていうからね。

だからと言ってやっていい事と悪い事はある。


彼女達には根本的に思いやりが足らない。

初めから相手の立場や気持ちを想像出来て思いやる事が出来れば良いのだが、出来てないから今に至る。想像出来ないのであれば体感して分かってもらうしかない。

ないのだが。



「きゃあ!水が冷たいわ!」

「こんなので洗濯なんて無理よ!わたしたち風邪ひいちゃうわ!」


イラッ


「雑巾なんて汚いもの触れないわ!」

「そうよ!ネーアたち病気になっちゃう!!」


イライラッ


「ムリ!薪なんて重すぎよ!」

「そうよムリよ!マイアたちスプーンより重い物持てないもの!」


イライライラッ


「洗濯も無理。雑巾がけも無理。薪運びも無理。あなた方より小柄な私がお手本を見せたというのに、あなた方が出来ないわけがないでしょう。」

「無理よ!寒いし冷たいし汚れるじゃない!そうだわ、辞めさせたメイドたちをまた雇うか募集すれば良いじゃない。」

「そんな金ウチにはありません。今後雇うにしても半年ほどは金銭的余裕がないので無理です。というわけで、自分たちで頑張りましょう。」


イライライライラッ


「イヤよ!なんで私たちが掃除婦の真似事なんて!そうだわ、今まで通り灰かぶりがやれば良いじゃない。今までイジワルして悪かったわ。これからはイジワルしないし、お仕事も邪魔したりしないわ。」

「そうよ!ちゃんと暖かい部屋とベッドも使って良いわ。だから今まで通り宜しくね。勿論私たちも我慢して慎ましく過ごすわ。おうちの為だもの。ちょうどいい作業分担よね。」


プッチーン


「そういう問題じゃねぇだろうがぁぁ!!」


ダァンッッ!!!


私が手にした箒の柄が床を打つ音が響く。


初めは「甘やかされたお嬢ちゃんが出来るなんて正直思ってないから、何か一つでもさせて大変だって事を学べば良いか」なんて思っていたんだけと、義姉たちの嫌だコールに私の堪忍袋の尾が切れた。


「衣食住の有難さを実感してもらおうと思いましたが、それ以前の問題ですね。まずはその性根を叩き直す所からはじめましょうか。」

「な、なんでよ!せっかくわたしたちが譲歩してあげてるっていうのに・・・」


バキィッッ!!!


「っ、ひっ・・・」


私が近くの壁に拳で穴を開けたところで私が怒っている事に気がついたのか、漸く義姉達は大人しくなった。


「イヤだ?譲歩してあげる?・・・まだ勘違いしているようだから言っておきますが、この家の実権は私が握ることとなりました。つまり譲歩するのは私であって、あなた方ではない。私の言葉を拒否するのであれば、今すぐ家を出て行ってもらって構いませんよ。」

「ひど・・・」

「酷くはありません。先ほど説明した通りです。それとも自分の足が動かないのであれば私が人買いを呼びましょうか?」

「なっ・・・そっ・・・」

「もう一度聞きます。やりますか?やりませんか?」



♢♢♢♢♢



「だからって、なんで走らなきゃいけないのよおぉぉ!!」

「いらん口ごたえをするんじゃあない!!答えは謝罪か「サーイエッサー!」以外は認めんと言っただろうが!!とっとと走れ!!このウスノロどもが!!追いついたら追加メニューをプレゼントしてやるぞ!!!」

「ひいいぃぃ!!」

「返事ぃ!!」

「「さ・・・サーイエッサー!!・・・ってなんなのよぉぉぉっ?!」」


澄んだ冬の空の下に私の怒号と義姉達の悲鳴が響く。

現在は家事を一旦中断して、彼女たちと庭を走っている。

何も、考えなしに彼女達を追い立てているわけではない。


まず、死ぬほど疲れる思いをしたら家事の方がマシって思うんじゃないかなという事。今のままじゃ全く言う事ききそうにないからね。

次に、体力づくり。今まで運動してなさそうなあの体型では、そもそも家事をする為の体力が無いだろう。決して狭くはないこの家をメイドさんを雇うまでは自分達だけで最低限保たなければならない。私だけでは手が足りないだろうから、彼女達にも大いに頑張ってもらわなければならない。

最後に、やっぱり太っているのは体に悪いだろうという事。先程散々脅しはしたが、別に彼女達を何処かに売り飛ばして清々したいわけでも、不幸になって欲しいわけでは無い。将来的に彼女達もちゃんとした所にウチから嫁に出すだろうから、なるたけ平均的な好まれる体型にしといた方が彼女達の為にもなるだろう。

単に苛立ったからだけじゃなく、これでも色々考えていたのである。多少私怨、というか先程の苛立ちも入ってる事は否めない。まあ、私も聖人君子じゃないし、人間ってそんなもんだよね。

そういうわけで、基礎体力作りを兼ねたランニングである。叫ぶ事で複式呼吸も鍛わって一石二鳥。やったね。

軍隊風訓練なのは舐められない為と、あと正直性根の叩き直しなんてどうして良いかわからなかった為である。私の武道の師のように威厳があれば良かったのだが、どう足掻いてもこの体は10代の少女。しかも義姉達は元々この体を虐めていたのもあって、この姿を基本舐めてかかっている。これではいかんと悩んだ結果、咄嗟に脳裏に閃いたのが「ブートキャンプ!」だったのだ。舐めてかかろうなんで考えられなくなるくらい徹底的に扱こうと思う。


「何故走らされているか分かっているのかこの愚図ども!!」

「ひぃ、はぁ、ひぃ」

「答えないならもう1週追加だが良いのか?!」

「そう、じ!掃除を、イヤだ、って言ったわ!」

「さ、皿洗いも!」

「問題はそこじゃ無い!反省が足りないのでもう一周!!」

「うそ?!あ!あ、あなたに、おしつけたから?!」

「もういじめないって、言った、じゃない!!」

「もう一周!!!走るか売り飛ばされるか選べ!!!」

「「いやぁぁぁぁ!!!!!」

「返事ぃ!!」

「「さ、サーイエッサー!!・・・ってだからこれなんなのよぉぉぉっ?!!」」


とはいえ、いきなり本格的な運動は無理だろうから、今日は「競歩の方がマシ」くらいの速度で動けなくなるまでランニングである。というか彼女達の自重でいきなり激しい運動をしたら膝とか壊す。身体に負担をかけずに負荷をかけるメニューも考えておかないとなぁ。


なんて考えている間にペースダウンした彼女たちを追い立てる為に、私は箒の柄を握り込んで駆け出した。


義姉たちの根性があまりに不甲斐ないのでブートキャンプを開始したよ。

あとエラちゃんは裁縫が壊滅的!

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