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おとぎ話のような日々をあなたと  作者: 吉里 ユウ
とある灰かぶりと腹ペコ魔法使い
3/15

寝起きドッキリにしては酷過ぎない?!その2

時代背景とか考証は適当です。

ゆるーい設定ですので、この時代にアレがないとかコレがあるとかは気にしないで下さい。



はいかぶり?

配下ぶり?

ハイカブリ?

灰かぶりってあれですか?

シンなんとかデレラさんですか?

気の強そうな女性と暖炉で寝てる灰まみれの少女。

誰でも一度は聞いたことがある。


「・・・うそでしょ?」


まさかのまさかで、あのシンデレラ?

この子が?って今は私か。

てことは、さっきの美人さんが継母さん?

話の通りなら娘が二人いるの?

いやでも「灰かぶり」は蔑称だったから、同じように灰まみれの下働きの女の子を見てそう呼んでいるだけかもしれない。

あの美人さんが継母かどうかも分からないし、自分の置かれた状況を確認しないと動けないな。


「これは色々と確かめないといけないかな。でも、まずは…」


とりあえず掃除と朝ご飯の支度だったか。

一刻がどれくらいかは分からないけど、ご飯抜きは困るので急がなければ。肩身の狭い灰かぶりは大変だな。って、私の事か。



台所は寝ていた場所の隣だったので、すぐに見つける事が出来た。

先程見つけた水甕のある部屋である。

着火は諦めた。隣の暖炉に燻る最後の炭があって良かった。

火をつけるのに少し手間取ってしまった。あまりのんびりはしていられない。

置いてあった野菜とベーコンをみじん切りにして半分をスープ、半分をオムレツに。調味料が分からなくて焦ったが、ベーコンが塩辛かったので助かった。しかし現代人からすると味がドシンプル。キューブコンソメって偉大だったんだなぁ。

ベーコンを炒めた油に粉微塵に切った野菜(少しだけ避けて置いた)と細かくしたチーズを入れて軽く混ぜオムレツの上へかけてソースにした。


この時代にある料理なのか分からないが、まあ食べられなくはないだろう。

パンは置いてあったので、それを切って軽く炙る。

即席にしては、まあまあそれなりに出来たのではなかろうか。

棚から取り出した綺麗なテーブルクロスを掛けた上に、皿を並べていた時に響いて来た足音と騒がしい声。複数聞こえるのはさっき言ってた娘さんだろうか。

何とか間に合ったようだ。

私が最後のカトラリーを置いたのとほぼ同時に、扉が勢いよく開けられる。


「そろそろ一刻よ!約束通り食事は抜きに、ってあら?」

「お待たせしました。」


継母様ーーかどうか分からないので、美人さんと呼ぼうーーが言葉に詰まった隙に、言葉を被せる。

間に合うとは思わなかったか?忙しい社会人の時間の使い方を舐めるなよ。

ちょっとドヤァな気分に浸りながら美人さんとその後ろの娘さん達を観察する。


美人さんはさっきは突然の事であまりじっくりと見ることが出来なかったが、改めて見るととてもお美しい。

豊かに波打つブルネットの髪とダークブラウンの瞳。同色の髪と瞳はシンプルな色合いながら、どこかエキゾチックで妖艶な雰囲気を漂わせている。体は出る所は出て凹むべき所はくびれている魅惑のボディ。痩せすぎでないところがまた良い。不思議と品を損なわない深紅のルージュで微笑まれたら、女の私でもクラリと来そうである。

グローバル化が進んだとはいえ、そもそも西洋の方とは日本で普通に生活していてはまずお目にかかれない。ましてやハリウッド女優もかくやというレベルの美女!眼福眼福。有難や有難や。これは世の男性が軒並み引っかかっても仕方ない。

こんな美人の娘さんなんて眼福以外の何者でもないじゃん。


・・・なんて思っていた瞬間が私にもありました。

残念ながら、その娘達は美しいお母様の遺伝子を受け継いで同じように美し・・・くはなかった。


どちらも母親譲りのブルネット。瞳は母親が茶系統なのに対し、娘達は明るい青。この体も薄い水色なので、青系の瞳は父親譲りなのかな。見た事無いけど。

そんなことより問題は体型と肌だ。

ふくよかな体がドレスを押し伸ばして布地が可哀想な事になっている。洋服好きな友が見たら嘆きそうだ。二の腕はなにかこう・・・そう、ハムだ。ボンレスだ。贈り物で喜ばれそうな厚みがそこにはあった。腹周りは言うまでもない。この体が貧相なのもあるが、前後左右に2倍はありそう。


バランスを考えず好きに飲み食いしているのだろう。暴飲暴食に合わせて肌も荒れている。それを化粧で隠そうとするものだから、より肌荒れを引き起こしている。服もパステルカラーにフリルなんてつけてるものだから、より膨張して見えている。


スペシャルな遺伝子は半分しか受け継がれないとはいえ、半分はあの美女の遺伝子を持っている筈だ。(もし、かの有名な話と同じで異母姉であるならば)私の体を見るに(この体が100%母似でない限りは)未だ見ぬ父の遺伝子も悪くない筈だ。・・・何故、ああなった。正直、美人さんが連れてこなかったら血の繋がりを疑うレベルだ。似てる似てないとか判別できるのは色味くらい。

あぁ、勿体ない。美人さん譲りのブルネットが泣いている。


と、そこまで考えたところで、娘達が痺れを切らして声を上げた。


「どうしたの母様ぁ?早くご飯食べましょうよぉ。マイアお腹空いちゃったぁ。」

「でもマイア、灰かぶりのお料理よぉ?ネーア達はか弱いからお腹壊しちゃうかもぉ。」


おぅふ。

なんか色々聞いてるのが辛い。

うん、性格も大体想像通り。

なんていうか、もう起こりうる最悪の事態だわ。

美人さんが甘やかすのか、育児が苦手なのか。

両方か。

娘達の少し吊り目気味の大きな瞳とぽってりした唇は、虐げているもの特有のニヤニヤとした嫌な形に歪められている。表情筋がこういった事にとても慣れている様子だ。

学生の頃も社会人になってからも何人かこのタイプに出会ったことがあるが、人を蔑んで喜ぶなんて端的に言って虫唾が走る。

直接的にどうこう出来ないので、文具(自前)を破壊しながら会話していると大抵どこかに行ってくれる。・・・のだが、今回は状況が分からない為グッと堪えた。破壊するものもないしね。


「ちょっとぉ、聞いてるの?灰かぶりぃ。ネーアはこんなもの食べられないって言ってるのぉ。パンもこんな固くて味気ないのは嫌よぉ。ブリオッシュを準備して頂戴。」

「ブリオッシュ!マイアもそれがいいわ!今日はブリオッシュがいいわ!母様今日は食べに行きましょう?」


おい、人に作らせた食事を前に外食の算段とか、この家の教育方針どうなってんの。あれか、元気でいれば二重丸ってやつか。


「マイア、それは先日食べに連れて行ったでしょう?ご飯くらい大人しく食べて頂戴な。」

「イヤよぉ!お野菜は甘くないし嫌いだものぉ。マイア食べない!」

「ネーアも嫌だわぁ。ご飯が全部甘かったらいいのにぃ。」

「んもう、あんな甘ったるいものの何が良いのかしら。わかったわ。今日のお出かけのついでに寄りましょ?でも灰かぶりがまだ出掛ける支度もしてないの。とりあえずはこれを食べて頂戴。」


娘達の姦しさに、フリーズしていた美人さんが漸く動き出した。ため息を吐く様も絵になる。けど、簡単に教育を諦めないで欲しい。せっかく作った朝御飯なんだし食べて欲しい。あと、流れるようにディスらないでほしい。


つらつらと目の前の親子を見ていてもしょうがないので、先に席に座って食べようとした時の事だった。


ベチャ・・・


頭から良い匂いの液体が降ってきた。

手元から立ち昇る匂いと同じ匂い。

考えるまでもない。私の作ったスープである。


「ネーアたちより先にご飯をたべるなんて、とぉってもお腹が減っていたのねぇ。だから手伝ってあげたのよぉ?」


顔を向けると、隣に立ったネーアと言っていた方が空のスープ皿を持って笑っていた。

親子が問答をしていたおかげで火傷する程では無かった。しかしボタボタと体を滑り落ちるスープとその具材を見て、急速に心が冷えていく。


「まあ、図々しいこと。お前はいつから私達と同じ席につけると思ったの?おまけにそんなにがっついて食べるなんて、なんて卑しいの。おぉ嫌だわ。」

「そうよぉ、マイアたちより先に食べるなんて!でも、ネーア優しいわね。そうだ、マイアも手伝ってあげるわぁ!」


美人さんと残りの娘マイアもこちらを見て、次々と言葉を浴びせる。そしてマイアは同じ事をしようとしたのだろう。わたしの目の前のオムレツの乗った皿に手をかけた。


それを見た時、私の中で何かが切れる音を聞いた。

【あらすじ】

継母、娘さん達と初邂逅。シンなんとかさんである可能性が浮上したよ。

言われた通りご飯作ったら頭からスープをかけられたよ。かっちーん。

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