47:全てはセリアが悪いのね?
全員が着席したところで説明を求める。
どうしてセリアが知り合いなのかは置いといて、レリーナ?
しかも、さっきは何て自己紹介した?
「今まで黙っておりましたが、この前から不在である西の魔女様に代わって、こちらのほうへ招集されました。ある程度事情は理解しています」
少しだけ目があったけど、すぐに師匠のほうへとそらされた。
そのある程度、という部分が大事なので、部外者ながらに掘り下げてみる。
「レリーナ、さん? 私は――」
「すみません。こちらで勝手に調べさせていただきました。
その際に西の魔女様のお力もお借りしたので、その助手のようなものを任されております…………お元気そうで何よりです、クレアお嬢様」
その言葉に込められた意味を、全て理解することはできない。
ヴィル様と私が再会して、まだそんなには期間が経っていない。
ましてや、レリーナ本人と再会してからひと月だ。
おそらくは私を探し出した代償として、魔女様の使いっ走りでもさせられているのだろう。
西の魔女。
洗脳と隠形に長けた魔女で、東の魔女が光と治癒の魔女なら、西の魔女は闇と隠密の魔女だ。
まさに情報通で暗殺者といった魔女だけど、まさかレリーナがそんな魔女の片棒を担いでいるなんて。
「それで、今後の予定なのですが――」
「ちょっと待って! どうしてレリーナと知り合いなのよ!」
ちっ……とニ方向から聞こえた舌打ちは聞かなかったことにする。
師匠はともかく、セリアも意外と口が悪いわね。
さすが猫かぶりヒロイン。
しぶしぶ説明したセリアによると、レリーナは私とヴィル様が再会する前から西の魔女様へと弟子入りしていたらしい。
私がいなくなって手があいたレリーナは、お父様とお兄様に頼まれたこともあって魔女探しを始めたのだとか。
そうして一年ほど前、ようやく西の魔女様に会えたらしいけど、それからは情報収集ばかりで良いように使われる。
その際、セリアとも知りあったのだとか。
……んん?
「ちょっと待って。レリーナは私のことを知っていたの?」
「いいえ。まさか、とは思っていましたが、ご子息様に強く言われるまでクレアお嬢様とは気が付きませんでした。
事情を知るまで、そこの大魔女様に妨害もされていましたので」
大魔女様、と言われたのは師匠だ。
……そんなすごいことやっていたの?
顔を合わせてくれないところを見るに、陰ながら守ってくれていたのは本当みたい。だって師匠が左耳を触る時は、照れてるときの癖だもの。
「ししょー……私のことをそこまでっ!」
「ええい、ひっつくんじゃないよ! それに事情を知るのはこの子らだけで、アンタのいうヴィル? てのは知らないからね!
クレアってのは死んだんだ。くれぐれもそこを間違えるんじゃないよ」
クレアが生きている。
そう広まったら、師匠だけでなく、他の魔女たちの立場も危うくなる。
一時期は魔女の血を飲めば不老不死になる、なんて騒がれた時代もあったようで、死病でも魔女が治せるなんて知られたら一大事だ。
それが可能なのは、師匠がそうだと騒がれたネクロマンサーと、そこにいる東の魔女くらい。
しかも、代償ナシでは行使できない。
師匠にははぐらかされたけど、私が知らないだけで代償を払ってくれていたようだ。
あの時は血に関してしか言われなかったのに……。
その後は三人で私を学園に行かせるための魔法を話し合うとかで、クーちゃんと一緒に厄介払いされた。
そもそも、本当に学園へいく必要があるのかどうか、まだ聞いていないのだけど?
ヴィル様に会えるのは嬉しいけど、せっかく耐えた訓練の意味が……。
去り際、フフン。と勝ち誇った顔のセリアが気に入らなかったけど、クーちゃんの手を使って首を掻き切るジェスチャーをしておいた。
……クーちゃんに抗議された。
ごめんなさい。
◇◇◇
それが耳に入ってきたのは、話し合いも落ち着いてレリーナが帰る頃合いになった時だった。
「じゃあ、明日はお前さん方に頼んだよ。
西のモンも、代わりってんならシャキっとやんな!」
「はい、お任せください。
既に学園の構造は把握済みなので、洗脳に関してはお任せください。
あとは噂をセリア様にお願いし、内部からコントロールですね」
「ええ。お二人が協力してくださるなら、ようやく前進できます。
相方が選べないのが残念ですが、必ずや奴をあぶり出しますね」
実に物騒なことを話しておられる。
セリアはともかく、私の知るレリーナはいずこへ……。
「結局、私が学園に行く意味ってあるんですか?」
ふと訊ねた質問に三人は静かになる。
……いや、セリアだけが気まずそうに視線をそらした。
あの時は上手くレオン先生を言いくるめたようだけど、さてはアンタにも原因があるわね?
だって町の外に出られないのに、学園の寮と食堂を繋いで行き来できるようにするなんて、絶対にやらないような作業だ。
噂うんぬんはいいとしても、未来予測なんて二人いても精度が変わるわけでもない。
もしかして?
「セリア、あんたって記憶力が残念なんじゃ……」
「違いますノートあります的中してます。貴女に関する事柄やこの場所にまつわるイレギュラーな事以外は正確です。もっとも? この食堂に関係する事柄が多すぎて役に立っていませんが、それとこれは無関係です」
「あ、はい。そうなの」
はぁ……とため息をついて補足してくれたのは師匠だ。
「アンタ、あたしたちが戦争をさせないように動いてるってのは知ってるね?」
「師匠はともかく、他の人は知りません」
レリーナからは聞いていないし、セリアなんかはルート通りにすべし! みたいな空気があるから、喜々として起こしそうだ。
「知らなくてもいい。ここで肝心なのは、南の連中がその引き金を引くかもしれないってことだ」
王都にある魔法学園は、まるでヨーロッパの火薬庫らしい。
第一次世界大戦が起きたときのように、何かキッカケがあればそこから戦争状態ヘと移行してしまう。
かのバルカン半島のように、南の魔女が動けばそこから大問題へと発展してもおかしくはない。
その火種を消すために、セリアは日々探りを入れているんだとか。
「……それで、何の成果も得られなかった、と?」
「く……。いくつか、防げたものはあります」
要するに、セリアだけじゃ力不足だから私も潜入して探ってこいと?
そのために師匠とレリーナも巻き込んだのね。
コミュ障らしいセリアでは上手く話を集められないとか。
……とんだとばっちりじゃない!
とにかく、これからヴィル様との学園生活。
それならセリア、こっちもあんたのこと利用してやろうじゃないの。ふふふ。
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