46:それ本当に必要?
いきなりの衝撃発言に正気を疑ったけど、師匠の反応を見るに許可は出てるっぽい。
でも私まだ、半人前にすらなれていないって言われたばかりなんですけど……いいの?
師匠はいまだに気持ち悪……実にいい笑顔を浮かべているだけ。
口をパクパクされることしかできない私にかわって、レオン先生が代弁してくれた。
「この嬢ちゃんをか? セリア、お前正気か?」
「正気ではないかもしれません。けど、必要なことです」
「だが、こんな何の取り柄もなさそうで、魔法もちょっとかじった程度の町娘が何の必要に……。サーカスでも開くつもりか?」
「ちょ、ちょっと先生? いくらなんでもひどくないですか?」
レオン先生は本人がいることにようやく気づいたのか、バツが悪そうな顔をしてすぐに顔をそらす。
しかし、もう一方のセリアはお構いなしだ。
「レオン先生も気づいていますよね? フレアさんとクロさんがここにいるせいで、あの魔女様がネクロマンサーと呼ばれていること。
噂が静まるまで待つ予定でしたが、聞けば南の連中まで動き出していると言うではないですか。
幸いにも彼女には仄かに魔法の適性があるとのこと。しょうもない使い方しかできないようですが、覚えはそれなりに良いはずなので、死ぬほど努力してもらえるなら学園の勉強にもついていけるはずです。
ここは早いところ、噂の収拾もかねて、彼女たちは生きている人間。ただの別人だと証明したほうが良いと思います」
要約すると「噂をなくすため生贄にする」ってこと?
だったらクロでも……は、人間状態の関係から無理。
私しかいないってわけね。
「その方法が、この嬢ちゃんの転入だと? できるのか?」
「できるではないです。やらせます」
まるでブラック会社の営業みたいな売り込みに唖然としていると、
ポンっ、と肩に手を置かれた。
そこには師匠が……はい、もうわかってます。
セリアは明日も学園を休むらしい。
その際、堂々と「明日は仮病ですので、学園には上手くお願いします」とレオン先生に頼んでいた。
先生は頭を抱えていたけど、絶対に明後日には帰るということで手をうったらしい。
何でも、捜索にもう一日かかったということにして、先生も明日はサボるんだとか。
……それでいいのかレオン先生。
ま、降って湧いた休日だといって喜んでいるから、私は知らないっと。
レオン先生も帰宅し、今日は店も早仕舞いだ。
クロが早めに入ったのでクーちゃんに戻っちゃったり、師匠がセリアとの会話を優先したこともあって、いつもより二時間ほど早く閉めた。
「いまから稼ぎ時でしたけど、よかったんですか?」
「いいさそんなの。明日は閉めるし、誰も文句は言やしないよ」
おい客商売。
いつもの気まぐれで明日も突発的な休みになるらしい。
そんなことより、私にはさらに重要なことがある。
「師匠、学園に転入ってどういうことです?」
「それはわたしが説明しましょう」
「あ、セリアからはいいや」
きょとん、とするセリアは無視して、師匠に説明を促す。
どうやら私とセリアの関係に口をだすのはやめたらしく、面倒そうにしながらも師匠は教えてくれた。
いわく、ゲーム時代の戦争開始時期が近づいていること。
問題になりそうな事柄を回避していたが、南の連中の勢いは止まらない。
それならばいっそ、ある程度の未来予測ができる二人で学園側と協力したらどうか、と。
チラッとセリアのほうを見て視線が合う。
「無理ですね」
「無理です、がこれも使命です。我慢しましょう」
「どうやら、アンタよりこちらさんのほうが大人だねぇ?」
……ぐ。
やっぱりセリアって、師匠と同年れ――。
「例えわたし一人でも、生徒会メンバーを主体とし乗り越えてみせます。
頼りになる会長もいますし、一緒に過ごす時間が長くなれば長いほど、私の力は――」
「ちょっと待って。ヴィル様も巻き込む気?」
「ええ。ここは全員で挑むべきでしょうし、事情をある程度お話して協力を仰ぐ予定です」
ある程度、というのがどこまでかにもよるけど。
そもそもは戦争をさせないために、師匠は翻弄していたはずだ。
はず……よね?
だからセリアと協力して、それを防げと。
私が何の役に立てるかわからないけど、まず大前提がひとつ。
「師匠、私まだ魔力をうまく制御できませんよ?
町からでられないんじゃないですか?」
「町と学園から出なきゃいいだろだろう?」
「はいぃ?」
私を一人前、にするとかではなく、この町と同様に学園内なら安全だということ。
逆に言えば、学園までの道中や敷地外に出たらアウト。
ならどうしたらいいの? と聞く前に、セリアが教えてくれた。
「明日、魔女様と術式を組み上げた後に、寮の方へ魔法陣を設置します。
クレア様の部屋とここの工房をつなげますので、貴女の無駄に膨大な魔力を利用したらすぐにでも行き来できるようになりますよ」
「あっそ」
いちいちトゲのある言い方をしてくるのはいいとして、それは実に便利なことだ。
それならしばらくここの仕事も――。
「毎日夜は手伝いに来るんだよ。サボったらこっちの魔法陣を破壊するから、一人前になるまでは帰ってくるんじゃないよ」
「そんなぁ……」
それじゃクーちゃんにも会えなくなるじゃない!
クロはどうでもいいけど。
でも明日一日でその術式、完成させられるのかしら?
そんな疑問が顔に出ていたのか、セリアは助っ人を呼んであると胸を張る。
その時、店が閉まっている入り口を叩く音がした。
「うわさをすれば、お出ましですね」
ルンルンと扉へと向かうセリアは、もはや私よりもこの場所に馴染んでいるように思える。
くっ、東の魔女だからって調子に乗ってんじゃないわよ。
工房で待っていると、見知った女性が一人入ってきた。
……どうしてここに?
「初めまして……ではないですが、私が西の魔女の代理をしている者です。
皆さん、よろしくお願いします」
「レリー……ナ?」
謎が多く、ゲームでも一部以外では空気だった西の魔女。
それを名乗る彼女は、どうみても私の知っているレリーナだ。
それに、南の魔女以外が集結するって……。
いったいどんな魔女の夜宴が始まるの?
4章の終わりを練ってる最中ですので、次回は月曜にします。




