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おとぎ話のような日々をあなたと  作者: 吉里 ユウ
とある灰かぶりと腹ペコ魔法使い
11/15

サンドラ家改善奮闘録 その5

最近は何だか落ち着かない日々が続きますね。そんな時こそ沢山笑いたいものですね。

皆様も体に気をつけてお過ごし下さい。


「はい、見っけ。こちらは没収です。」

「いやぁぁぁ!やめてぇぇl!!」


衣装部屋の奥に置いてあった箱を回収。


「はい、こちらも没収します。」

「ちょっと!ちょっとやめて!それ以上は何もないったら!!」

「んー・・・と、あぁ、ここにもありますね。」

「あああぁぁぁ!!」


義姉達の机の引き出しを片端から開けていき、持っていた籠に見つけたお菓子を放り込んでいく。念の為調べると隠し底まであった。二重底の引き出しなんて本当にあるんだね。


「あとはー・・・そこかぁっ!!」

「いやあぁぁ!なんでぇえ?!」


最後に一瞬目が動いた方向の床板を踵落としでブチ破ると、床下収納から更に出てきた。大量大量。


現在はクローディア夫人のタレコミを元に家探しの真っ最中

である。調べたら出てくる出てくる。回収したお菓子は山と積み上がった。・・・こりゃ痩せないわ。


「なっ、なんでこんなことするのよぉ!!」

「そうよ!ヒドいわ!人でなし!」

「なんとでもどうぞ。・・・それより私はお菓子は食べないようにとはじめにお伝えしたはずですが?」

「「うっ・・・」」

「こちらは全て没収します。以後はきちんと節制するように。クローディア様にももう買い与えないように言ってありますので。」


そう伝えると、義姉達は悲壮な顔でしゃがみこんだ。


「マイアあんな豆のスープとパンだけじゃ飢え死にしちゃうわ。」

「あんなスープで悪かったですね。」

「これからお腹がへったら何を食べればいいの?」

「そもそも食うという発想を捨てろ。」

「そんなっ!ネーア死んじゃうぅ。」

「死なん。」


これ見よがしにこちらをチラ見しつつ嘆いてくる義姉達。相手をするだけ疲れそうなので、私は適当に相手をしつつ、着々とお菓子の山を袋つめにしていく。ちなみに回収したお菓子は後で孤児院に寄付する予定だ。


義姉達は私ではラチがあかないと思ったのか、わたしの後ろで立っているクローディア夫人に訴え始める。

彼女は物言いたげな顔で見てはいるが、止めては来ない。ただ、心情的に完全にこっちに手は貸したくないので袋詰めは手伝わない。この辺りがクローディア夫人の境界線なのだろう。こっちとしては邪魔さえされなければいい。

あとは義姉達がちゃんとスケジュールをこなしてくれるようになってくれればなんとか・・・なる、かな?まあ、なるようになれ、だ。


「スケジュールも押し押しなのでこれからは今以上にダイエットメニューを追加します。淑女レッスンは今マナー講師を引き受けてくれる人を探していますので、そちらが決まり次第始める予定です。それまでに最低限体を絞ってもらいます。よろしいですね?」

「こ、これ以上なんてムリよ!」

「そうよ!なんで増えるのよ!」


私はチラリとクローディア夫人を見る。彼女は私の視線を受け、葛藤に顔を顰めながらも口を開いた。


「・・・・・・ネーア、マイア。言う通りにして頂戴。」

「お母様っ?!」

「なんで?!ウソよね?!」

「・・・いいから言う通りになさい。・・・私、仕事があるので失礼するわね。」


信じられないと義姉達が取りすがるも、クローディア夫人は視線を振り切るように部屋を出て行った。味方だと思っていた母親からのまさかの裏切りに、義姉達は言葉も無く立ち尽くす。


多少可哀相と思わなくもないが、ここで手を緩めては元の木阿弥である。今日のノルマ消化の為、まだ呆然とする義姉達を引きずって部屋を出た。



♢♢♢♢♢



この日以降、義姉達は目に見えて大人しくなった。

相変わらずの雑さではあるものの、仕事も訓練も黙ってこなす。日々ノルマの半分はこなせるようになった。まだまだ先は長いが、元が三分の一くらいの消化率でお菓子が加わっていた事を考えると驚くべき改善具合である。偶にこちらを睨みつけているので完全に納得して改心した訳ではなさそうだが、メニューを消化してくれるのであれば今のところは特に問題はない。クローディア夫人もあの日以降お菓子の買い足しもしていないようだ。


クローディア夫人は驚くべき事に意外と真面目に領地運営に取り組んでくれている。はじめこそ嫌々書類を手に取っていたのだが、今では自分からジョセフに聞いたり、家にある本を読んでみたりしながら色々試行錯誤をしている。

私への態度も随分軟化した。たまに物言いたげな視線を感じるものの、貴族の奥様には少々ツラめの節制にも黙々と付き合ってくれている。

一刻も早くこの生活から抜け出したいのか、それとも何か思うところがあったのか。どんな心境の変化かは知らないが、協力してくれるならそれに越したことはない。



一応、これでひと段落といったところだろうか。

何だかんだ1ヶ月程の時間が流れていた。


この世界は一年12ヶ月。四季があり、各季節は3ヶ月ずつで上月、中月、下月で呼ばれる。月には季節を司る妖精の名前が付けられていて、各季節の下月はその月の妖精達が次の季節の妖精達へ季節を渡す大事な時らしい。妖精!なんてメルヘンと驚いたが、見えるものではなくおとぎ話のようなものらしい。残念。

一年の始まりは春、土妖精ヴラシュの月と呼ばれる。各地で生誕祭ーーといっても聖人が産まれた祭日などではなく、季節が一巡して生命が生まれ変わる時期だから生誕なんだそうーーが行われる。日本では1月はまだ冬なので何だか変な感じだ。夏の火妖精アーヴルの月、秋の風妖精へリルの月と巡り、冬の水妖精シスレトの月の最後1ヶ月で大晦日的な事をする。

季節によって各地域でお祭りが開催され賑わうらしい。春は南方の花祭り、夏は西方の星祭り、秋は各地の収穫祭といった感じだ。お祭り好きとしては是非、落ち着いたら各地を巡ってみたいものである。

私が来たのが冬妖精の中月のはじめ。何やかんやあって1ヶ月程経過した現在は冬妖精の下月の3日目だ。ちなみに一週間は10日。それが4回繰り返され、40日で1ヶ月である。4週間あるのは週ごとにまた妖精が割り振られているのだが、呼び方自体は数字である。「水回りを触るなら火妖精の週じゃなくて水妖精の週にした方が縁起が良いね」的な、気にする人は気にする風水やカレンダーの六曜みたいなものらしい。


私の勉強も少しずつ進み、今では何とか読み書きは出来るようになった。

少し余裕が出てきた私は、かねてから温めていた作戦を実行する事にした。



クローディアさんから義姉達を叱ってもらったよ!ショックで大人しくなったよ。クローディアさんは真面目に領地経営に取り組んでるようだ。

これで上手く行くといいんだけどなー。

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