表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとぎ話のような日々をあなたと  作者: 吉里 ユウ
とある灰かぶりと腹ペコ魔法使い
6/15

寝起きドッキリにしては酷過ぎない?! その5

皆様あけましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いします。


さて、問題の継母様と娘たち。

粗方台所の片付けが済んだ頃にようやく目を覚ました。呑気なものだね。

3人は身を寄せ合って警戒も露わにこちらを睨んでいる。流石に学習能力はあったのか、起き抜けにギャンギャン喚かれなくて良かった。

掃除用の箒を片手に私は三人に向き直った。


「・・・あ、貴女、私達をどうするつもり?」

「一つお聞きしますが、あなた方は普段から我が家の金を湯水の様に使っていますね?我が家は一応貴族ですが、そんな散財がいつまでも続くとお思いですか?お金が無くなったらどうするつもりだったんです?」


継母様が固い声で問うてくるが、私はそれに答えず逆に聞き返しながら机に置いてあった物を放り投げた。バサリと重たげな音を立てて床に落ちたそれは、先程ジョセフさんに持ってきてもらった一枚束の冊子。彼女たちが貴族の名前でツケていったお買い物リストである。


「そちらは貴女方が我が家の名前で買い物をした請求書です。未支払いの物が半数以上。我が家がそれらを払い切れるかは現状では五分五分です。もし払えなかった場合、支払いは如何するおつもりですか?」

「そ、そんなの貴族なら所領があるんだから、税を上げて絞り取れば・・・」


ダァン!!と響く音は、私が床に箒の柄を床に打ち付けた音である。巫山戯た回答した義姉その1が黙る。


「おい、そのデカイ頭は飾りか?ーーおっと、失礼。ええと、税を掛ければその分領民が飢えます。不満が溜まった領民に領を出られたらどうします?領は荒れますよ?貴女方にそれを何とかできるのですか?万が一まとまって反乱を起こされたら?金もなく護衛も雇えないのに、誰が貴女方を守ってくれるんです?」


そんな事を考えた事もなかったのか、3人は顔を赤くしたり青くしたりして黙り込む。


「じゃ、じゃあ何処かからお金を借りればいいじゃない!」


おぅ・・・義姉その2からもっと巫山戯た回答が飛び出してきた。


「我が家の財政は現状そのリストを返すのでギリギリです。つまり借りた金を返すアテはありません。そんなところに金を貸してくれる人は基本いません。いるとしたら裏がある場合だけです。そんな人達に借ります?そういった人たちは後ろ暗い事に足を突っ込んでいたりするらしいので、何が起こっても知りませんよ?聞いた話では、払いきれなかった分として家を差し押さえたり、酷い時は人買いに売るとか。」

「そ、そんなの私たちは貴族よ。貴族に手を出すなんて馬鹿なことする奴いないわよ。」


「脅かしても無駄よ」と義姉その1が鬼の首を取ったかのように踏ん反り返る。


「もし貴女が粗末な服を着せられて、宝石も取り上げられて、髪や顔を泥で汚されて、たった一人で誰も知らない場所へやられたら、誰が貴女を貴族だと証明してくれますか?」

「人を、知り合いを呼んで来てもらえば分かるもの!簡単に証明出来るわ!」


どうだとばかりに義姉その2も胸を張る。「そうだそうだ」と義姉その1も囃し立てる。私は呆れて溜め息を吐いた。


「貴女を騙した悪い奴が、証人を呼んでくれるとでも?」

「「あっ・・・。」」


その可能性を全く考慮していない義姉2人を半眼で見遣ってから、私は淡々と言葉を続けた。


「貴族としての身分を証明出来なければただの奴隷ですからね。良い主人に会えれば良いですが、非合法ですよ?碌な主人にしか会えないんじゃないですか?貴族の女の子がお遊び感覚でいびられていた私でも碌々食べられなかったんですよ?非合法の主人なんてきっと碌でもないですよ。一日にパンが一切れ貰えたら良い方じゃないですか?何も与えられず、死ぬまでこき使われるかも知れませんね。病気になったら物のように捨てられるかも。あぁ、死んでも困らないという点では、実験や拷問が好きな変態に売られないといいですね?爪や皮を剥がれてしまうかも。体の中から腐り落ちるような薬を飲まされるかも?内臓や目玉を買うコレクターもいるそうですよ?若い女性の瞳や髪は、高く売れるかもしれませんね。上手い話には裏があるんですよ。手を出すのは自由ですが、自己責任でお願いします。そのような事にサンドラ家は一切関わりません。」


姉達は真っ青な顔で黙り込んだ後、泣き出してしまった。年頃の娘たちには少し怖い話だったかな。まあ、でも良い薬になったろう。


「・・・さて、ここからが本題です。」


話の間中、固い顔で黙っていた継母様に向き直る。先程の話、早い段階で危機感を覚えていたようだから、頭の回転は悪くないのかもしれない。まあ、これからする話に生かせるかは分からないけど。


「ジョセフさ・・・こほん、えっと、ジョセフに聞きましたが、現在サンドラ家の当主として采配しているのは継母様、あなためすね?」

「そうよ。未成年の貴女に口を出す権限は無いわ。」


時間を置いて少し落ち着いたのか、継母様が胸を逸らして私の前に立つ。組んだ腕の上に胸が乗るって、くそぅ、羨ましくなんか無いんだからな!


「確かに現在は継母様が采配をされている事になんの問題もありません。私がまだ未成年ですからね。」


私は内心の動揺を押し殺し、その言葉にうんうんと頷いてみせる。素直に賛同した私に持ち直した継母様が訝しげな顔をする。


「ですが、代理ですよね?」


その言葉の意味する所が分かったのか、今度こそ継母様の表情が引き攣る。私はにっこりと微笑みながら、まだよく分かっていない義姉2人にも分かるように続ける。


「嫡男が産まれてない以上第一継承権は私です。お義姉様たちにはサンドラ家の血が一滴も流れていませんからね。ですが、次代の私が未成年の為、現状では継ぐ事が出来ないので、継母様が代理として立って頂いてます。そのお継母様はあくまで私が成人するまでの中継ぎです。私が成人すれば余程の事がない限りは私に資産運用の権限が戻ってきます。本来ならばあと3年程ですね。その前に私に権限を戻す方法があるとしたら、如何しますか?」


継母様が目に見えて狼狽する。やっぱり知ってたな。

要は違う後ろ盾を得れば良いのである。地位ある人ならば誰でも良いが、大抵親族にお願いするらしい。正直サンドラ家の親戚なんて知らないし、エラちゃんがこんな目に遭っていた事から、あまりアテには出来ない。そしてサンドラ家と付き合いのある後ろ盾になってくれそうな貴族なんてもっと分からん。状況を逆手に取られて言いなりなんて以ての外だし。今回はこの手の方法をとるつもりは無いが、そんな事彼女たちには判るまい。要はハッタリを効かせた脅しである。


「貴女方にはいくつかの選択肢があります。今までの生活を悔い改め、私の構成プログラムを受けつつ引き続きこの家で暮らすか、修道院にでも入るか、新しいパトロンでも探すか。でも、最後の話には条件があります。我が家を傾けておいて、このままおめおめと再婚はさせませんよ。使った金額全てとは言いません。半分をサンドラ家に返して下さい。それからなら自由にして頂いて構いません。」

「なっ・・・」

「ヒドイ!!」

「人様の家を乗っ取り人様の金で放蕩三昧。挙句そこの娘を虐げて。どちらが酷いかは明白だろうが?!あぁ?馬鹿も休み休み言えよ?・・・こほん。警さつ、はないか。えっと、どこかに訴えるのは・・・おススメしません。被害者という事で逆に訴えます。そしてその後は絶対に許しません。どんな手を使っても目に物を見せますので。ちなみに二つ目の修道院は入ったらどんなワガママお嬢様も敬虔な修道女になるしかないというお墨付きの場所を用意しています。さて、どれが良いですか?」


3人は悔しそうに唇を噛んでこちらを睨んでいる。

正直腕にモノを言わせて追い出しても良いのだが、逆恨みされても、これから使うつもりのサンドラ子爵の名を使って迷惑をかけられるのも困るし、何処かで落ちぶれられてるのは寝覚めが悪い。


「では、一つ目という事で。トレーナーは私が勤めますので、よろしくお願いします。」


彼女達には私の心の平穏とサンドラ家の名誉の為に是非とも更生してもらおうと思う。

これから末永く宜しくするかもしれない相手なので、今更だが友好的に微笑んでおいた。


片手に打ち付けた箒の柄が立てた音が、部屋に響いた。

笑ったのに、3人は青ざめて身を寄せ合った。

継母と義姉2人に現実を突きつけたよ。

次回からは3人を更生していくよ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ