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60:彼女こそ

あと1話と言いましたが、今度こそ4章の終わりです。





 廃屋に居たのは西の魔女様。

 これで南の魔女以外がそろったことになる。


 あれから私がしばらく放置されたり、セリアも猫になって服の中に潜り込んだりくすぐってきたりしたけど、なんだかんだ外へ戻ってきた。


「さて、では北の魔女様に報告しにいきましょうか」


「……へんたい」


「貴女は嬉しかったのではなくて? どちらがへんたいでしょうか」


 たしかに黒猫二匹に群がれて幸せだったのは否定しない。

 否定しない……けど!

 それでも服の中は反則じゃない?





 ◇◇◇





「なので協力体制を結んできました。どうやら黒猫は何匹もいるらしく、その度に西の魔女様が鹵獲していた様子です」


「へぇ、行方をくらませたと思えばそんなところにいたのかい。

 まったく、頭が良いんだか悪いんだかわからないやつだね」


 食堂に戻ってから師匠に聞くと、どうやら面識があるみたい。

 なんでも十数年前に知り合ったとかで、それ以降はお互いに不干渉だったとかなんとか。

 つまりあのロリっ娘は年上?

 魔女だから年を取らない……てわけではなさそうね。

 だって目の前の師匠は商店街のオバハン――。


「アンタ、明日は一日中こっちにいるかい? 特別にあたしが付きっきりで指導してやろうじゃないか」


「め、滅相もないです。明日はまだ忙しいので!」


「そうですか? フレアさんにはそろそろお休みを出さないといけなかったので、明日は休みの申請を出しておきますよ?」


 おいセリアお前。

 なんてタイミングで休暇申請してくれるんだ。


「え、えーと。私はバリバリ働きたいかなー?」


「安心してください。西の魔女様とは仲良くなりましたので、情報共有はわたしが行います。フレアさんはどうぞこちらで」


「ふん。むこうでの雇い主の許可も出たことだし、いまからやるよ。

 全く、誰が若作りババアだって?」


「そこまでは言ってませんけど……」


「ほぉ? 近いことは思ってたみたいだね」


 にやり、と師匠が笑う。

 でも顔が笑っていても、目は笑っていない。

 セリア! ……もいい笑顔ですねー。


 ドナドナされる私を、クロだけが憐れみの視線を向けてくれた。






 翌日。

 今日は私がいるからレリーナのヘルプはいらなく……ならなかった。


「こいつはあたしが教育するからね、店は頼んだよ」


「はい。お任せください」


 その日いつもどおり来たレリーナはホールへ。

 今日はクロも昼からはいり、黄金の二人体制だ。

 訪れたお客さんも二人を見ると、すぐさま店を出ていき数人連れて戻ってくる。

 そんなことが何度も続いたおかげで、今日の『魔女の家』は大繁盛だ。


「師匠、私達もヘルプに入ったほうが……」


「そうやって逃げる気かい?

 アンタもいつまで魔力に振り回されるんだい。そろそろ魔女の血を支配できてもおかしくないだろうに」


 まだ私の身体は血に適応していないらしい。

 数年でできるっていったの誰?

 とんだ魔女様じゃない!

 ……言った本人は目の前にいるので、絶対に口には出さないけど。


「できないのは仕方ないじゃないですかー。

 まだ自由に出歩けないし、西の魔女様の猫語もわかんなかったし。私ってほんと向いてませんよねー」


 学園にいけるようになったのはありがたいけど、これもいつレオン先生にバレるのやら。

 だって先生が学園とここを行き来してるのに、私が瞬間的に現れるっておかしくない?

 バレたらなんていいわけしよう。


 はぁ……と憂鬱になっていると、師匠が珍しく手を止めてこっちを見てた。


「あの、師匠。さっきからかき混ぜていたお鍋溢れちゃってますけど、調合中じゃないんですか?」


「お前さん、今なんていった?」


 鍋が溢れてることも気にせず師匠は――いや、ささっと魔法で片付けたので何事もなかったかのようにして、私を問い詰めてくる。


「鍋が溢れて……」


「その前だよ」


「できないのは仕方な――」


「魔女猫と会話できなかったって?」


 あ、そこですか。

 別に私は猫じゃないんだし、クーちゃんの言葉もわからないからあたりまえ……?

 そういえば猫状態の師匠とセリアとは会話できたのに、なんで?


「アンタみたいな一般人相手に、あたしたち魔女が会話できないなんてことはないはずさ。それこそ、クーみたいな例外を除けばね」


「私って一般人でいいんですか?」


 死んだことになってたり、魔女の血が流れてたりするんですけど。


「ようやく半人前になったアンタなんか一般人だよ。

 それより猫に言葉は通じてたんだろう? なのに向こうの言葉はわからなかったのかい?」


「ええ。にゃーにゃー言ってるだけだったので無視して帰ってきたんですけど、昨日説明しませんでしたっけ?」


「昨日は黒猫の遣いだと思ってたからさ。それが西の魔女本人ってなら話は別だよ」


 師匠が前に会った時、西の魔女様は黒猫を一匹連れていたらしい。

 けどあの地下室にはいなかったし、魔女様が変身した姿も見てる。

 私を案内した猫様と、西の魔女が変身した姿は同じ。

 つまり同一人物……ならぬ同一猫。


「お前さん、それは本当に西の魔女のやつが変身した猫だったのかい?」


「クーちゃんで鍛えた私を信じてください。

 案内した猫と西の魔女様が変身した猫は同じ。どうみてもあのロリっ娘魔女さんで間違いありません」


 ふふん! 伊達にクーちゃんをモフり倒してないわ!

 何度も抱いたおかげで体調不良や気分の変化に気づいたり(気づくだけ)セリアと師匠の猫状態も抱いたので判断できる。

 私はもう猫ソムリエよ!(自称)


 しかし、師匠は顔から血の気が引いたようで真っ青になっていた。


「いくらあたしたちが魔女だといってもね。変身後の外見まではそう簡単に替えりゃしないよ。動物になって戻るときなんてとくに、ね」


「え? ということは……」


「あたしが会った西のやつは、そりゃもう妖艶な美女さ。男を惑わすために生まれてきたようなやつで、その美貌を保つため魔女になったとか聞いたこともある。決してロリっ娘といわれるような容姿ではないよ」


 聞きたくない。

 私が覚えている奴の見た目は違う。

 けど、西の魔女に会ったのは私とセリアだけ。

 そしてふたりとも、ゲームの知識で先入観があった。

 この人はラスボスとは違う、と。


「アンタにはこう言ったほうがわかりやすいかい?

 あたしやあの娘みたいに溶け込むわけでもなく、見た目から魔女を隠さない存在。そして魔女の本質を拗らせている女こそが――」


 南の魔女。

『Magic☆Cats』における、諸悪の根源。

 どうやら私とセリアは、知らないうちにその人と邂逅したみたい。




恋愛要素どこいった……。

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