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53:表の生徒会、裏の生徒会

 


 ここに来るまでにセリアに聞いたけど、やはりカミーユという人物は登場していない。

 この場にいないのは偶然?

 いや、隣をみるとセリアが微笑んでいるから、この時を狙ったわね?


「まずはようこそ。ここが僕たちの活動場所だよ」


 ヘカテは小さく手を振ってくれるけど、事情を知らない二人は訝しげ。

 ルファスとアルフォンス王子の顔には、どうしてここに? という疑問がありありと浮かんでいる。


「さて、全員そろったことだし始めようか。

 じゃあセリアさん。いつも通りお茶の準備を――」


「そうですね。ちょうど良いのでこのメイドに頼みましょう。

 お願いしますね?」


 にこっ、と微笑まれるけど、これはやれってこと?

 頼まれたらやるけど、セリアに言われてというのがちょっと。

 まず場所とか知らないし……。


「じゃあフレアさん、お願いね。

 カップは右の棚から。専用とかはないから、そこに用意してある紅茶をそそいでくれるかな?」


「はいっ! わかりました」


 さすがヴィル様、気遣いができる自慢のお兄様です。

 どこかの百均娘とは違うのよ。




 コトン、と用意を済ませたら本題の時間。

 この場ではお客さん扱いらしく、私もヘカテの隣に腰掛ける。

 ヴィル様は会長用の席だし、セリアとの間にはヘカテに入ってもらった。

 もちろん、ルファスはセリアの隣ね。

 ……好かれていると知って、微妙な顔をするセリアはいい気味ね。


「実は書類整理する人手が足りなくてね。フレアさんに雑務をお願いしたいんだ」


「雑務、ですか? 人手ならいくらでもあると思いますが、何故私に?」


 わざわざ学園外から呼び寄せなくても、学園中にいるのでは?

 ヴィル様が一言かければ、参加希望は多そうだし。

 そんな疑問を、ヘカテが代わりに答えてくれた。


「雑務は私の担当ですが、書類の分類と過去文献の整理が溜まっていまして。ちょうど節目だからと、数十年分の仕事を任されてしまいました。

 貴族の方には見せられないような情報も多いので、ここのメンバー以外では部外者を雇おう、となったわけです」


 使用人を使ってやればいいじゃん。

 と思ったけど、よく考えたら私がその立場でした。

 はっ! まさか、セリアの奴そこまで考えて……。


「あとはレオン先生に言った通り、噂の終着を狙ってました。

 どうやら貴女のおかげで、仕事が手に付かない人々が多いようで」


 セリアがそういうと、途端に目をそらす三人。

 ルファス以外って、多いな!

 でもヴィル様が私のこと考えてくれていたのは嬉しいかも。


「そしてちょうどよいので、ここにゆうか……連れてきたわけです。

 どうやらお互いの利害も一致したようでしたので」


 ぐ……。

 それを言われると、私は師匠の命令でもあるからここに来たわけで。

 セリアのためとは思いたくないけど、図らずとも憧れのヴィル様と同じ空間で仕事ができる。

 まだ隠し事はありそうだけど、ここは素直に喜んでおこうかな。


「じゃあルファス。彼女を書架まで案内してくれるかな?

 担当のヘカテには打ち合わせのため残ってもらうからね」


「わかった。できればもうひとり、詳しい人をお願いする」


 ルファスは雑用というか、遊撃というか。

 つまり担当じゃないのだけど、雑務の担当は二人。

 女性二人だ。


「僕もそのつもりだったよ。セリアさん、お願いできる?」


「っ……はい。わかり、ました」


 いつもの笑みが、思わず無表情になるくらい顔がしんでいたけど、セリアは生徒会長の意思に従うらしい。

 私はできる女だから、一歩下がって是非ともお二人に案内してもらおうじゃない!


 こちらを睨みつけるセリアと、手を差し出しては引っ込めるルファス。

 それをニヤニヤ見つめる私と、実に変則的なパーティの出来上がりだった。





 ◇◇◇





 彼女たちが退室した後、深刻な顔をした三人が残された。


「まさかフレアさんが、セリアさんの使用人として来ていたとはね」


「私も驚きました。

 つまり、ある程度の期間は離れても大丈夫、ということでしょうか?」


 ヴィルの妹、クレアという人物は既に亡くなっている。

 生きている可能性もなくはなかったが、それは調査を頼んでいたレリーナに否定されたことでゼロになった。

 ということは、あのクレアに見える・・・・・・・人物は、死人か別人のどちらか。


「王子。貴方が魔女について分かったことを知りたい。

 疑惑は晴れたのかな?」


「残念ながらまだだね。調べれば調べるほど、沼にはまっていくようだよ」


 北の魔女は七人いる。

 それを北の国は許容しているということでも異常なのに、それぞれが名乗っているだけではなく、お互いがお互いを認識している。

 魔女は一人。どこの国も世襲制というのが暗黙の了解だ。

 それが七人。

 父親である王に聞いても、それが異常な事態だというのは明らかであった。


「でも、あの方がネクロマンサーだという疑いは晴れたかな?」


「なっ……」


「理由は二つ。

 まず、死者からは生命力は感じられない。この場に魔道具を設置してあったんだけどね? さっきの反応は六つ。つまり全員分さ」


 先ほどの場にいたのは全員、生者。

 これだけでもネクロマンサー説は否定されたようなものだ。


 アルフォンス以外は知りえないが、実はこの他にも魔女に関する魔道具が設置してあった。

 そこにあった反応は二つ・・

 この道具は規定以上、それこそ魔女のように強大な力を持つものと接触した人物に反応する仕組みとなっていたが、今まで生徒会メンバーの中で反応した者はいない。

 今回の一つがフレアだとしても、もう一つは誰なのか?

 アルフォンスはまた悩みの種が増えたと思いつつ、話を続ける。


「もう一つは、フレアさんが数日前からここにいたのは確認済みだよ。

 一人のメイドに調査を頼んでいたのだけど……異常なし、と」


 ヴィルの話では、クレアという人物は指が欠けて・・・・・いるはず。

 当主の部屋で大切に保管されていることは、アルフォンスの耳にも入っている。

 しかし、他のメイドと働くフレアは五体満足だった。


 湯あみのときなども観察するように言ってあったが、報告は「健康的な少女」という極めて普通の内容だ。

 ただ、正直に言えばいくら別人といってもヴィルが怒ると予想できるので、アルフォンスは二人にぼかして伝えた。


「つまり、別人……ということか」


 記憶の継承だけならば可能かもしれない。

 西の・・魔女が得意と聞くが、だとしたら最近姿を眩ませたあちらが怪しい。


「ま、いま言えることは。

 魔女の手は確実に学園へと入り込んでいる、ということだね」


 それはどの魔女をしめした言葉なのか。

 そこまで判断できる材料を、持ち合わせているものはいなかった。


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