表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとぎ話のような日々をあなたと  作者: 吉里 ユウ
とある灰かぶりと腹ペコ魔法使い
2/15

寝起きドッキリにしては酷過ぎない?!その1

前回が突貫工事(苦笑)だったので、書き直したい所が山盛りです。

これから本格的にシンデレラ達が動き出します。感情移入してもらったり応援してもらえるような、愛されるキャラクターになれると嬉しいですね。頑張ろ(*'ω'*)


兄貴の存在を忘れていたので書き足しました。ごめんよー兄貴。


「―――の!―――っ!!」


女性の声が聞こえる。

遠くて何を言っているのか分からないが、どうやら怒っているようだ。離れてはいるが怒りの声音が耳に障る。早く誰か返事をしてやればいいのに。


フッと、浮上する意識に従って目を開けると、そこには石の天井が。

・・・え、ちょっと待って理解が追い付かない。


「いぃっっづぅ?!!!」


起き上がろうと体を捻ると、激痛が走った。

脳裏に直前の出来事がフラッシュバックする。



残業終わりの帰り道。

少年。

トラック。

物凄い衝撃。

悲しさ溢れる走馬灯・・・は置いといて。



まさか、とんでもない大怪我をしたのだろうか?

骨折?欠損?

全身にぶわっと冷や汗が出る。

慌てて視線だけ巡らせてみるが、ひとまず、薄汚れてはいるものの目立った外傷も、巻かれた包帯やギプスなども見当たらなかった。

ただ、いつのまにかグレーのワンピースを着ている。

病院着?にしては前開きの作りになっていない。腰をリボンで縛るタイプのシンプルなものだ。

誰が着替えさせたのかも気になるが、目下の問題は怪我の度合いだ。

もう一度恐る恐る体を動かすと、


「ゔっ・・・おおぉぉおぉ・・・」


再び節々に激痛が走る。

ヤバイ何これ痛い。見えないだけで実はやっぱり骨くらい折れてるんじゃないだろうか。思わず浮かんだ涙を拭う事も出来ずに身悶える。じんじんとした痛みはジッとしていると何とか我慢出来るくらいには引いていった。

しかし寝転んでいるだけでは何も解決しない。どうにか人を呼ばないと、最悪這いずる覚悟で体を動かすと、先程動かした場所の痛みが少しだけマシになっている気がする。


・・・これはもしかして体が物凄く固まっているだけなのでは?


ゆっくりゆっくり慎重に可動域を増やし、時に唸り声のような呻き声を上げながら、30分程かけて何とか半身を起こせるようになった。

改めて辺りを見渡せば、周りは同じ石の素材で作られた小さな箱のような部屋?だった。私が半身を起こしても頭は上につかないので、石棺にしては大きい。横一方だけ開いていて、金属の柵越しに洋風の部屋が見える。床には僅かな温もりを残す炭と灰の山。

体はまだ引き攣るように痛むが、とりあえず石の床から見えた部屋へと出る。


「・・・暖炉?」


部屋へ出て見て振り返ると、私がいたのは暖炉だった。石棺だったとかいうオチじゃなくて本当に良かった。でも暖炉に寝かすって、燃やすぞって事?火力足らない気もするけど、出来るか実行して欲しくはない。・・・家人とエンカウントする時は最大限の注意を払おう。

人1人入れる暖炉って初めて見たな。そして、部屋が思ったより大きい。中央に大きなテーブルとそれを囲む高そうな飾りの彫られた椅子。壁や暖炉の上には綺麗な皿や絵が飾られている。こちらも如何にも高そう。うん、近付かないようにしよう。


動転していて気づかなかったが、部屋はかなり寒い。冬のような室温だ。その為石の床はとても冷たく、そこに寝転んでいた私もかなり冷えていた。こんな中で寝てたらそりゃ体に不調も出るよね。


体を伸ばせるようになったので、一通り動かしてみる。まだ体は軋むけど、一先ず骨に影響はないようで良かった。ワンピース下も一応確認してみたが、血の出ている箇所も青痣になっていそうな場所もない。

・・・トラックに跳ねられて無傷って、それはそれでサイボーグ・・・いや、私は可憐な成人女性だ。その問題は今は置いておこう。


しかし、なんでまたこんな所に?

病院ではないし、死体安置所でもない。多分。

誰かの家のようだが、こんな家の知り合いはいない。


部屋が薄暗いので手近なカーテンを開ける(重厚!厚みが凄い)と、荒れた庭とその奥にどう見ても日本家屋ではない街並みが朝靄にけぶっていた。

・・・成る程分からん。


首を傾げるとハラハラと灰が落ちた。

振り返って見ると私が歩いた床は白い足跡が点々とついている。成る程、服がグレーだと思ったのは灰にまみれていたからだ。腰を締める為のリボンは恐らくモスグリーンだったのだろうが残念などどめ色になっている。

私に暖炉に突っ込んで遊ぶ趣味や夢遊癖はなかったはず。意味が分からないが、現状で灰にまみれているのだから仕方ない。

とにかく、この家を調べるにしろ逃げるにしろ、とりあえず灰は落とさないといけないようだ。


目覚めた部屋に水道がなかったので二つある扉を開けると一方は廊下、一方は炊事場のような所だった。ようなと言ったのは、水道がないからである。大きな水瓶と置いてある野菜などからそう判断した。

風呂場を探せたら良かったのだが、仕方ない。この家の広さや状況が分からないので、手早く済ませた方が良いだろう。

手近な布(ふきんかな?お借りします)を濡らそうと手に取って水瓶を覗き込んだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」


金髪碧眼の女の子が見える。くすんだ金髪をお団子にまとめた少女が目をまん丸にしてこちらを見ている。

やばいわー。思ったより残業の疲れが響いてるのかな。明日は少し早めに帰ろ。

深呼吸してもう一度。


「・・・・・・うん?」


覗き込んだ水瓶にはやはり金髪碧眼の少女。

試しに手を上げてみると水鏡の少女も手を上げ、頬を抓ると少女も頬を抓った。痛い。加減すれば良かった。


わぁー美少女に変身だぁー


いやいやいやいやいやいや。

生まれも育ちも先祖代々日本の私は平凡な黒髪黒目だった。それに私は27歳だったが、この少女はどう見ても10代前半。若返った上に髪と目の色が変わるとか、どんなミラクルよ。


どこかのもぐりの医者に助けられたが、全身ボロボロで皮膚移植の末にこうなったのだろうか?それとも私が本当にこの身体の持ち主で、記憶障害を起こして全て忘れて日本で生きていた記憶を捏造?又はとてつもなくリアルな夢を見ている?


混乱から突拍子もない可能性から現実的な事まで考えたが、ヒリヒリと痛む頬と鳥肌が立つ程の寒さが、今が現実だと告げている。深呼吸して水鏡を覗けば、困惑と僅かな怯えを瞳に宿した少女が映る。


「・・・・・・。」


成る程、そろそろ現実を受け止めねばなるまい。


これは何となくなのだが、おそらくこの身体の持ち主が死んで代わりに私が入ったのだろう。

なんであんな所で寝ていたのかは知らないけど、寒い季節に暖炉の残り灰の温もりだけって正直無理だと思う。実際暖炉は冷え切っていたし、低体温症による凍死くらいしてもおかしくない。だって、起きた時、身体の節々があり得ないくらい痛かったからね。あれって死後硬直かなと思わなくはない。


この少女が死んで、そこに何の因果か死んだ私の魂が入った。そう考えるとしっくり来た。

記憶ねつ造の可能性もあるが、私は私の、砂土恵理として生きてきた記憶を信じる。私は私以外になれないし、お一人様ライフを満喫していた記憶をねつ造してどうするよ。どうせならリア充全開の記憶にしとくわ。


・・・やはり私はあの時に死んでしまったのだろう。

お父さん、お母さん、兄貴、おじいちゃんとおばあちゃん。それとペットの権三。

孝行者になれなくてごめんね。先立つ不孝を許してほしい。

お父さん、ゴルフクラブ曲げたのは私です。友達の痴漢撃退に使いました。反対に曲げて見た目戻したけど、歪んでるから使いにくいよね。今度の誕生日に代わりを贈ろうと思ってたんだけど、ごめんね。

お母さん、いつも「エリちゃんと息子ちゃんとお出かけするのが夢なの〜」って言ってたね。終ぞ素敵な息子を連れて来れなくてすまない。でも知ってるだろ?頑張ってこれだよ。ていうか、娘自慢してくれるのは嬉しいんだけど、遊びに来た彼氏に私の板割りの動画見せるのは止めろ。敵か?貴女は敵だったのか?

兄貴、よく兄妹で手合わせしたね。3歳上なのに一切の手加減なくてありがとう。裏番やってた兄貴のおかげで居心地悪い中学校生活をありがとう。それが嫌で高校を変えたのに、手を変え品を変え武道バレありがとう。・・・絶対に許さん。禿げろ。

おじいちゃん、おばあちゃん。今週末野菜の収穫を手伝うって言ってたのに無理になっちゃってごめんね。2人とも元気だけど土を混ぜるのは大変だよね。兄貴か従兄弟の正臣を呼んで手伝わせたらいいよ。特に将臣は最近少しくらいこき使っても良いと思う。

権三。もう一緒に散歩行けなくてごめんよ。そもそもシベリアンハスキーなのに権三ってつけてごめんね。おさないころの私を許してね。お前は立派な忠犬ハス公だよ。ただ、好意を示す体当たりは他の人にやっちゃダメだよ。「よっしゃ!来いぃ!!」何て遊んでるうちにお前の体当たりは結構な勢いになってたからね。油断してる人1人くらい吹き飛ばせるよ。

友たちよ。こんな私と友でいてくれてありがとう。サヨ、エリカ、借りたままの本があってすまない。母が何とかしてくれるのを期待せず待っていてくれ。

あとは、・・・


「・・・あれ?」


届くはずもない謝罪をつらつらを思い浮かべていたのだが、いつのまにか頬を雫が伝っていた。

そんなつもりはなかったのだが、涙は止まらず、次から次へと溢れてくる。おまけに何だか胸まで苦しくなってきた。叫び出したいような、掻き毟りたいような、焦燥感のような、寂寥感のようなこれは、


「あぁ、そっか・・・もう、会えない、のか・・・。」


口に出すとその言葉がストンと落ちてきた。

視界が急速にぼやけ、喉が引き攣れ、泣き出す前の変な声が出る。

あぁ、私は思った以上に悲しかったらしい。


「あ・・・う、っ・・・」


そうして泣き出すまさにその瞬間、


「エラ!!おまえ返事くらいなさいな!!」


扉を勢いよく開けて美女がやってきた。


「今日は出かけるから支度なさいって言ったでしょ!寒いのにまだ火も入れてないじゃない。全く愚図ね!一刻後にご飯にするからそれまでになさいな。出来なかったら食事は抜きよ!」


立て板に水とはこの事だろうか。怒涛の喋りを披露する美女に口を挟めそうな隙間はなかった。あと、あまり仲は良好でなさそう。


「なぁにその呆けた顔は。わかったら早くなさい!・・・いいわね?灰かぶり!!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?

目を覚ましたらサイボーグじゃなくて美少女になってたよ。やったね!

ちなみに寒い所で寝ると本当に体が痛くなります。昔雪原で寝こけた時の焦りを元に書きました(体験談w)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ